自称〖異世界転移人形〗
″毒殺″
不穏な響きを持つその言葉が、自分に向けて発せられているとわかったら、
恐怖におののき、頭の中がまっ白になってもおかしくないのかもしれない。
だが、僕には日常になっている言葉のせいか驚きはなかった。
しかし、しゃべる人形には驚愕し、マジマジ凝視していると、
「そんなに見られると照れちゃうな~」
恥ずかし気な声が聞こえてきた。
でも顔のパーツが全く動かないから、無表情で言われても違和感しかない。
本当に照れてるのか?と問い質したくなる自分をグッと抑え、ちょうど自分の目の高さに鎮座している人形の前に立った。
ズイッと人形に顔を寄せ、綺麗な水色の目を覗き込み、気になる事を聞いてみた。
「君、思いっ切り怪しいんだけど何者?何故しゃべれるの?どこから来たの?毒殺って犯人誰?」
「ちょ、ちょっと待って、質問多すぎ!」
焦った声、何となく汗をダラダラ流してるようにも見えなくもない。
無表情だが。
しかし次の言葉はアッサリしていた。
「うーんと先ず何者?って所からですが、残念!私にもわかりません!」
思ってもみなかった返答に、
「はぁ~?わからないって、自分の事だろ?」呆れて言い返す。
「だって私、この間までこの世界じゃない異世界で生きてた、普通の人間の女の子だったんだよ」
という言葉で始まった人形の生い立ち?の話は、直ぐには信じ難い内容だった。
人形は13才の中学生とかいう身分の女の子で、両親兄姉の5人家族で普通に暮らしていた。
しかしある日気づいたら、部屋中を見下ろせる台座の上にちょこんと座った人形になっていたそうだ。
その部屋には剣や盾、宝石、王冠といったあらゆるお宝にあふれていた。
それを聞いた時、僕はこの人形の正体がわかった気がした。