大ピンチ!
倒れたまま起き上がれない僕を心配してか、人形の焦った声が聞こえた。
「あー何で私にはチートがないの!ブレント気合と根性よ!フレーフレーブ・レ・ン・ト!頑張れ・頑張れ・ブレント!」
僕は人形の謎応援に困惑しつつ、どうにかして立ち上がろうともがく。
そうこうしている内に、火の手はベッドを燃やしつくし、次第に本棚へとその魔手を伸ばそうとしていた。人形の所まで来るのも時間の問題だ。そんな中でも人形の謎応援は続いていた。
「頑張れブレント!頑張れば楽しいことが待ってるよー!ブレント約束したよね?明日一緒に楽しく笑顔の練習と計画を立てるって!約束したよね!」
そうだった。明日は人形と約束があるんだった。
笑顔の練習は楽しい・・かはちょっと微妙だが、人形と一緒なら自然に笑える気がした。
僕の知らない楽しい何かが、待ってる気がしたんだ。
それが本当か知る為には・・
僕は気力を振り絞りヨロヨロと立ち上がる。
フンッと足を踏ん張りキッと扉をにらみつけた。
「邪魔だぁー‼」ドウォォォーン‼バァキーッ‼
扉が吹っ飛んだ!
「ヤッター!」人形の歓声が聞こえた。
僕はフラフラしながらも、火の手が近づいている本棚に歩いて行き、人形を掴んだ。
「さあ、急いで外に出るぞ!」
しかし、ぽっかり空いた出口に向かって足を踏み出した途端、存在を忘れかけていたジャックリーズに、横から体当たりされ仰向けに倒されてしまった。
「王妃様は約束してくださったんだー!絶対王太子様の従者になるんだー!俺をバカにした奴らを見返すんだー!」
ジャックリーズは自分に言い聞かせるように叫んでいる。
現実逃避なのか破れかぶれなのか、ジャックリーズは、計画通り僕を殺してしまえば、全てがうまくいくと思い込もうとしているのかもしれない。
またもや、首に回された彼の両手を払いのけようとしたけれど、もう魔力も体の力も残っていない。
ジャックリーズは両手にグッと力を込めてきた。
段々と意識が遠のいていく・・・
「動け私!出来る!絶対出来る!気合!根性!頑張れ私!」
いきなり人形の声が聞こえた。
次の瞬間、
人形の姿はジャックリーズの頭の上にあった。
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次話は一時間後に投稿予定です