次は火⁉
人形に言われるまでもなく、早急に脱出する方法を考えないと・・。
外からの助けは? だがこの騒音にも誰も来る気配がない。扉の外にも何か仕掛けが有るのか?
外からの救助は期待できないなと考えていると、予兆もなく、いきなり本棚が横にスライドし始めた!
誰かがこの部屋に入ろうとしている!
王妃が放った新手の刺客か⁉ 僕は緊張し身構える。
何事もなく本棚のスライドが終わると、半分ほど外に開いた扉が現れた。その先にあるはずの隠し通路は暗くて見えない。
突然!火の点いた松明を持つ手がヌッと現れた。
その手の先が見えない所をみると只者ではないな。人形が言ってたナンチャッテニンジャか?
いつでも対抗出来るように、その手をジッと見ていると、手はポイッと松明をベッドに放り投げた。
「「なっ⁉」」
人形と僕が呆気に取られている内に、扉は空になった手によってバタンと閉じられてしまった。夢かと思う程一瞬の出来事。
しかし現実だと思い知らせるように、本棚がまた音もなくスライドし始め、元の場所に戻っていった。
又も閉じ込められてしまった。
その上、あっという間に布だらけのベッドは火の海だ。
ジャックリーズが失敗したから第2弾か・・・いや、最初っからこうする予定だったのかもしれない。
火事は大精霊様による第一王子とその従者への粛清だった、と後日噂を流す。なんか王妃達の考えそうな事だ。
これですべての逃げ道は断たれた。そしてもうすぐ部屋は火の海になる。もはやこれまで、打つ手はない。
「これで終わりか」
ポツリと言葉が突いて出た。
これで全部終わるのか・・・。
望みもしない王太子の座を奪取しようとしていると疑われ、命を狙われた日々。
政治の駒としてしか自分を見なかった周囲の者達。
父は僕の中に母の面影だけを見ていた。
自分が今ここで殺されてしまっても、誰も気にもしな・・
「何終わったなんて腑抜けた事言ってんのよ、このヘタレ王子‼」
相変わらずうるさい人形の声が、僕の諦めムードをバッサリとたたっ切った。
「何だと⁉」
ヘタレが何だか知らないが、腑抜けに続くのだから誉め言葉ではないはずだ!
「だってそうでしょう?ヘタレてるから、ちょっとピンチになった位で諦めちゃうのよ!そんなんだからゲームにも出番がないのよ!」
「おいっ!今この状況でゲームは関係ないし、ヘタレなんて者でもないぞ!」
「なら、王家御用達だか知らないけど、そんな扉、吹き飛ばしちゃいなさい!じゃないと、ずっと出番なしヘタレ王子のままよ!」
何か人形の言う″ヘタレ″が最低な称号に思えてきた。
「よーし分かった!前言撤回させてやる。見てろよ!」
「風よ吹け!」ドォーン!
さっきより強かったが、扉がミシミシ音を立てただけで終わった。
「そうそう!頑張れば出番があるわよ~もう一回!」
「出番なんて(ちょっとしか)気にしてないぞ!風よ‼」ドォォーン‼
さっきよりガタガタ揺れてる。よし!もう少しで扉を吹き飛ばせそう―
ドサッ!
いきなりめまいがして、前のめりに倒れた。
どうにか意識は保っているが、体に力が入らない。魔力切れか・・
読んで頂きありがとうございます
明日から 1日2話投稿×3日 で完結の予定です
最後までよろしくお願いします