ある夜突然
「ダメ飲むな‼」
突然聞こえてきた声にパッと周りを見回す。
幻聴?
今僕の部屋には誰もいないはず。従者も下がらせたし・・。
気を取り直し再びカップを傾けた。 その時、
「飲むなって言ってるでしょ!それ飲んだら死ぬわよ‼」
ダンッ‼
カップをテーブルに叩きつけ、声が聞こえた先を見る。すると、
人形と目が合った。
本棚の上にちょこんと乗った見慣れない人形と目が合っ・・いやっ!ないない!即否定し声の主を見つけようと人形から目を逸らす。が、
「おーい、戻ってこーい、こっちこっち」
どこか呑気な声が、信じられない事にやはり人形の方向から聞こえてくる。
「まさか・・人形がしゃべっているの・・か?」
半信半疑ながらも思わず言葉がついて出た。その言葉が聞こえたのか、
「ピンポーン!あなたブレント王子様よね?私の声が聞こえて良かったねー」
「びんぼぉー?なんだそれ?いやそれより何で良かったんだ?それにどうして僕の名を知っている?」
とっさに言葉を返した途端、ハッとして素早く周りを見回した。
分かってはいたが、もう一度誰もいないのを確認してホッとする。
よかった・・・。
人形に話しかけている所を誰かに見られでもしたら、僕の正気を疑われていた所だ。
ふぅーっと一息つく、落ち着くんだブレント!これは幻聴だ。そうに違いない。
だいたい人形がしゃべるなんてあるはずがない。
口なんか塗料で描いてあるだけだし。
正気な自分を肯定しようと躍起になっている、そんな僕をあざ笑うかのように、
「だって私の声が聞こえてなかったら、あなた今頃、毒殺されていたからよ」
呑気な声で人形がのたまう。
読んで頂きありがとうございます
次話は一時間後に投稿予定です