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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
四章 編集後記
66/66

虹葉高校新聞部です。

 

  二月。一月三十日に一月のファンファーレを発行したせいで、すぐに二月の準備に取り掛かることになった。二月に入るとようやく香も退院し、部活にも復帰した。病み上がりのはずの香はそれ以前よりも元気そうにしていた。


 「今年のバレンタインはまさかの記事に追われるって年かな?」

 「仁にはいつもバレンタインあげてるでしょーが」

 「は?」

 「お菓子。たまに勝手に摘んでるみたいだし。分かってるんだからね」


  奏が不満そうに口を尖らせた。そのやり取りを見て、何故か隼がため息をつく。鈴は思い切り肘で隼をつついてやった。隼はこちらを睨みつける。


 「神江覚えとけよ」

 「隼、手伝ってあげてるんだからそんな黄昏ている暇あるなら早く終わらせてね」


  香のキツい一言で隼はまた鈴を睨みつけ、作業に戻った。すると嵯峨がいきなり立ち上がり、ホワイトボードを引きずってきた。


 「何だ何だ」

 「嵯峨さんのスピーチ、いつも唐突に始まるからねぇ」

 「では今から!!次期部長を発表する!!」

 「このタイミングで?!」


  嵯峨は間を置いた。部員がひそひそと話すのをやめた頃、得意のハキハキとした声で発表した。


 「次期部長は・・・・・・立石隼!!お前だ!!」

 「何か犯人あてたみたいな言い方だな」

 「そして副部長は・・・・・・今福香!!」


  パチパチと嵯峨以外の部員は拍手をした。鈴はやはり思った通り、平社員ポジションだった。まあそれが安全だろう。奏が市来にひそひそと聞いた。


 「ねえ、私達の代も副部長なんていたの」

 「居たよ?俺さ」

 「何で?!仁、遅刻入部なのに?!」

 「俺は入学は遅刻したけど入部は遅刻してない。それに入部時期は関係ないだろ、こういうのは」

 「・・・・・・てことは、鈴ちゃんが私のポジションになるってことね。鈴ちゃん。貴方がこれからはお菓子を用意する番よ」

 「お菓子って部費から落ちてますか?」

 「アホか」

 「え」


  市来にそう言われて、鈴は唖然とした。お菓子はまさか、奏のポケットマネー?そしたら私の財布が。


 「ポケットマネーですか?」

 「当たり前でしょ。だから感謝しなさい、今。でも新入生にこれはポケットマネーで買ったお菓子です、なんて言うとケチな先輩だと思われるでしょう?だから黙っておいて、この日に言うのよ」

 「ええ・・・・・・」

 「あとそれから、こういう平社員ポジションはねやっぱ目立ちにくいから変なキャラクターを見つけといた方が良いよ」

 「いや三人だから自然と目立つって、鈴も」


  そんなこんなで発行日は徐々に近づいてきた。二月十四日。世間はバレンタインデーだが、虹葉高校新聞部にバレンタインデーという暦はなかった。四月に決まった七時集合は今日も始まり、鈴はあくびをしながら部室のドアを開けた。


 「おはようございます」

 「おはよう、神江」

 「おはよー」

 「おはよ・・・・・・ああー、死にそう」


  嵯峨と隼が新聞を荷台に乗せている間、奏は机に突っ伏して眠っていた。先輩達がこうやって配るのも、もうあと何回も無いのだ。香の手伝いに入り、殆どの準備が終わったところで市来が現れた。


 「まだ朝は冷えるねー、普通に」

 「何呑気にしてるんだ市来。今日は俺達がメインで配るんだから、シャキッとしろ」

 「すみません先輩。奏さんは生きてますか?」

 「んー何とかーー」


  先輩の後ろで荷台を押しながら鈴達三人は歩いた。今日は一年生は配らない日だ。

  八時頃になると生徒達がぞろぞろと門をくぐり始める。

  ファンファーレを配る先輩達。入学当時、新歓の帰り道に見たあの時の光景と何も変わらない。みんながみんな生き生きとしていて、元気を貰える。今ではみんながファンファーレを楽しみにしてくれている。こんな新聞部を私達は引き継がなければいけない。これからも、ずっと。


 「頑張らなきゃ」

 「・・・・・・ん?鈴、何か言った?」

 「ううん、何も!!」


  空っぽの軽い荷台を押しながら、部室へと戻っていく。いつの間にか横には、部長の嵯峨が歩いていた。嵯峨は鈴に言ってきた。


 「来年度から、また部活がいくつか増えるらしいな。お前の第一希望だった文芸部も、活動を始めるらしいぞ」

 「えっ文芸部が復活するんですか。私も入学するのが一年遅かったら、文芸部に入っていたのかなぁー」

 「まあ、栞先輩は居ないしな。新聞部なんて入らなかっただろう」

 「もしそうだったら、新聞部人数少なすぎてある意味廃部危機じゃないですか?」


  鈴が笑いながら言うと、嵯峨も確かに、と笑った。嵯峨とこうやって話せるのもあと何回あるんだろう。鈴は急に寂しく感じた。


 「神江、お前は才能があると俺は思う。あの・・・・・・神江ノベル、本当に素晴らしかった。俺も一応書いていた頃があったからな、大したことは言えないが」

 「ありがとうございます」

 「お前なら、ここと文芸部を掛け持ちにしたって俺は良いと思うんだぞ」

 「兼部、って大丈夫なんでしたっけ?この学校」

 「わからん」

 「じゃあまた新しいルール、作っちゃいましょうか。新聞の力で」

 「お前、本当は小説を書きたいんだろ?」

 「はい。書きたいです。今でもたまに書いてます。でも、私は」


  鈴は困ったように笑い、そして答えた。


 「虹葉高校新聞部です。もうこの部活で最後まで行こうって決めちゃいましたから」


  いつも眼力の強い嵯峨の目つきが、一瞬柔らかくなった。鈴はそれを見落とすことは無かった。嵯峨は、それじゃあ、と助言した。


 「今度の生徒会長は、仏頂面じゃないと良いけどな」



 編集後記:今年度も様々なことがありましたね!いつもファンファーレを読んでくださってありがとうございます。新聞部でも次期部長が決定し、徐々に引き継ぎが始まっています。来年度はもっとパワーアップしたファンファーレを皆さんにお届けしようと思っています!次年度の第一号をお楽しみに。(神江)



 END

これにて完結、となりました。長らくご愛読していただき本当にありがとうございます。

作品の感想をお待ちしております。一言でも構いません。

神江鈴が主人公の物語はこれでおしまいです。


本作とは別に番外編を更新していきます。現時点では全5話を予定しています。シリアス要素は全く無く、コメディー100%の番外編です。


番外編の主人公となるのは、新聞部員から尊敬される布良栞。時間は少しさかのぼり、鈴達が入学する約一年前から始まります。主人公は栞ですが、語り手は嵯峨の彼女でもあり先輩の"杏先輩"です。

番外編も是非、お楽しみに。

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