約束するよ
お見舞いに行くため、一同はまた病室に向かった。鈴達がぞろぞろとやってくると、香は驚いた顔をした。
「嵯峨先輩・・・・・・皆・・・・・・お見舞いに来てくれたんですか?・・・・・・心配かけてすみません、私もう退部したのに」
「今福はまだ退部していないぞ」
嵯峨は退部届をヒラヒラと振って見せ、香のベッドの上にそれを置いた。あ、と香は小さな声を出す。鈴は香の前に立ち、そして言った。
「ごめんね、香。勢いであんなこと言っちゃって。でも私も香と同じでさ、香のことが羨ましく思ってたんだ。香は頼りにされてるし、文章も丁寧なのに作業は早いし。香を抜かそうって思ったこともあったかも。ねえ、だから私達さ。ライバル、じゃ駄目かな?」
「え・・・・・・それって・・・・・・」
「今福が居ないと新聞部は困るんだよ。今も、今福一人が居ないだけで、今月のファンファーレが発行できるかどうかさえ危ういんだ。市来先輩も一人で掛け持ちして誤字脱字のオンパレードだし」
あっさりと文句を言っていた隼に対して、おい、と市来は小声でツッコんだ。隼は続けた。
「だからさ、戻ってきてくれないかな、部活」
「うん、戻ってきてよ香。だって隼と二人きりで新入生の面倒見れる気しないもん。やっぱりしっかり者は一人は居なくちゃ、新聞部崩壊しちゃう」
「俺達からも、頼む」
嵯峨がそう言うと、お願い、と奏も言った。すると市来も言った。
「香ちゃんはちゃんと認められているよ、皆に。ただ、ちょっと気付くのが遅かっただけ。香ちゃんはもっと自分に自信もっていいんだよ、自分のこともっと好きになって良いんだ。でも、ごめん。香ちゃんがこんなに追い詰められていたこと、俺達全然分からなかったんだ。だけど、隼と鈴は絶対支えてくれると思う、俺は」
香は黙って退部届を手に取った。しばらく、何かを考えているかのようだった。そして顔をあげた時―香の顔は明るかった。
「ありがとうございます。私、もうちょっと頑張ろうと思います。それから、ごめんなさい。自分のことで精一杯で、実際は周りのことなんて何も考えていなかったのかもしれない。鈴達の気持ちも、先輩達の気持ちも。私は、何にも分かってなかった。やっぱり・・・・・・この学校の新聞部は嫌いになれません。・・・・・・好きです、どこの部よりもずっと」
そこまで言ったところで、香は手にしていた退部届をビリビリと破いた。その途端、鈴は香のことを抱きしめてしまった。そしていつの間にか泣いていた。
「私すごくすごく怖かった、香のこと殺しちゃったんだって、怖かった。香が居なくなっちゃうってことも怖かった。もうこんなことしないって、約束して」
「うん・・・・・・」
何故か香も少し泣いていた。
「約束するよ」
次話で最終話となります。




