また、皆で
病院に着くとすぐに香の病室へと案内された。香の両親は既に来ていた。母親は呆然として、香のベッドの横に座っていた。香の頭は包帯でぐるぐる巻きにされ、血が滲んでいた。腕も骨折したようだった。香にまだ意識は無かった。
「頭を強く打ったようで、後遺症が残る可能性があります」
「後遺症・・・・・・」
母親が気のない声で、診察していた医者の言葉に反応した。相手のトラックの運転手も怪我をしたらしく、病院にはいつの間にか警察も来ていた。
鈴は手にじっとりと汗をかいていた。頭の中に何度も言葉が浮かんだ。
自殺。
香は、自殺をしようとしたんだ。私のせいだ。香がこんなことになったのは、私のせい。私があの日、あんなことを言ったから。
気づいた時にはくずおれていた。
「鈴ちゃんっ?!」
奏がすぐにしゃがみこみ、鈴の体を支えた。鈴には他の部員の声は聞こえなかった。視界がぼやぼやとして、涙がこぼれている事に気づく。
「私が・・・・・・っ私のせいっで・・・・・・」
香は既にあの時、私に助けを求めていたのかもしれない。でも私は。胸が苦しい。呼吸の仕方が分からなくなる。息ってどうやって吐くんだっけ。苦しい。きっと香はもっと苦しかった。もっと、もっと。
「鈴ちゃん、一回あっちの椅子に座ろ?」
通りかかった看護士が、駆け足でこちらへ向かってきた。
「大丈夫?ゆっくり吸って吐いて、繰り返してごらん」
場所を移動しましょう、と看護士が提案すると市来が鈴の体を支えて立たせた。
「私よりも先輩達の方がきっと安心するでしょう。また具合悪くなったら呼んでね」
そう言って看護士はナースステーションに戻っていった。鈴は奏と市来の間に座らされて、徐々に呼吸を整えていった。視界もハッキリとしてくる。
「鈴ちゃん、大丈夫よ。私達がいるからね」
そう声をかけてくれる奏やずっと背中をさすってくれる市来にようやく気づき、また鈴は泣きそうになった。
「・・・・・・はぁ・・・・・・すいません、ご迷惑おかけして」
「大丈夫大丈夫。仕方ないよ」
鈴はゆっくりと息をついてから、口を開いた。
「私が、悪いんです。市来先輩ごめんなさい、私先輩との約束破っちゃいました・・・・・・」
市来は特に表情を変えることはなかった。すると嵯峨が尋ねてきた。
「彼女はなんて言ってたんだ?」
「認めてもらえなかった、って。認めてもらいたかった、そう何度も言ってました」
また涙がいつの間にか目に溜まっていた。鈴は慌てて拭った。奏が心配そうな顔で嵯峨に尋ねる。
「これからどうするの、嵯峨さん」
「どうするって・・・・・・どうもしないぞ?今福の意識が戻るまで待つんだ。話はそれからだろ。俺達が何を言ったって事は変わらない」
「でも・・・・・・もし、もしも、ずっと、香が目を覚まさなかったら」
「覚ます」
不安げな鈴の声を嵯峨はかき消した。市来もそれに続けて言った。
「それに、鈴一人の責任じゃないよ。俺達皆それぞれ考え直す必要があるんじゃないかな。一人で抱え込まなくていい」
「私が香に言わなかったら、香はこんなことしなかったんじゃ」
「鈴は何言っても香ちゃんに声をかけるだろうなとは俺も思ってたよ。でも香ちゃんはこの行動をすることを、ずっと前から決めていたのかもしれない。そのことに俺達も気づけなかった。だから、お前一人のせいじゃない」
「・・・・・・隼と神江が、今福を新聞部に戻したいと思うのなら俺達は協力しよう。まあ俺達は戻ってほしいと思っているが」
しばらく沈黙が流れたあと、隼がはっきりと言い切った。
「俺は今福に戻ってきてもらいたいです。やっぱり今福は新聞部に必要な存在です。まだあいつから教えてもらいたいことたくさんあるし、今までだって頑張ってきたんだ。これからだって頑張って欲しいから」
「・・・・・・わ、私も!!私も、香に戻ってきて欲しいです!それに、ちゃんと謝りたい・・・・・・!また皆で作りたい」
香が意識を取り戻したのは、それから二日後の事だった。




