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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
四章 編集後記
62/66

香の告白

 言葉を失った。何て声をかけたら良いのか分からなくなった。香の顔は何故か穏やかだった。それが今はむしろ憎らしくさえ感じた。


 「部活、辞めちゃうの?」

 「うん。驚かせてごめんね。でも、私一人居なくなってもどうってことないよ。どうにでもなるから」

 「・・・・・・何で、辞めることにしたの?話せることだったらさ、教えて」

 「もう嫌になったの。疲れたの、私。何でこんなに、何のために頑張っているのか分からなくなっちゃったの」


  信号機が青色に変わる。誰もその足を前に進めない。


 「私さ、新聞部って部活嫌いだったの。中学の頃」

 「え・・・・・・?」

 「私はね、親に認めてもらいたくて当時強豪だった新聞部に入部したの。でも実際入ってみたら、全然想像と違った。顧問も先輩も皆して賞を取ることしか頭に無くて、有りもしないような記事ばかり嘘の記事ばかり書いていた。でも新聞部を辞めることができなかったのは、私が好きだったからとかそんな問題じゃなくて、単純に親に認めてもらいたかったから。高校は絶対違う部活にしようって思った」


  青信号が点滅してまた赤色に変わる。向かい合って話す女子高生のことなんて気にもとめずに車は横断歩道を通り過ぎて行く。


 「新歓の日、私は虹葉の新聞部員を見た。中学の部員と違った。皆生き生きとしてて、素敵だなって。私は市来先輩からファンファーレを貰った時、この人に認めてもらいたいって思ったの。だけど」

 「・・・・・・」

 「私は認めてもらえなかった。中学の経験があるから皆よりも能力はあると思っていたけれど、次第に私にはできて当たり前っていう意識に皆が変わっていった。私は鈴や隼みたいに褒めてもらったことなんてほとんど無い。皆よりも頑張っているのに。先輩に気に入ってもらいたくて、一生懸命手伝ったりしたのに。私は報われなかった。私は鈴みたいに面白いこと言って先輩達を笑わせることもできないし。そしたら気づいた時には市来先輩は鈴に告白していた」


  香は泣いてもいないし怒ってもない。ただ淡々と鈴に全てのことを告白していた。鈴はどんな顔をすれば良いのか分からなかった。


 「ごめんね、鈴。市来先輩が鈴に告白した朝、部室の前に居たんだ。先輩が朝いつも部室居るの知ってたから、行こうと思ってたまたま居たの。そしたらそんなこと聞いて、私わけわかんなくなっちゃって。私はクラスの人に市来先輩が告白したって噂を流した」

 「じゃああれは・・・・・・香が・・・・・・」

 「そうだよ。私が流したの。そうすればもしかしたら、鈴も怒って振ったり・・・・・・とかしないかななんて考えてた。ごめんね。でも良いんだよ、市来先輩にはもう話したから。連文祭の打ち上げの帰りに」

 「ごめん」

 「謝んないでよ。鈴に謝られたら私はどうしたらいいの?・・・・・・私は鈴になりたかった。鈴みたいに明るくて先輩にも気に入られて、皆から認められる存在になりたかった。鈴がいる限り、新聞部での私はこの先も何も変わらない。だから私は辞めることにしたの」


  鈴の心はむしゃくしゃしてきていた。随分だ。自分だって香のことを羨ましく思っていたことは何度もあった。認めてもらえていない?褒めてもらっていない?そんなのただの自意識過剰だ。それに市来に認めてもらいたいと思っているくせに、噂を流したりして市来の気持ちなんて何も考えていない。全て自分の都合通りにしようとしている。

  私なんて香よりもたくさん嵯峨に怒られてきた。先輩達はどう考えても香のことの方を頼りにしていたに決まっている。香は自分のことしか考えていなくて、周りをちゃんと見ていない。

  そんな人はいつまでたっても"認めてもらえる"わけが無いのだ。

  気づいた時には鈴は叫んでいた。


 「辞めたいなら勝手に辞めなよ!それでみんなに迷惑かければいいじゃない!自分のことばっか考えて周りの気持ちなんて何も考えていないし分かってない。人の顔色をいつも伺ってたって、結局は自分が認めてもらえるためにって自分のことを考えているのと同じことだよ!そんな人が"認めてもらえる"わけが無いよ。私に返せる言葉なんて何もない」


  鈴は横断歩道を走って渡り、香を置いて走っていった。一人残された香はしばらく突っ立っていた。信号機の赤い色が目に刺さる。


 「やっぱり私なんて、居ない方が良いんだよね」


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