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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
四章 編集後記
57/66

聞いてあげるよ

  十二月二十二日の夜。外は冷えきり、自分の部屋でくつろいでいた鈴はふとスマホを手にした。あれから市来からLINEの一通も届かなかった。あれからというのは、冬休みに入る直前に届いた事務連絡のようなLINEのことである。鈴が適当にした返信に既読がついてからというものの、ぱったりと音信不通になった。


 「もうすぐクリスマスなのになー。インフルにでもなったのかな」


  もうすぐクリスマス。正直、クリスマスでなくてもいつでも良かった。しかし自分から連絡をするのも気が引けた。間違えて電話の発信ボタンを押した。一瞬慌てたが、良い機会だと思い恐る恐るスマホを耳元に当てる。

  呼び出し音が永遠に流れ続ける。何コールも鈴は待った。音は変わらなかった。やがて鈴は自分からぷつりと電話を切った。


 「・・・・・・」


  また半べそをかきそうになってこらえた。しかし手は勝手に茜に電話をかけた。


 「もしもーし」

 「・・・・・・」

 「ん?あれ、鈴だよね?どした」

 「・・・・・・茜」

 「うん」

 「クリスマス、空いてない?遊びに行こうよ」

 「ええっ良いの?クリスマス、先輩とデートするんじゃないの?」

 「だって・・・・・・」

 「音信不通なの?というか、その話がしたいだけなんでしょう。今なら聞いてあげるよ、仕方ないなぁ」

 「・・・・・・あのね。考査前の最後の部活の時も何からしくないっていうか、元気無くてね。早く帰っちゃったしさ。本当に体調悪かったのかもしれないけどさ」

 「うーん、じゃあ本当に具合悪かったのかもよ?大丈夫だって、市来先輩はちゃんと連絡くれるよ。だって鈴は別に何かしたわけじゃないんでしょ?」

 「何もしてないよ・・・・・・この前の打ち上げの時だって普通だったもん」


  打ち上げの時は普通だった。いつも通り肉よりも焼き野菜ばかりを食べていた。帰り道は寝てしまったから覚えていないが、席は隣だったはずだ。


 「ねえ私、嫌われていないよね」

 「嫌われてる?どこからそんな発想が出てくるわけ?今までの鈴の話聞いてると全然なんだけど?」

 「普段うるさいんだもん、よく喋るし。なのにいきなり静かーになったら誰だって不安になるでしょ?」

 「先輩にもね、先輩なりに色々悩んでることがあるに決まってるでしょう。いつ鈴ちゃんとチューしようかなぁ、とかさ」

 「結局悩みの種私じゃない!」

 「今挙げた悩みの種は随分幸せなお悩みですけどね。実際したの?」

 「・・・・・・してないよっ」

 「・・・・・・本当に?」

 「本当だって」


  いつの間にか沈んでいた気持ちが徐々になくなってきていた。その後、全く関係の無い話で盛り上がり鈴は声を上げて笑ってしまった。

  翌日の夜。家でのクリスマスパーティーが終わった後部屋にいた時、電話の着信音が鳴った。


 「先輩だ」


  思わず茜はエスパーかもしれない、と鈴は思った。唾を飲み込むと電話にでた。自分から初めて"もしもし"という言葉を発する。


 「もしもし」

 「鈴?昨日の夜、電話くれたよね。ごめんね、出れなくて。塾に行ってて」

 「塾・・・・・・」

 「うん。今無料お試し冬期講習って期間でさ・・・・・・って俺のことはどうでもいいんだ。なかなか連絡できなくてごめんね」

 「い、いや、その・・・・・・気にしないで・・・・・・」

 「・・・・・・すっごいいきなりで本当申し訳ないんだけどさ・・・・・・明日の夜、空いてる?」


  意味もなくカレンダーに目をやる。明日は二十五日。クリスマスだ。


 「空いてます」

 「空いてるか!良かった・・・・・・まあ別に明日じゃないとダメってわけじゃないんだけどね。イルミネーションがすごい綺麗なところがあるんだ、そこに行きたくて」

 「行きたい!」


  鈴の声は既に弾んでいた。


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