聞いてあげるよ
十二月二十二日の夜。外は冷えきり、自分の部屋でくつろいでいた鈴はふとスマホを手にした。あれから市来からLINEの一通も届かなかった。あれからというのは、冬休みに入る直前に届いた事務連絡のようなLINEのことである。鈴が適当にした返信に既読がついてからというものの、ぱったりと音信不通になった。
「もうすぐクリスマスなのになー。インフルにでもなったのかな」
もうすぐクリスマス。正直、クリスマスでなくてもいつでも良かった。しかし自分から連絡をするのも気が引けた。間違えて電話の発信ボタンを押した。一瞬慌てたが、良い機会だと思い恐る恐るスマホを耳元に当てる。
呼び出し音が永遠に流れ続ける。何コールも鈴は待った。音は変わらなかった。やがて鈴は自分からぷつりと電話を切った。
「・・・・・・」
また半べそをかきそうになってこらえた。しかし手は勝手に茜に電話をかけた。
「もしもーし」
「・・・・・・」
「ん?あれ、鈴だよね?どした」
「・・・・・・茜」
「うん」
「クリスマス、空いてない?遊びに行こうよ」
「ええっ良いの?クリスマス、先輩とデートするんじゃないの?」
「だって・・・・・・」
「音信不通なの?というか、その話がしたいだけなんでしょう。今なら聞いてあげるよ、仕方ないなぁ」
「・・・・・・あのね。考査前の最後の部活の時も何からしくないっていうか、元気無くてね。早く帰っちゃったしさ。本当に体調悪かったのかもしれないけどさ」
「うーん、じゃあ本当に具合悪かったのかもよ?大丈夫だって、市来先輩はちゃんと連絡くれるよ。だって鈴は別に何かしたわけじゃないんでしょ?」
「何もしてないよ・・・・・・この前の打ち上げの時だって普通だったもん」
打ち上げの時は普通だった。いつも通り肉よりも焼き野菜ばかりを食べていた。帰り道は寝てしまったから覚えていないが、席は隣だったはずだ。
「ねえ私、嫌われていないよね」
「嫌われてる?どこからそんな発想が出てくるわけ?今までの鈴の話聞いてると全然なんだけど?」
「普段うるさいんだもん、よく喋るし。なのにいきなり静かーになったら誰だって不安になるでしょ?」
「先輩にもね、先輩なりに色々悩んでることがあるに決まってるでしょう。いつ鈴ちゃんとチューしようかなぁ、とかさ」
「結局悩みの種私じゃない!」
「今挙げた悩みの種は随分幸せなお悩みですけどね。実際したの?」
「・・・・・・してないよっ」
「・・・・・・本当に?」
「本当だって」
いつの間にか沈んでいた気持ちが徐々になくなってきていた。その後、全く関係の無い話で盛り上がり鈴は声を上げて笑ってしまった。
翌日の夜。家でのクリスマスパーティーが終わった後部屋にいた時、電話の着信音が鳴った。
「先輩だ」
思わず茜はエスパーかもしれない、と鈴は思った。唾を飲み込むと電話にでた。自分から初めて"もしもし"という言葉を発する。
「もしもし」
「鈴?昨日の夜、電話くれたよね。ごめんね、出れなくて。塾に行ってて」
「塾・・・・・・」
「うん。今無料お試し冬期講習って期間でさ・・・・・・って俺のことはどうでもいいんだ。なかなか連絡できなくてごめんね」
「い、いや、その・・・・・・気にしないで・・・・・・」
「・・・・・・すっごいいきなりで本当申し訳ないんだけどさ・・・・・・明日の夜、空いてる?」
意味もなくカレンダーに目をやる。明日は二十五日。クリスマスだ。
「空いてます」
「空いてるか!良かった・・・・・・まあ別に明日じゃないとダメってわけじゃないんだけどね。イルミネーションがすごい綺麗なところがあるんだ、そこに行きたくて」
「行きたい!」
鈴の声は既に弾んでいた。




