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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
四章 編集後記
54/66

嘘をおっしゃるな

 「え?嘘を言わないでください、多田先生」


  その言葉を嵯峨が発したのはもうこれで七回目だ。みんなは口を開けたまま、無言で嵯峨と多田のやり取りを聞いている。


 「だから、これは本物の結果通知だ。お前らは来週、三十日に千葉に行く」

 「県代表ってことですか?」

 「ま、まあ正確には都代表だが・・・・・・全国出場決定だ」

 「全国?!本当に全国?!夢じゃないのか?!」


  今年度の目標、全国出場を果たしてしまった虹葉高校新聞部は十一月三十日、千葉県で開催される全国高等学校連合文化祭に参加することが決定した。当日、新聞部員らは夜行バスに乗って早朝に千葉県に到着。


 「やだよー全国来ちゃったねー仁」

 「来たねー全国」


  連文祭新聞部門の会場は、既に他校の新聞部員でいっぱいだった。会場の壁一面に拡大新聞が掲示されていた。その数は九十四部。そのうちの四割の高校が賞を受賞しているという。もちろんその高校がどこなのかはまだ発表されていないが、奏は明るく言った。


 「虹葉が全国にまた戻ってきたって、それだけでもう凄いってー」

 「目標、達成できて良かったですね」


  嬉しそうな奏に香も声をかけた。しばらくうろうろと会場内を見学していると、見覚えのある男性に出会った。あ、と市来が言うとすぐに向こうは気づいた。


 「市来じゃないか。そうだったな、虹葉も全国出場したんだったな」

 「全国二位は毎年参加するのが恒例ですか」


  夏の合宿の際に訪れた市来の母校の新聞部の顧問だった。鈴もそこで校内新聞作成のアドバイスをいただいていた。


 「そんなプレッシャーをかけるような冗談はやめてくれ、市来。うちだってそれなりに努力しているのだから。それはここに来ているどの学校も同じことだ」

 「全国に来れたのは先生のアドバイスがあったおかげでもあるかもしれません」

 「調子のいいこと言うんだな、お前は」


  他校の新聞はそれぞれ"個性"があって、また内容もそれぞれだった。地域に密着しているものもあれば、写真やレイアウトが整っているもの、記事の文章が達筆で面白く書かれているもの。本当に様々だ。


 「どの学校もレタリングとかレイアウトが素敵過ぎ!写真に収めたい!」


  奏は既に目を輝かせながら、他校の新聞を眺めていた。自由見学の時間が終わると、全国の新聞部部員は広い講堂に集められた。ステージ上には、新聞部門の主催のある新聞社の代表の人が立っていた。代表は簡単な挨拶を終えた後、新聞部門の賞について説明した。


 「どこの学校の新聞も非常に素晴らしく、選出するのに我々もとても苦労した。今年度は計三十七校が受賞をしている」


  努力賞の発表から始まり、写真及び図などが優れている学校、記事の文章力、報道性のあるものなど色々な分野での賞を受賞した学校名が次々に呼ばれていく。 最後に総合的に優れていた作品、上位三つの発表となった。虹葉の名前はまだ呼ばれていなかった。

  三位、優良賞の発表。知らない学校の名前が呼ばれ、鈴達のいる席より離れたところで歓声が上がった。


 「全国出場できただけでも良いよね」


  そう奏が呟いた時、既に二位優秀賞の発表が始まっていた。三位発表後ざわざわとしていた雰囲気がアナウンスにより、途端に静かになる。


 「優秀賞は・・・・・・都立虹葉高校!!」

 「え?」


  やばいやばい、と奏が同じ言葉を連呼して叫んだ。驚きすぎて何も言うことができなくなっていた。最優秀賞は、市来の母校だった。学校の発表が終わったところで、各部の部長は表彰のためステージに集まる。黙って嵯峨が席から移動し、ステージ上に向かった。嵯峨は向かう途中でぐしぐしと腕で目を拭った。


 「嵯峨先輩が・・・・・・」


  鈴の隣に座っていた隼が呆気に取られたように声を漏らした。奏は既に開き直っておいおいと涙を流していた。


 「うわっ奏何その顔・・・・・・」

 「私達の代で・・・・・・夢の・・・・・・夢だったはずの・・・・・・全国出場・・・・・・からの・・・・・・優秀賞なのよ!!」


  鼻声で奏が一生懸命になって言ったと思うと、うわぁーと声をあげ、市来の腕に抱きついた。


 「ちょっ、やめてよ、奏っ」

 「仁ー私達ももう少しで引退なのよねっこれで栞先輩達もきっと安心して卒業してくれる!」

 「きっ気が早いってー」


  表彰が終わり、それぞれの代表がそれぞれの学校の部員達の元へ戻っていく。嵯峨が貰ったトロフィーを掲げてこちらへ向かって歩いてくる。


 「おめでとう!」

 「おめでとう!」

 「おめでとうございます!」

 「おめでとうございます!」

 「おめでとうございます!」

 「もっと別の言葉は無いのか!おめでとう!・・・・・・虹葉高校新聞部がここまで来れたのは皆一人一人のおかげだ!ありがとう皆!」

 「ありがとう!」

 「ありがとう!皆!」

 「ありがとうございます!」

 「ありがとうございます!」

 「ありがとう・・・・・・ございますっ!」


  思い思いに喜び合う新聞部員達。しかしこの喜びがいつまでも続くはずなど無かった。世代交代が徐々に近づく中、新聞部にある変化が起き始めることを鈴はまだ何も知らなかった。

  連文祭が終わった翌日から、師走を迎える。

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