連文祭までのカウントダウン
日曜日。朝九時半。新聞部部室ではパソコンのキーボードを叩く音のみが聞こえる。鈴は隼とそれぞれ小見出しで担当を割り振っていた。
「嵯峨先輩、どうですか」
「・・・・・・文章は特に問題無いが、カギ括弧の前に丸が入っている。これは消せ」
「あっはい・・・・・・」
また少し文字数がずれ始める。修正を加えれば加える程先が思いやられてくる。それぞれがそれぞれの作業で手一杯だ。いつもゆるゆるな新聞部も、連文祭前はピリピリとしている。あの奏さえカロリーメイトを口にくわえて作業をしているのだ。
正午を知らせるチャイムが鳴り、一同は椅子に座ったまま、ぐんと背伸びをした。いつもならここで休日は解散だが、嵯峨や香はコンビニ袋を取りだした。
「あっお昼忘れたっ」
鈴が思わず叫ぶと瞬時に奏がこちらを見てくる。すると市来が立ち上がって言った。
「ラーメン行こう!このままだと頭おかしくなりそう!奏と隼も忘れちゃったんでしょ?みんなでラーメン食べに行こうよ!」
みんなは無言で財布を取りだし嵯峨と香を二人だけ取り残して部室から出ていった。一階に降りたところで、市来と奏がはぁぁと長いため息をついた。やっと声が出せたとでも言いたそうな雰囲気だ。
「目がしょぼしょぼするよ・・・・・・OLになったら私死ぬかもなぁ」
「奏、OLになんてなるの。製菓会社の企画部長じゃなくて?」
「私はねそんないつもいつもお菓子しか見てないわけじゃないんだから」
「じゃあ何見てるの?お米?お魚?お肉?男の子?」
「うるさい!そういう仁はどうするの?仁に会社員は無理そうだけど」
「うーん、わかんない。でも市民館スタッフ楽しかったから、児童館にいるお兄さんとかやろうかな」
「まあ愛想良いだけが取得だもんね・・・・・・」
市来と一緒に過ごすことが多くなった鈴は、彼は特別愛想が良い訳では無いような気がしていた。悲しかったり苦しかったりした時に笑っていれば何とかなる。何だかそんな一面があるような感じがした。
カウンター席で無言でラーメンをすすり、四人はすぐに駅から歩いて戻ってきた。部室に戻ると、香が机に突っ伏していた。
「ただいまー」
「朗報だ。今福の記事が終わった」
その嵯峨の一言で、帰ってきた部員達は息を飲んだ。そのうち鈴も明日は部活、ではなく明日も仕事、と母に言うようになってしまったくらいである。
いつの間にか嵯峨が作っていた手書きのカウントダウンの数字が日に日に減っていく。乱暴に書かれた数字を見る度に部員はドキリとして作業を続けた。
ある日は奏がうわあああ、と発狂した。誰かが何かを言う前に部室から出ていき、手にはコンビニの袋を持って帰ってきた。もはやヤケ食いである。隼は学校に泊まって行きませんか、と真面目な顔で嵯峨に申し上げた。嵯峨は一瞬、良いぞ、と答えたがすぐに首を振り隼の肩も掴んで強く振った。香は奏の手伝いをしている時、キーボードに手を置いたまま眠っていた。
「もう・・・・・・死にそう・・・・・・」
そう部員達が死にかけて机に倒れていた時。いきなりバタンと部室のドアが開いた。そこには模造紙を丸めた筒を腰に挟んだ多田が立っていた。
多田はいきなり声を上げた。
「部員ども目を覚ませ!連文祭新聞部門に提出するファンファーレは読ませて貰った!・・・・・・まだまだ所々未熟なところはある。だがしかし!!高校生なりのお前らなりの努力や頑張りがよく伝わってくる。そして今年度中の内容はとても濃いと思うぞ。他部活との連携プレー、お見事だった」
「・・・・・・うううありがとうございますっ!!」
部員は口々に叫んだ。まだ連文祭にも提出していないファンファーレ特別特大号であるが、多田にこう褒めてもらえること、それはとても光栄なことだったのだ。




