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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
四章 編集後記
51/66

十四日間の奇跡

 市民館でボランティア活動を始めて二週間が経った。初めに来た時よりも状況は良くなっていた。やはり学生がスタッフを務めることに効果があったらしい。しかし、煙草小学生の問題はまだ解決していなかった。気にしていると何も無いもので、忘れた頃にやってくるものだ。

  その日、鈴は隼と一緒に回っていた。児童室のドアをいきなり開けた途端、二人は現場を目撃した。


 「あ」

 「あ」


  スタッフも利用者も同時に同じような声を上げた。初日、市来と共に注意した四人組が手に煙草を持って口にくわえていた。煙草を口から離し、一人の女子は口からふぅーと息を吐いた。

  スタッフに現場を押さえられては、元も子もない。鈴達が市民館の職員に連絡し、子供たちの親に連絡が届くまでそう時間はかからなかった。小学生は四人、事務室のソファに座らされ、そのテーブルには問題の煙草の箱が二つ置いてあった。二つの箱を四人で分けながら吸っていたらしい。隼が四人の様子を見ている間、鈴は廊下へでて電話をかけていた。


 「もしもし」


  かけた相手はすぐに出た。声に抑揚が無かった為、機嫌が悪いのかと一瞬鈴は不安になった。


 「初日に児童室に居た煙草小学生、ついさっきね吸っている現場にはちあわせたの。だからこれから親が来るんだけど・・・・・。来る?」

 「んー、行こうかな。・・・・・・嵯峨っちー、今から市民館行ってもいい?何か煙草のやつのことで・・・・・・うん、大丈夫そうだから、今から行くね。わざわざ電話くれてありがとう、鈴」


  親よりも三分程早く市来は到着した。あれ市来先輩、と隼は軽く驚いた顔をしただけだった。小学生の親は若く、少し怪訝そうな顔で事務室を訪ねてきた。


 「すみません、うちの息子が迷惑をかけたようで・・・・・・」


  大宮は親達に向かって軽く事情を話した。


 「今、高校生がボランティアとしてスタッフの仕事を務めているんですけどね。彼らが、この子達が喫煙しているところを見つけたんですよ」

 「はぁ・・・・・・」

 「二箱の煙草を四人で分けて吸っていたらしいのですが。喫煙している事についてご存知でしたか?」


  親達は黙って首だけを振った。親は子どもが煙草を吸っていたことに対してあまり動揺していなかった。まるで、最近の子は吸うでしょう、とでも言いたげに。


 「本当に申し訳ございません。ちゃんと謝ったの、市民館の方とスタッフさんに」

 「・・・・・・ごめんなさい」


  一人がそう謝ると、他の三人もぼそぼそとごめんなさい、と言った。親達も頭を下げて、そして大宮に向かって言った。


 「もうここへは来させないよう、言い聞かせますので」

 「いや、全然来て良いんですよ。こちら側としては全く問題ありませんので」


  そう笑顔で言う大宮。ここへは来させないようにする。違う、そういうことをして欲しいのではない気がする。市民館は誰でも利用できる場所。だからこそちゃんと教えることがあるはずだ。親は大宮の言葉を聞いてまた頭を下げ、そして帰ろうと子供たちに声をかけた。

  突然、市来が小学生に向かって怒鳴った。


 「謝れ」


  その声で場の空気が一瞬止まった。四人の一人の男子がもごもごと言った。


 「謝った・・・・・・謝り、ました・・・・・・」

 「俺達に謝ったって何の意味も無いんだよ。注意されたのに直さなくてごめんなさいとか、もしそんな小さい理由で謝ったなら始めから謝るんじゃない」


  小学生は怯えたような顔をして、だんだん目に涙が溜まってくる。そんなことは気にせずに市来は続けた。


 「自分の親に謝れ。煙草を吸ったこと、自分の言葉で親に話してちゃんと謝るんだ。わかったな。そしたらいくらでも遊びに来い」


  煙草なんてそんな簡単に止められるはずがない。でも親に自分がやってきたことを話すと、何だか馬鹿らしく思えてくるのだ。すぐというわけにはいかないが、煙草はやめよう、きっとそう思ってくれる。ただ、悪いことをしたらきちんと謝る。それだけはちゃんと身に染みていて欲しい、と市来は思うのだった。そこまで考えるのは、彼が無意識のうちに過去の自分と照らし合わせているからかもしれない。

  その後、鈴達三人は事務室のソファに座らされた。出されたお茶に口をつけていると、大宮がやってきた。


 「約二週間だが・・・・・・君たちが来てくれたおかげで市民館は本当に変わったよ。きっとさっきの子達も、また遊びに来てくれるだろうし。本当に、良くやってくれたよ」

 「そうですか。変わりましたか。良かった・・・・・・」

 「今回こうやって申し出てくれた新聞部さんには感謝をするよ。是非、記事に使ってくれ。というか、自分達のことを良く書くべきだと私は思うぞ。それから、体育館使用の事だが・・・・・・君達の通う学校の生徒さんだ。きっと心配無いだろう。体育館使用の許可を出そう」

 「本当ですか?!」


  三人は同時に叫んだ。体育館使用は新聞部には直接関連することではないが、自分達のことのように嬉しかった。隼と鈴はバスケ部、バレー部の生徒を呼びに行った。他の生徒が帰ってくるのを待っている間、黙っていた市来に大宮は尋ねた。


 「偏見だがね、高校生のことを学生だからと少し軽く見ていた所があったんだ。だが、君達学生からも学ぶことはたくさんあるようだということに、この数週間で気づかされたよ。特にさっきの一件は・・・・・・私は多分、君のことを忘れないと思うよ」

 「あの子達を見ていたら、同じくらいの頃の自分を何だか思い出したんです。僕も親にたくさん迷惑をかけましてね。煙草も・・・・・・中学生からですけど、やっていましたから」

 「そうだったのか。実は私も、そのくらいの頃は少し」


  きょとんとしている市来に大宮は微笑んで見せた。その後やってきたバスケ部とバレー部員はお礼の言葉を何度も繰り返した。そして、新聞部にも。悪い気はしなかった。鈴は一眼レフを持っていることを思い出し、大宮に向かって言った。


 「大宮さん、写真撮っても宜しいでしょうか?」


  もちろん、と大宮はうなずいた。運動部も新聞部も一部の部員だけだったが、大宮と共に写真を撮った。この写真は、連文祭のファンファーレのトップ記事の写真となる。

  その数日後、虹葉市民館から地域貢献という名の賞状が新聞部、バスケ部、バレー部宛に届いた。

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