部長目線から見た場合
「嵯峨っち高校生を負かしたんだって?やるねぇ」
「言い方が悪いぞ、市来」
「いきなり胸ぐらなんて掴まれたら、俺だったらまず右手で申し訳ないけど顔面ぶん殴ってるね」
「俺は胸ぐらなんて掴まれていない。逆に掴み返した方だ。今どき喧嘩強い高校生なんているのか?」
「まあ、ヤンキーなら強い人もいるんじゃない」
鈴と嵯峨が部室に戻った時は、六時半を少し過ぎていた。解散をしてしまっていたため、隼は既に帰った後だった。だが、一人で担当している香とそれを手伝う奏は七時まで残る、と言った。市来は何故かスマホを見ながらカバンを持って廊下の壁に寄っかかっていた。帰ってきた二人に気づくと、おかえり、と市来は腕をさすりながら言った。
流れで嵯峨も一緒に途中まで帰ることになり、鈴達三人は並んで歩いた。
「しかしお前何で廊下なんかで待ってたんだ。だいぶ冷えてきただろう、部室の中に居れば良かったのに」
季節は11月中旬。風がだんだん冷たく感じ、特に日が落ちると日中よりも冷えた。鈴も毎日生足だが、女子高生はこれを皆越える、と勝手に思って登校している。
「だってさー部室の中にいたってやる事ないじゃん。それに俺ただの邪魔者になるし。俺がいると奏が話しかけてくるんだよ、どうでもいいこと」
「お前が話しかけるんだろ」
「俺と奏が話すと香ちゃんがめっちゃ迷惑そうにするから、俺は逃げたの」
「今福は市来や皆川よりも大人だからなぁ」
「ねえねえ嵯峨っち。部長目線から見ても、俺って香ちゃんに嫌われているような感じしない?」
「嫌われているとまではわからないが、まあお前みたいなタイプは苦手そうだよな」
「もう何で同じ担当にしたの?」
「別に良いじゃないか、仲の良い相手だと作業がはかどらないだろ。そういや神江、記事の調子はどうだ」
ぼーっとして歩いていた鈴はいきなり嵯峨に質問をふられ、思わず聞き返した。
「隼もいるので・・・・・・まあまあ進んでます。何を書こうか構成しているところです」
「連文祭まであと二週間・・・・・・も無いよな」
「十一月三十日だったよね?全国出れるかどうかわかるのは」
「それよりも前に完成させないといけないってことですか?」
「そうなるね。・・・・・・全国の会場ってどこ?」
「今年は千葉らしい」
「千葉・・・・・・鈴、次のデートはディズニーランドでも行く?」
「えっそんなにお金無い」
「金欠かぁ・・・・・・部活辞めてバイトしようかな」
「良いですよ、私はそんな遠いとこじゃなくても・・・・・・どこだって良いですから」
「・・・・・・随分好かれてるんだなお前」
横から口を挟むようにして嵯峨が市来に言った。鈴はそれを聞いて照れ隠しのように笑ったが、市来はいざとなると黙ってしまうのだった。
「絶対全国行こうぜ、嵯峨っち」
「どうした急に・・・・・・」
「三月までには行こうね、ディズニー!約束!」
その様子を見て嵯峨が早く受験終わらないだろうか、とぼそりと言った。




