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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
四章 編集後記
46/66

隼は恋バナがお好き

  その頃、鈴は隼とともにバスケ部とバレー部の市民館へ交渉に行った生徒に取材を行なっていた。どちらも回答はほとんど同じだ。許可が貰えない理由はちゃんと教えてもらっていない。とりあえず何度行っても駄目だとしか言われない。このままだと春と全く同じような状況になってしまう。いっそのことグラウンド解体を取りやめにしてほしい、と。


 「南グラ解体を今更取りやめにするのは流石に難しいよな。生徒の力でどうやって立ち向かえば良いのか」

 「署名でも集める?」

 「キリがないな。てか理由教えてもらっていないあたり、もう取り合ってもらっていない感じがするんだけど。やっぱり市来先輩の言う通り恨みを持たれている可能性が高いんじゃ・・・・・・。市来先輩っていえばさ、お前まじで告られたって風の噂で聞いたけど」

 「何それ?!どういうこと?!」


  鈴はもう隼の言葉の前半はほとんど耳から抜けていた。風の噂という言葉にだけ過剰に反応する。


 「クラスの奴から聞いたんだよ。市来先輩って今結構有名だろ、だから」

 「何でみんなに広まるの、おかしくない?」

 「へ、とうとう告られたこと認めたか」


  鈴は周りをきょろきょろと見回して生徒があまり居ないことを確認すると、小声で隼に言った。


 「確かに告られたよ・・・・・・今朝。でも何でうちのクラスに広まってるの?私もうわけわかんなくて茜にすら話していないのに。今話したのが初めてだよ?」

 「じゃあ市来先輩?」

 「何で話しちゃうの?だってまだ返事してないよ、私。せめても話すなら返事が来てからじゃないの普通。何それ、言ってることとやってること全然違うじゃん。私にはゆっくり考えてって言ってたくせに。私の気持ちなんてどうでもいいんだよ、あの人、噂広めて振ったら気まずくなるようにしてるのかな」

 「ちょ、神江一回落ち着けよ、冷静になれって。俺が変なこと口走ったのが悪かったよ。市来先輩はきっと誰にも話していないよ、俺が先輩の立場だったらまず話さないもん。先輩だってそういうとこはちゃんとしてるはずだろ?恋愛事情よく知らないけどさ」

 「ねえその風の噂、もしも先輩の耳に入ったら私が話したって勘違いされるんだよね、先輩に」

 「まあ、まずそうだろうなぁ」

 「そんなこと知られたら私最低な奴だよね・・・・・・。どうしよう・・・・・・」


  すっかり落ち込んでしまった鈴に隼はケロッとした顔で助言をした。


 「早く答えを出せば良いんだよ。早く返事してはっきりさせれば良いじゃん」

 「良いよね、男ってそういうとこ単純で。実際分からないの、好きなのかそうでないのか。告白したこと誰かに話したんですかって聞いて、うなずかれたらその時点で振ろうかなぁ」

 「そんな半端な決め方でいいわけ」

 「・・・・・・良いよ、半端な決め方でも。多分そうした方が、鈴ちゃんらしいってきっと先輩笑ってくれるだろうし。先輩のことまだ信じてないみたいな聞き方になるけど、多分大丈夫、あの先輩なら」


  逆に開き直ってしまった鈴に向かって、隼は一言言葉を発した。


 「お前普通に市来先輩のこと好きじゃん」




  鈴と隼が部室に戻ると、嵯峨が唖然としたような顔をして出張帰りの市来達の話を聞いているところだった。話している三人はちらりとこちらを見ただけですぐに話の続きを始めた。


  「・・・・・・バスケ部とバレー部と連携して市民館の状況を改善する・・・・・・?」

 「そうだよ。流石に俺達六人だけじゃローテーションは難しいからね。というか俺達だけでやったって何の意味も無いんだよ、使わせてもらうのはバスケとバレーの人達だしさ。連携プレー、結構強いと思うぜ俺。後ね、移動手段は電車の他にバスもあった。バスは学校の最寄りから少し歩くけど十五分くらいで着く。まあ部活の団体で行くとなると電車の方が良いけど、公共的にも」

 「お前やけにずいぶん頑張ってるな」

 「悪ガキ嫌いだからさ。元悪ガキだから余計にー」


  いたずらっぽく市来は舌をべっと出して見せた。嵯峨はしばらくうろうろと歩いた後、市来を見て口を開いた。


 「お前、トップ書くか?」

 「えええっ?!いやいや無理無理無理何をおっしゃる?!連文祭に展示するんでしょ?俺の文章力じゃ無理だよ!情報ならいくらでも集めてくるから!そこは鈴ちゃんか隼か嵯峨っち直々に・・・・・・」


  鈴ちゃん、と名前を呼ばれただけで何故かドキリとしてしまう。そんな自分が何だか嫌になってきた。鈴と隼はあいにく彼らには背を向けて取材内容のまとめの作業に走っていた。すると隼が横から肘でつついてくる。鈴は何、と不機嫌そうに顔をあげた。小声で隼は言った。


 「まじでお前早く言えよ。神江にはもうイエスかノーか、そう言う選択肢しかないんだから」

 「・・・・・・参ったなぁ・・・・・・」

 「今日の帰り道にでも捕まえて二人で帰るとかは?早い方が良いって、絶対」


  そんなウジウジとしている鈴の気持ちを知るわけも無く、嵯峨達は少しずつ話を進めていた。


 「バスケバレー軍団には、各自ローテについて決めてもらうとして。俺達は二人一組って感じか?」

 「まあ、それが安定って感じじゃないすかね」

 「バスケバレー軍は多分同性同士で来るだろう?こういうのはやっぱり男女の方が良いよな」

 「そうだね。色々そっちの方がきっと楽だよ。俺達も男女別でローテーションをしよう。その方が行きやすい」


  その時部室のドアが開いて奏が戻ってきた。入ってくるなり、手で丸の形を作って見せた。奏はついさっきまでバスケ部とバレー部の部員達に事情を説明し協力を頼んできたのだ。


 「全然大丈夫だって。というか、喜んで行くってさ。私らがスタッフやるってことでしょ、市民館の」

 「よし、じゃあ市来、大宮さんに連絡入れといてくれ。月曜日に多分行くことになるから、その時は・・・・・・市来が一番はじめに行ってくれ」


  その日はこれで解散となった。鈴は隼に言われていたことを実行しようかとタイミングを見計らっていたが、何やら市来は忙しそうで声をかけることすらできなかった。朝に話したっきり、一対一で会話はまだしていない。


 「鈴ちゃん、駅前のミスド寄っていくけど来るー?」

 「え!!行きたいです!行きます!」


  突然の奏の誘いに鈴は慌てて乗り、また逃げるように部室から出た。市来はお疲れー、と言うだけでいつもと何も変わらなかった。


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