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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
三章 タタミ・カコミ
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恋バナする相手は男の子

 

  翌日は片付け日だった。あれほど時間がかかった準備はあっという間に片付けられていく。鈴が部活の片付けに加勢しに行った時は散らかっていた部室は綺麗に戻っていた。廊下で嵯峨が壁新聞を指さしながら言っている。


 「おい市来、壁新聞持ち帰るかー?」

 「いらないよ、早く燃やしちゃってそんな黒歴史。恥ずかしいから」

 「燃やすとは酷いよ、仁。私達頑張ったおかげで、今だいぶクラスの居心地良くなってきたんでしょ?」

 「良くなってきたって言うか、悪かった雰囲気が元に戻ったってだけだよ。別に良くなった訳じゃあない」


  鈴の頭には先輩達の会話はちっとも入ってこなかった。なぜならさっき隼と話していたことを思い出していたからだ。

  つい数十分前、鈴と隼はクラスのダンボールを捨てるためにゴミ捨て場に一緒に行っていた。その時にいきなり隼が聞いてきたのだ。


 「なあ神江ってさ、市来先輩と両想いなの?」

 「は」


  理解できない質問に鈴は唖然として隼のことを黙って見つめるほか無かった。隼は少し困ったような顔をして、そう質問した根拠を説明した。


 「いや昨日さ、学園祭終わるチャイムちょっと鳴るくらい前に部室行こうとしたら、市来先輩の声がして。"好きだなぁ、鈴ちゃん"って。それでお前も」

 「ちょ、ちょっと待って。あれ告白でも何でもないから。告白っていう流れじゃないからね、あれ」

 「でも神江も"私も好きです"とか言ってたじゃん。ここまで来て隠すとか言い訳以外の何物でもないぞ」

 「違うんだってば・・・・・・てか隼もしかして気を使って部室に入ってこなかったわけ?」

 「まあ。だってあの後無言だったから、もしかして部室の中でキ」

 「何にもしてないからね。ただの勘違いだから、本当に」

 「だけど男の先輩にいきなり好きとか言わないだろ普通・・・・・・」

 「部員として、って意味だと思ったの!前も奏先輩にそう言われたことあるから思わず・・・・・・私も好きですとか言っちゃったの。実際嫌いじゃないし」


  奏という言葉を聞いた途端、隼の視線が泳いだ。さっきまでの問い詰めるような態度が一瞬にして消えた。わかりやすい奴だ、こいつ。


 「へえ、隼は奏先輩のこと気になってんだ」

 「気になってるっていうか・・・・・・好きだよ」

 「馬鹿正直なのね、隼って」

 「市来先輩のことは誰にも言わないから。これでおあいこだろ?」

 「どこがおあいこなの?!意味わかんないよ!隼の勘違いなんだって!あれは告白なんかじゃないよ・・・・・・多分」

 「多分って何だよ。神江が本気でそう思ってるんなら、ちゃんと先輩に聞いた方が良いよ。この前言ってたのって、部員としてって意味ですかって」

 「そんなこと冗談でも聞けないよ。市来先輩に聞くなんて自殺行為」


  まあ確かになぁ、と隼はうなった。というか何故私は隼と恋バナなんかに花を咲かせているのだろうか。


 「でも神江何か顔赤くなってるよ。実際はどう思ってんの、市来先輩のこと」

 「顔赤くなるのは仕方ないでしょ!人間好きって言われたら赤くなっちゃう生き物なんだから!」

 「いや意味わかんねーよ。だから実際どう思ってるの?」

 「どうも思ってない!そういう風に先輩のこと見たことない!先輩は先輩!」


  昨日言っていたのが告白?でも告白ってあんな風にされるものだったか?鈴の告白された経験はもう何年も前だ。参考になるはずがないのだ。

  しかし市来は特に変わりなかった。特別避けているわけでもなければ、まとわりついているわけでもない。


 「――ちゃん!鈴ちゃん!」

 「はっ、ええ、何ですか?」


  はっとすると奏がこちらを心配そうに覗き込んでいた。自分は同じ模造紙をずっと抱いたまま、ぼうっと何も無い壁を見つめていたらしい。


 「鈴ちゃん大丈夫?学園祭の疲れ取れていないんじゃないの?具合悪いんなら無理せずに休みな?」

 「い、いや大丈夫です・・・・・・元気ですから」

 「そうだぞ、本当に体調管理はしっかりとな。もうじき連文祭もあって、なかなかしんどくなってくるからな」


  そう忠告してくる嵯峨の後ろで、うんうんと市来はうなずいていた。変に意識するのはやめよう、と鈴は勝手に自分で決めた。

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