表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
三章 タタミ・カコミ
40/66

楽しい時間はあっという間で

  走って体育館に向かうと、既に公演は始まっていた。静かに暗い体育館の中に入って、端っこの場所に座る。ダンス部はかっこよかった。かっこいい音楽、それから可愛らしい音楽、アップテンポな明るい音楽。それに合わせて衣装が代わって動きも揃って綺麗だった。

  ダンスに夢中になり、すっかりカメラを構えることすら忘れていた。それに気づいた市来は公演中ずっとカメラを構えていた。

  公演が終わった後にすぐ茜がこちらへかけてきた。市来を見た途端、茜は口を手で抑えた。


 「本当に市来先輩・・・・・・連れてきたの」

 「お呼ばれされたようで。素敵でしたよ、ダンス。いっぱい写真撮ったからね」

 「いやいやありがとうございます!観に来てくれて!鈴からいつも先輩のお話は聞いてます!」

 「へえ」


  市来がにやにやしながらこちらを見てくる。鈴は内心つっこむのも疲れてきた頃だった。

  茜がずっとキラキラした目で市来を見つめていたので、ツーショットを撮ってあげるよ、と鈴はカメラを構えた。市来と茜の写真を撮った後、市来に鈴も茜とのツーショットを撮ってもらった。

  学園祭はもう後十五分程で終わってしまう。茜と別れた後、二人はまた新聞部部室に戻った。


 「鈴ちゃんはクラスの方は大丈夫なの?」

 「私はもう朝一番でシフトは終わってるので。みんなには部活って言ってるし」


  部室に入る前に市来は自分のことが書かれた壁新聞を見つめていた。これは市来以外の五人みんなで書いた記事だ。ふふっと鼻で笑っていながらも市来の目はだんだん光り始めていた。市来が目を腕で拭ったところで、二人は部室に入った。


 「泣けましたか」

 「泣いてないよー。人の前では泣かないって決めてるの」

 「嘘なんてつかなくて良いんですよ。それなら私なんて堂々と先輩の前で泣きました、合宿の時」

 「あれはもう怖くて自然と出た涙でしょ。それとは全然別モンだよ」

 「あ、泣いたこと認めた」


  市来はふくれた顔で鈴のことを睨んだ。さっきまで聞こえていたグラウンドからの声も、もう聞こえない。すごく静かで無音の部室だった。あいかわらず床は散らかっていた。これももう片付けなくてはいけないんだ。さっき焼きそばを食べた時と同じ位置に二人は座った。まっすぐ前を見ると部室のドアが見える。


 「今日ありがとうね、凄く楽しかった。まあ、鈴ちゃんが焼きそば持ってここへ来た時から結構嬉しかったんだけどね」

 「別に・・・・・・気にしないでください。私も普通に楽しかったです。先輩、学園祭前に復帰できて良かったですね、本当に」

 「昨日はつまらなかったから・・・・・・今日本当は学校来るのやめようかとも思ったんだ。でも鈴ちゃんのおかげで楽しい一日になったよー。本当ありがとうね」


  まともにお礼を言われるのは照れくさかった。ふふ、と鈴は笑ってうなずいた。すると市来は前を見たままぼそりと言った。


 「やっぱ好きだなぁ、鈴ちゃん」


  いきなり発された言葉に鈴は大して動揺はしなかった。鈴もまた前を見たまま、自然と口が動いた。


 「私も好きですよ、市来先輩」


  その返事を耳にして、市来はしばらくぼーっとした顔で鈴のことを見つめていた。しかしそのことに鈴は気がつかなかった。それを悟った市来は、いつものように笑いながら言った。


 「そっか、ありがとう。そう言ってくれて嬉しいな」


  その後、二人は何も会話を交わさなかった。ただ静かな時間だけが過ぎて、学園祭終了を知らせるチャイムが鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ