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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
三章 タタミ・カコミ
38/66

不思議な二人組

 「奏のクラスの焼きそばなんだ」

 「そうです。普通に美味しいですね」


  散らかったままの部室で、二人は床に座って焼きそばを食べた。思い出したように市来は財布を取り出すと、鈴の手に小銭を乗せた。焼きそばのお金、と市来は言った。たったの200円だと鈴は思ったが素直に受け取った。


 「鈴ちゃん、友達と回らなくて良いの。ダンス部のあの子とか・・・・・・茜ちゃん、だっけ」

 「茜とは昨日一緒に回ったので・・・・・・あ、今日ダンス部の公演やるんですよ。後二時間くらいありますけど、写真撮りに行かなきゃいけないし、市来先輩もダンス見に行きません?茜も先輩に来てもらいたがってたし」

 「ま、まあ良いけど・・・・・・」


  この焼きそば青のりがかかっていない。半分ほど食べてからそのことに気づいた。

  この前の合宿の時は、二人きりで歩いていても食事をしていても口数は多かったはずだった。それは殆ど市来が喋っていたからだった。しかし市来は特に何も言わずに黙々と焼きそばを隣で食べている。よく考えると変な状況だ。こんな静かで人も入ってこない部室で男の先輩と二人きりで焼きそばを食べている。外からは招待試合で盛り上がる生徒達の歓声が響いて聞こえた。

  ふと隣に座る市来を見た。原稿に追われる時以外はタオルを頭に巻かない。いつ切るのかわからない前髪がピンで止められていた。目はぱっちり二重で、顔は整っている。黙っていればかっこいいのに。市来はいつも一言二言余計な事を言うのだ。


 「前髪、切らないんですか」

 「うん。ピンで止めるだけだから楽だし」

 「ピンで止めてる男子ってカッコ可愛いですよね」

 「え?」

 「俳優は」

 「まあそうね」


  また謎の沈黙が流れた。お互い食事を終えてしまい、本当にやることが無くなった。鈴は嵯峨の言っていた

 ことを思い出した。これはきっと市来が乗ってくる。


 「嵯峨先輩・・・・・・メイド喫茶やってるらしいですよ」

 「まじで?!ウケるね!嵯峨っちがメイドって結構キツイ感じするけど」

 「行きましょうよ。そこで公演まで時間潰すのどうですか?」

 「鈴ちゃん一緒に回ってくれるの?やったあ、嬉しいなぁ」


  そう言っていつものようにニヤニヤと笑うと、市来は一眼レフを首に下げた。

  市来は二年の有志に行くのが嫌がるかと鈴は思ったが、鈴ちゃんの行きたいところに行けば良い、としか市来は言わなかった。メイド喫茶を覗くと嵯峨は居なかった。知らない先輩ばかりいるところに行ってもつまらない。鈴が残念そうな顔をしていると、市来が代わりにメイドをやっている男子生徒に嵯峨はいつ来るか聞いてくれた。生徒は、嵯峨は一時に来ると教えてくれた。一時まで後三十分ほどあった。

  市来と色んな有志を回っている間に、何回か同じクラスの生徒と廊下ですれ違った。その度にクラスメートは二度見をしてきたり、こちらを見ながら何か話していたりした。しかし市来も鈴も同じ一眼レフを首から下げている為、新聞部が活動しているとしか周りからは見えない。


 「鈴、それから市来先輩も」

 「あ、香ちゃんだ」


  香は友達と一緒にいたが、鈴が市来と一緒にいるのを見て不思議そうな顔をした。しかしカメラを持っているのを見てすぐに状況を悟った。


 「招待試合の方はもう撮影に隼も行ったから。大丈夫だよ」

 「そうなんだ、ありがとう」

 「香ちゃん、せっかくだから写真撮ってあげるよー」


  気さくに提案した市来はすぐにカメラを構えた。すると香もその友達も笑顔でカメラに写った。香達と別れた後、今度は三年のフロアへやってきた。三年はどこのクラスも寸劇をやっている。鈴は虹葉祭のパンフレットの地図を見ながら、栞のクラスを探した。


 「栞先輩はね、白雪姫やってるクラスだよ。これは本人情報」

 「栞先輩は白雪姫役ですか?」

 「当たり前でしょ。それは絶対条件だと俺は断言できるよ」

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