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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
三章 タタミ・カコミ
35/66

どういうことでもないさ

 翌朝、いつも通り学校へ登校していた時だ。駅を出て学校までの道のりを歩いていると、後ろからいきなり声をかけられた。


 「鈴!おはよう」

 「あ、香。おはよう!朝に会うなんて珍しいね」

 「うん。今日HR前に有志の事について少し決めるらしくてさ。いつもよりも早く来たんだ」

 「そうなんだ!香のクラスは何やるの?」

 「うちはお化け屋敷だよ」


  虹葉高校の学園祭は学年ごとに行う有志の内容が大体決まっていた。一年生はアトラクションやゲーム、二年生は食品を扱う模擬店、三年生は寸劇である。少しずつ準備は始まっていた。当日の三日前からは学園祭準備日となり、一日中作業を行う日が続く。


 「私のとこもお化け屋敷だよ?!ライバルだね」

 「まじか・・・・・・でも虹葉祭凄く楽しみ。高校の学園祭が行事の中で一番楽しみだったんだ~」

 「それ凄いわかるよ、私もそうだったもん。・・・・・・そういえば、昨日嵯峨先輩達何の話してたんだろうね?今日は部活無いもんね」

  「でも多田先生に呼ばれてたんだから、部活の事じゃない?」


  学校に着き、昇降口に入ると生徒の数が増えた。それは別に当たり前の事なのだが、尋常じゃない量の人だかりが廊下にできていた。鈴と香も人だかりの後ろに立って背伸びをした。


 「あ、鈴じゃん」


  偶然近くにいた茜が居た。茜は一人で来ていたようで、こちらに歩いてくると二人に尋ねた。


 「何か写真が貼られてるの、市来先輩の」

 「市来先輩っ?!何で?!」


  鈴がそう大声をあげると、何故か周囲の生徒が鈴に注目した。そのおかげで、人だかりの隙間からその写真を見ることができた。

  確かにそれは市来だった。モノクロの写真だった。煙草を口にくわえて、バイクに乗っている写真だ。そして大きな文字でこう書かれていた。


 "市来 仁は暴走族に所属している"

 

 「な、何これ・・・・・・どういうこと・・・・・・」

 「どういうことでもない」


  背後から声がして、貼り紙を剥がして破く手があった。鈴が振り向くと嵯峨がいた。


 「今日部活があるからな。いつも通り部室に来い」



  教室に入ると、鈴のクラスでも市来の貼り紙で持ち切りだった。貼り紙はいつ貼られたのか。誰が貼ったのか。貼られている市来 仁という生徒は何者なのか。本当に暴走族に所属しているのか。

  一緒に入ってきた茜がぼそりとつぶやいた。


 「でも私、市来先輩が暴走族だからって別に何とも思わないよ。だって先輩全然怖くないし、学校だってちゃんと来てるんでしょ?」

 「来てるよ・・・・・・部活もいつも来てるし・・・・・・」

 「あんな貼り紙するなんて、悪意あるとしか思えない」

 「神江」


  隼がこちらへ駆け寄ってきた。鈴は隼に今日部活があるらしい、とだけ言って席に座った。クラスメートは鈴と隼に尋ねてきた。


 「あの貼り紙に書いてたことって本当なの?」


  わかんないよ、とただ答えるほか無かった。


  放課後、隼ととともに新聞部部室に向かった。ドアを開けると、既に多田もいた。市来もいつもの自分の椅子に座っていて、鈴は少し安心した。しかしその表情はいつもと違う。鈴と隼が入って、部員全員が揃った。


 「ごめんね、皆。余計な心配かけて・・・・・・。それに俺のせいで、もしかしたら皆にも迷惑かけるかもしれない」


  市来は静かに自分のことについて話し始めた。部員達は黙って彼の話を聞いた。暴走族のメンバーは市来の生活そのものを壊しに来たということだろう。市来の居場所を無くすために。


 「市来はしばらく謹慎となった」

 「え、何で?!じゃあ部活に来ないの?」

 「うん」


  すると多田が付け加えるように言った。


 「謹慎と言っても自宅謹慎じゃない。登校謹慎だ。学校には来るが生徒とは会えない。安心しろ、学園祭までには復帰できる」

 「・・・・・・仁、私らは何も気にしていないよ。だってもうその族とは会っていないんでしょう?謹慎から解放されたら、さっさと学園祭の準備してね」


  奏がそう励ますと、市来は黙ってうなずいた。それからしばらく、市来のいない部活が続いた。

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