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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
三章 タタミ・カコミ
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お前に話してほしい

  嵯峨と市来が職員室を訪ねると、教師達がチラリとこちらを向いてきた。多田は職員室から二人を廊下に出して、面談室へ、とだけ言った。二人は無言で多田の後について行った。いつもはお喋りな市来も黙っていた。なぜなら多田の顔は深刻そうだったからだ。

  初めて入る面談室は、何だか空気が重かった。ドアが閉まると無音になった。まあ座れ、と多田は首で促した。


 「お前ら、合宿の時に大学生と喧嘩・・・・・・というか、撃退したろ。そん時に、写真を撮られてお前ら新聞に顔写真が少し写っていること、知っているか?あと、ネットのニュースにも」

 「・・・・・・知ってます。部の後輩からも聞きましたし、同級生からも言われました」


  嵯峨がハキハキと答える。その横で市来はこぶしを握りしめていた。


 「今呼び出したのは市来に関係することなんだが・・・・・・発端がその時の事件だ、だから嵯峨も呼んだんだが。・・・・・・実はさっき学校に、虹葉高校の新聞部の顧問に代われという電話が来た。相手は男だった。そして市来の名前を相手は出してきた。相手は俺に、市来へ伝言を頼んできたんだ・・・・・・ここまでで、お前に心当たりのある相手はいるか」

 「俺が前にいた高校の奴ら・・・・・・それか・・・・・・」


  市来はその後の言葉を言うのを躊躇った。それを多田は見届けて、言葉を続けた。


 「市来、お前その高校に合宿中に行ったそうじゃないか。そこで何かあったのか?」

 「・・・・・・何で、知ってるんですか。俺、ちゃんと先生に秘密にしてって頼んだのに」

 「まあ、どこかから漏れても無理はない。何てったってお前達は地域版の新聞に結構大きく載ってしまったらしいからな。全国版はそうでもないが・・・・・・市来が伊豆に来ていたという情報は分かるわけだ。それで、その伝言だが・・・・・・。"何故伊豆に黙ってのこのことやってきたんだ。お前はまだ族から完璧に抜けた訳じゃない。いつまでも逃げられると思うな"」


  ちらりと嵯峨が横を向くと、市来はうつむいて唇を噛み締めていた。族とは何だ?というかこれはれっきとした脅迫じゃないのか?警察にだって言えるはずだ。


 「先生、これは脅迫ですよ。警察に通報したらどうですか」

 「警察には言ったさ。しかしまだ事件性が無いし、悪戯の可能性もあると見て、取り合ってもらえなかった」

 「そんな・・・・・・でも学校も部活も名前だって特定されてる!市来に何かあったら・・・・・・」

 「俺は大丈夫だよ、嵯峨っち。帰り道誰かに襲われてもナイフでも刺されない限りは逃げられる」

 「本当にナイフを刺されたらどうするんだ?大人数で襲われたらどうするんだ?誘拐とかされて静岡まで連れていかれたりしたらどうするんだ?」


  嵯峨は冷静になることなどできなかった。その反面、張本人の市来は気味が悪いほど落ち着いていた。嵯峨、と多田がたしなめた。


 「市来、お前に話してほしい。もし嵯峨に聞かれたくないのなら嵯峨には席を外してもらう。しかし俺には話してくれ」

 「わかった、話す。嵯峨にも聞いてもらいたい。・・・・・・俺は、静岡にいた時凄くグレてたんだ。それで俺、暴走族に入ってた。俺が入ってたところは規模が広くて、東京まで拠点があった。ある時、メンバー同士で薬をやっているのを俺と友達は見たんだ。その時に、後先考えずに楽しんでいた所から、いきなり現実に思考が戻った。族を抜けようと思った。でも族を抜けようとしたやつはリンチを受けて追い出される。それは俺も友達も嫌だった。だから俺達は薬のことを警察にチクって族の上層部自体を無くそうとした。そうしたらやっていた人達は捕まったけど、今度は警察に言いつけた人は誰かっていう話が出た。俺と友達はすぐにバレて、こてんぱんにボコられた。俺は途中走って逃げたけど、友達は意識不明の重体で発見された。俺はボロボロの姿で帰って、親にすぐこの土地から逃げようと言われた。俺は泣いて謝ったよ、親に」


  それは嵯峨も初めて聞く話だった。故郷からこちらへ逃げてきた。それが転入してきた本当の理由だったのだ。でも、と市来は続けた。


 「俺は向こうの新聞に大々的に載った。だから、族の奴らは逃げた俺に復讐をしようとしているんだと思う・・・・・・というか完全に抜けていないから。どうすればいいのかな、俺もう学校に来ない方が良い?俺みたいな問題児居たら、新聞部も停部になる?」


  その時の市来の声は微かに震えていた。

  二人が部室に帰ると、四人の部員は既に帰った跡だった。嵯峨の机の上に置き手紙があった。

 "五時を過ぎたので私達は帰ります!学園祭の壁新聞の案も少し出たよ~ お疲れさん! かなで"

  手紙の横にはカントリーマアムが二つ並んで置かれていた。まあ元気出せよ、と嵯峨は市来の肩をポンとたたいた。

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