表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
三章 タタミ・カコミ
31/66

リレーガチ勢

三章 タタミ・カコミが始まります。

  新学期、九月になってすぐ虹葉高校では体育祭が行われる。熱血して燃えていた中学の体育祭と違って、高校は競技を選択したりとまた別の楽しみで溢れていた。そして、中でもよくわからなかったのが部活リレーである。ちょうど今、新聞部室ではそのことについて話されていた。


 「来週の・・・・・・予行練習だっけ、予選」

 「ああ、そうだ」


  体育祭の予行練習の際、部活リレーの予選が行われる。その時の上位六部活が本番で出場できるらしい。運動部と文化部で分かれて一チーム五人で予選は行う。新聞部は文化部枠に入っているが、その中で一位を取ったからといって本番出場できるかは分からないという。


 「つまりは、リレーのタイムで決まるんだ」

 「私はパスよぉ、足遅いもん」


  奏が手でバツの形を作って主張する。奏がパスをするとなると、後の部員の数は五人でピッタリとなる。そうなると鈴も走らなければいけない。鈴は手を挙げて叫んだ。


 「嵯峨先輩!!個人のタイム測りましょうよ!!タイム!」

 「そこまで俺達は暇じゃないだろう。却下だ神江」

 「何で!!私だって遅いんです!」

 「何なのー皆してリレーにガチになっちゃって」

 「奏は走らないからそういうことが言えるんだよ」

 「奏先輩走った方が良いですよ!絶対!だって来年部活リレー出場できないんですから!」

 「もう、そうやってこういう時だけ先輩だから譲ります的なのやめてよ、鈴ちゃんー」


  結局奏以外の部員が予選を走ることになった。予選のタイムで本番出場できるかが決まる。要するに、予選はどの部活も本気なのである。

  体育祭予行日、部活リレーの時間帯になると鈴は足がガクガクとしてきた。茜に背中をバシンと叩かれ、鈴は入場門に向かった。既に先輩達は待っていた。鈴達はバトンパスの練習を部室前の廊下で少しやっただけで、走順すらも決めていなかった。


 「隼、お前が始めに走れ。その後は市来、神江、今福、俺の順だ」


  開始を待っている間、鈴は香と少し喋っていた。緊張をほぐす為でもあった。


 「香は中学の時ずっと体育祭のリレー走ってたんでしょ。もう私無理だって」

 「部活リレーなんて得点入らないし、そんな変に緊張しなくても大丈夫だって。緊張して転んだりしたら怪我するしさ・・・・・・気楽に行こうよっ」

 「そうだよ、鈴ちゃん。まあ鈴ちゃんの前は俺だからちょっと他の人と間を離してあげるからさ。安心しな」

 「いやだって文化部で一位になってもタイムが遅かったら・・・・・・」

 「まあ去年だって一応予選は突破してるんだよ?陸部と良い戦いでね」

 「冗談はやめてくださいよ」


  その時、入場の合図が出てリレーの選手はグラウンドの中央に向かっていった。市来と香が反対側の方へ行ってしまった。鈴はスタートラインに立つ隼を見て、余計に胸がドキドキした。走るのはたったの百メートルだ。長いようであっという間の百メートル。

  パァン、とピストルが鳴り選手達が走り始めた。六チーム中、隼は三位だ。順位なんて関係ないとは言うが、文化部で一位にもなれなかったら上位六位に入れるわけが無い。

  隼は三位のまま、市来にバトンパスをした。すると嵯峨が鈴の背中を押して、もうコースで待っているように言った。


 「あいつはアホ並みに速い」

 「えっでもまだ―えええ」


  いつの間にか一位になっている。おまけに二位とかなり距離があった。鈴の元へ走ってくる。練習した通りにバトンを受け取り、鈴はとりあえずがむしゃらに走り、後ろから徐々に走ってくる選手から逃げた。

  何とか順位は保持したまま香にバトンパス。コースを抜けると隼が待っていた。


 「お疲れ、神江。速いな、皆」

 「・・・・・・はあ、はあ、市来先輩、速すぎでしょう、あれは、ちょっと・・・・・・」


  と隼と話している間に、ピストルが鳴った。気づいた時には嵯峨が近くに居た。二位の部活はまだアンカーからバトンを貰ったところだった。


 「何この部活は」

 「新聞部だぞ」


  運動部と文化部の中での総合タイムが発表された。新聞部は第三位であった。予選突破である。

  体育祭予行練習の翌日、普通に放課後は部活があった。鈴が部室に行くと、まだ奏しか来ていなかった。奏は鈴がやって来たのを見ると、パチパチと拍手をした。


 「昨日はお疲れ。凄かったよ。昨日言いに行こうと思ったけど、タイミング逃してね」

 「ありがとうございます、奏先輩。ほとんど皆のおかげなんですけどね・・・・・・。本番は先輩、走りますよね?というか走ってください。私は出場しなくても良いので」

 「そんな、良いの、私なんて。応援してる方が楽しいし」

 「でも・・・・・・やっぱり、嵯峨先輩と市来先輩とバトン繋いでほしいって勝手に私は思ってます。あの二人足速いし・・・・・・ちゃんとサポートしてくれますから」


  そう説得の言葉を鈴なりに並べると、奏は悩むようにうなり始めた。かと思うと机の中からごそごそと菓子を取り出して口にくわえた。ん、と鈴にも小さな菓子の袋を差し出してきた。鈴はそれを素直に受け取る。奏は特にこちらを見ずにスマホの画面に視線を落とした。何かの画像を真剣に見ていた。


 「何見てるんですか?」

 「引かないでね、鈴ちゃん」


  そう言って奏は鈴に画面を見せてきた。それはカメラロールだった。一面に文字の書いてある写真、それからロゴマークの写真があった。


 「会社とか、広告とかのキャッチコピー。それからシンボルマークとか企業のロゴマーク。こういうのに私、惚れちゃってね。素敵だなぁって思ったものは全部写真を撮ってるの。こういうものを作る仕事に就けたら良いなってずっと思ってる」

 「すごい・・・・・・」

 「この間はね、絵文字の展覧会にも行ったの。絵文字って日本発なの、知ってた?どれだったかなー写真」


  奏はにこにこと写真を探しながら、鈴に向かって独り言のように話した。鈴はそれを静かに聞くことにした。


 「私ねえ、極度の変人でしょう?友達ほとんどいないのよ、クラスに。だから部室に来るのいつも一番なんだけどね」

 「ここの部活の人はみんな変人です。もう変人には慣れっこです」

 「ふふ、それなら良かった。でも夏休み明けからね、ちょっと話しかけてくれる友達ができたの。と言っても、あの事件があってからの事なんだけど。良かったのか悪かったのかって感じもあるけれど。あいにく、そんなことでの友達は求めていないから」

 「私は奏先輩好きですよ」

 「私も鈴ちゃん好きよ。ここの部活の部員達は、みんな好き」


  自然と笑顔になった。正面から好きと言ってくれる人には、あまり出会ったことが無かった。慣れなくて何だか気恥ずかしい。その様子を見て奏は少しおかしそうに笑っていた。


 「走ろうかな、部活リレー」


  ちょうど部室のドアが開いて、隼が入ってきた。そこで会話は途切れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ