不思議不思議の連続
ブルーベリージュースは鈴にとっては美味しく感じた。見た目に騙されるな。ぶどうジュースだと思って飲めば、酸っぱくも感じるだろうな。今度はクッキーがテーブルに置かれた。しっとりとしたクッキーだ。それを手に取り口に入れると、噛んだ部分からボロボロとクッキーの粉が落ちた。粉はスカートの上に落ちていく。
女性はそれを見て笑いながら言った。
「良いのよ、お行儀悪くて。それはどうしてもそうなっちゃうクッキーなの。不思議でしょ」
しかしその人がクッキーを焼くことが下手であるという訳でもなく、普通にそのクッキーは美味しかった。何枚も食べることができそうなくらい病みつきになる。
「美味い」
ぼそりと嵯峨がつぶやき、鈴達は顔を見合わせて安堵を覚えた。不意に奏が女性に尋ねた。
「何故、こんな森の奥にお店を?」
「・・・・・・ここがただ単純に好きなだけよ。私は元から一人でものづくりをすることが好きでね、ここをアトリエにして、そのままお店もやろうって思ったの。だって、この場所何だか神秘的じゃない?」
「じゃあこの場所は切り開いた訳ではないんですね」
「ええ。私も偶然見つけたの。だからいつからこの場所がここに存在するのか、私にもわからないのよ」
不思議な場所。不思議なログハウス。不思議なお店。不思議な店員。何とも不思議なスクープを取ることが出来た。
合宿二日目の夜は嵯峨の予告通りバーベキューだった。準備から片付けまで全て部員で行い、バーベキューを楽しんだ。鈴は肉を焼きながら、市来がピーマンばかり食べていることに気づく。
「市来先輩、お肉食べないんですか?と言うかもっと食べてください」
「良いよ俺はピーマンで」
「ピーマンしか食べなかったら夏バテになりますよ!」
「はあ、意味わかんないだけど!」
多田が何を間違えたのか、肉の量が異常に多すぎて鈴と香は初めに見た時驚く他なかった。
普段何かとうるさい嵯峨が静かだ。嵯峨は海の方を見ながら黙々と食事をとっている。それに加えて、奏も隼もペースを崩さずにずっと食べている。
「あの人達の胃袋の中どうなってんの・・・・・・」
「例えるならブラックホール?そのうちトウモロコシとかまるごといくかもよ」
市来も無駄に強情でずっと野菜しか食べていない。ふと市来はこちらは振り返り、鈴に尋ねた。
「昼間の人、誰だかわかったの?」
「え?昼間の人?」
「何か変なとこ忘れっぽいんだな、鈴ちゃんって。ほら昼間、黒いバンが海岸沿いに停まってたじゃん」
「ああ、あれ。すっかり忘れてました、誰だかわかってませんよ」
「あそう。てか、俺との約束忘れてないだろうね」
「わ、忘れていないですよ」
"みんなには秘密にしてもらえるかな" あんな真剣な表情で言われたら、忘れる訳が無いに決まっている。
「今夜女子部屋遊びに行っても良い」
「何馬鹿なこと言ってんの仁!女子の部屋に来るなんて随分じゃないの」
「じゃあこっちの部屋に来てよ。みんなで人生ゲームやろうよ」
「人生ゲームなんて持ってきたんですか?!」
鈴が素っ頓狂な声を出すと、市来はモゴモゴとした口を抑えながら答える。
「俺達の部屋の押入れから出てきた。結構古いやつ。五百円札とかあった」
「明日だって朝早いんだぞ。やるなら明日の夜にしろ」
嵯峨がそう言って、市来はようやく諦めた。でもゲームをやることに嵯峨は了解しているようだ。




