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虹葉高校新聞部です。  作者: 琥珀
二章 セカンド
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当てずっぽうに歩いてみたら

 翌朝。寝坊することはなくゆっくりと朝食をとって、スクープ探しの旅の支度を終えた。別荘を出てからそれぞれが別々の方向へと向かった。鈴と市来は高台を降りて、コンビニが見える辺まで来た。あ、と鈴は思いついて、コンビニへ行こうと提案をした。コンビニに入ると昨日見た地域版新聞に目をやる。


 「なーにこれ?」

 「地域版の新聞です。高校の新聞部が発行してるんです。ここの高校の辺り、行ってみませんか」

 「え?!凄い何だか当てずっぽうだなぁ、鈴ちゃん」

 「だって・・・・・・市来先輩はわかるんですか、この辺の地形。当てずっぽうに道歩いてれば、何か良いもの見つかると思います。それに、学校の近くだったらお昼の店も見つけやすそうだし。行ってみませんか」

 「いや、まあ行っていいけど・・・・・・ここの高校もしかしたら・・・・・・」

 「もしかしたら、何ですか?」

 「いいや、何でもないよ。とりあえず周辺に行こう!」


  少し電車に乗って、その高校の付近へと向かう。食べ物屋は道路沿いに点々とあるような感じで、基本的に静かな場所だった。海岸沿いを歩くと、海からと道路からの風で鈴は髪とスカートを押さえるのに必死だった。しばらく海岸沿いに歩いていると、不意に市来が立ち止まり指をさした。


 「あれかな、高校」


  想像以上に小さな校舎だった。鈴がスマホの画面に目を移すと、その学校は一つの高校の分校であることがわかった。最近工事されたばかりなのか、綺麗な校舎が並んでいた。


 「あ・・・・・・やっぱそうだ」

 「どうしたんですか?」

 「あの高校・・・・・・俺が前居た学校。・・・・・・って言ったら驚く?その前にどっかでお昼すます?」


  市来は自分から虹葉高校に来る前の話を軽くしてくれた。生まれは静岡で、高一の始めまでこの付近に住んでいたという。高校に新聞部はあったらしいが、市来は帰宅部だった。地域版新聞を発行していた高校は二年前の連文祭で全国二位、優秀賞を取ったらしい。二年前というと、虹葉の新聞部が優良賞を取った年だ。


 「まあ俺はその時は新聞部なんて興味無かったから。全然なんとも思ってなかったんだけどね」

 「せっかく高校頑張って入ったのに、入学して三ヶ月で引越しって・・・・・・大変でしたね、色々」

 「でもそんなまともな友達居なかったよ。それは今も変わらないかな、何ちって」


  市来はそう自分で言って笑うと、海鮮丼を頬張った。二人が昼食に入ったお店は海岸沿いにあり、窓からは海と砂浜が見えた。この辺りの海は海水浴場ではないらしく、若いカップルが二人砂浜を歩いていた。


 「でも、鈴ちゃん思ったほど驚かなかったね。俺が転校生だって言ったら、もっとデカい反応するのかと思ったけど」

 「実はその・・・・・・昨夜、奏先輩から市来先輩が転校生だって話は聞いてて。なかなかリアルタイムですけど。しかも母校がすぐ近くにあるなんて」

 「リアルタイム過ぎだなぁそりゃ」

 「・・・・・・行ってみませんか、高校。新聞部いたら突撃しましょうよ」

 「え、本気?」


  昼食をとり店を後にしてから、市来の母校の校門付近までやってきた。校庭では陸上部員が颯爽と走っていた。校門は開きっぱなしだった。鈴と市来は私服だった為、特に抵抗はせずに校内へ足を踏み入れた。変に遠慮がちにしていると怪しまれる可能性がある。


 「鈴ちゃん、警備員さんに見つかっても俺知らないからねー」

 「とか言いながら入ってるじゃないですか。市来先輩、新聞部の部室の場所とか覚えていないんですか?」

 「覚えてるかよ。全く新聞部に縁なかったんだよ、俺。でもさ・・・・・・全国二位だから、それなりに目印となるようなものは部室前にあるかもね」


  ただの来客としか思っていないのだろう、陸上部員はこちらをちらりと見るだけで特に何も関与してこなかった。二人は校舎の入口までやってきた。昇降口は無い。


 「靴どうするんですか?」

 「ああ、ここはね教室の前に下駄箱があるんだ。だから土足で廊下は歩いて大丈夫なはず」


  入ってすぐに職員室があり、本能的に二人はすぐ近くの階段を駆け上がった。とりあえず教師と警備員に見つからなければ良いのだ(至って軽率な考えである)。

  母校にやってきたら「懐かしい」だとか、「こんなものあったなぁ」だとかそういう言葉を発するものじゃないのか。そう勝手に鈴は思っていたが、市来は全くそんなような態度を取らない。この高校の勝手は分かっているが、初めて訪れたような何とも不思議な態度を見せているのだった。


 「鈴ちゃん、ここ新聞部っぽくない?」


  その教室の入口付近には何枚か新聞が貼られ、壁には大きく"最優秀を目指して"と書いてある紙も貼ってあった。校内版と地域版の新聞も分けて掲示されていた。


 「本当に訪ねるの、ここに」

 「市来先輩、知らない人と話すの得意じゃないですか。大丈夫ですよ、きっと―」


  鈴が部室のドアをノックしようとした途端、ドアが勝手に開き人が現れた。鈴は思わず市来の腕を掴んでしまった。それは男性教師だった。


 「君達、何をして・・・・・・市来?市来なのか?」

 「・・・・・・あちゃー、バレちゃったね、鈴ちゃん」


  今日は部活はやっていないんだ、とその教師は言うと二人を新聞部の部室に入れてくれた。虹葉高校で新聞部に所属している、と市来が話すと教師はとても驚いた顔をしていた。

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