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エッセイ 私がなろうで読みたいワケ

作者: 猫の玉三郎

 こんにちは、猫の玉三郎と申します。読み専としてこのサイトを利用し始めたのは、もう何年も前。そこからなぜか自分自身も筆をとりはじめ、「読むの好きー書くの楽しいー」でこのサイトに生息させてもらっています。


 なろうにたどり着く前にネット小説を読んでいた場所は「魔法のiランド」……だっけ? 恋愛もの中心の女性向け小説が圧倒的に多く、楽しく読ませていただきました。飽きた、というより毛色が違う小説が読みたくなって、このなろうにたどり着きました。いやー異世界ファンタジーっていいですね。


ただ、これが挿絵付きの文庫本、いわゆる本屋のラノベだとなぜか手が伸びないんですよ。プロが書いてるし、似たような世界観だってあるのになんででしょうね。たぶんあのきらきら可愛いイラストと挿絵です。買って自分の本棚におくのはちょっとためらうというか。収納スペースにも限りがあるし、とにかく自分の中では異世界ファンタジーはネットで読むべしと謎の掟がいつのまにか定まっていました。無料という点も大きい。素人投稿? ぜんぜん読める! むしろ味!


 というわけで、私はこのサイトのずぶずぶの読者となるのです。


 小説投稿型サイトの大手。異世界転生・転移、いいですね。好きですよ。俺TUEEEも悪役令嬢も当初夢中になって読み漁りました。こちらが唸るような世界観・設定・ストーリーと出会えた時は寝食削って見ましたよ。また、テンプレと呼ばれる縛りをつけて、独自のストーリーを展開させる様が面白くて、いろんな人の作品を読んだと思います。今はもう食傷気味なんですが。


 私の勝手な解釈ですが、「小説を読もう」および「なろう」は大きな駄菓子屋さんのようだと思ってます。おおくは素人が作った小説ですもの。つまらない・面白いはもとより、完結する・しないも定かではありません。だけど無料だし、とにかく数は多いし、中には本格的な物語もいくつもあります。それはまるで安くていろんな種類がある駄菓子屋さんのよう。中にはメジャーデビューしてコンビニに置かれるようなお菓子もあるでしょう。でも基本は安いというのがメリットじゃないでしょうか。そして駄菓子には駄菓子のチープな味わいがある。そんな駄菓子を買いに、人々は気軽に店へ足を運ぶ。ポケットの中にはせいぜい200円です。


 そんな店頭に、ひと粒1000円もするような高級チョコが並んでいたらどうでしょう。違和感があるし、本来駄菓子を買いに来た人の目的ではありません。何より予算オーバーです。誰か捕まえて、なんで買わないのかと聞いたら「いや、駄菓子屋にそんなの求めてないし」と返ってきそうです。それが季節のフルーツをふんだんに使ったタルトだったら? パティシエが巧みの技を駆使した飴細工だったら? 大きなスペースを取ること無く、駄菓子と同じ陳列棚に、ほんのちょこっとだけ、隅に埋もれるようにそういうのがあったら? それら自体は抜群に美味しいのに、駄菓子屋に並んでたいたら違和感しかありません。駄菓子らしいチープさがなく、しっかりとした高級品なんだもの。中にはワインや松坂牛があって、もしかしたら、シュールストレミングやドリアンくらい強烈なものがあるかもしれませんね。いくつかの高級品達は戸惑ってることでしょう。


「え、俺たちスゴイのに買ってくれないの?」


 高級チョコやドリアンが悪いと言っている訳ではないんです。駄菓子屋さんに置いてあるから「ん?」と首を傾げるのです。私は首を傾げながらも好物なので手に取っちゃう。読み専の玄人さんはそういう作品を見つけるべく奮闘しているかもしれません。しかし予算オーバーで買わない人がいるのは確実です。という事は、駄菓子屋さんがディスカウントストア、スーパー、そしてショッピングモールへと、変貌を遂げれば何の問題も無いわけです。そんな所に行くのに200円じゃ心許ないですもの。お財布の中を多めにしといて、ショッピングを楽しみます。すると松坂牛もワインも間違いなく陳列棚に馴染む訳です。駄菓子も駄菓子として、立派と努めを果たせます。駄菓子にしか向いてないニーズを広げていくんですね。


 今、美味しい駄菓子の中に埋もれている、艶やかなチョコのようなあなた。熟成させた高級肉を思わせるあなた。未発見の珍味かのごときあなた。クサヤやを上回る可能性を秘めてるあなた。私はそんな作家さん達を、大いに応援したい。すごい! 頑張れ! 今は苦境に立たされているかもしれません。読まれない、評価されない。これは辛いです。しかし状況は変わる可能性はあります。皆さんの実力は本物なのだから。皆さんの作品が存在し続ける事によって、駄菓子屋から変貌の道が見いだせるかもしれないのです。人は最初から難しい本が読める訳ではありません。絵本から始まり、段階をふんで難易度を上げていくのです。そういう意味では、このサイトには素晴らしい読み手がたくさんいらっしゃる。読力レベルがあると、視野も広がります。皆さんの物語のおもしろさに気づく方がきっといらっしゃるでしょう。「小説を読もう」はこんな作品だってあるぞ、と少しずつアピールしていきましょう。その為にも、皆さんには自分が書きたいと思う物語を存分に綴っていただきたいのです。


 素晴らしい完成度を誇る方や、荒削りなダイヤの原石のような方、様々いらっしゃいますので、ファンタジーひと筋の作家さんもちょいと浮気してみてはどうでしょう? 新たなジャンルに挑戦すると色んな知識も増えますし、自分では思いもつかない考え方にも触れられます。そういう発見は、人生で得られる尊い経験のひとつだと思っています。


 そして駄菓子駄菓子と連呼していますが、「なろう」で流行っている作品をディスっている訳ではありません。むしろ脈々と受け継がれている由緒ある正統派です。ベースは同じでも、日々工夫され、それぞれにオリジナリティがあるのです。駄菓子と侮るなかれ。そこには職人のこだわりがあるのです。そしてその親しみやすさに、人々は集まります。


 私は「ファンタジー・チープ・無料」の3点セットでこのサイトの読者となりました。似たような人も恐らくいらっしゃることでしょう。ランキングを見ても、需要があるジャンルは歴然です。多くの読者は駄菓子を求めているのだと思います。時には拙い作品にも出会うでしょう。だって素人だもの。親身にダメだししてくれる編集者なんていません。自分で確認したら、投稿ボタンをポチッとなです。


 最初こそ前述の3点セットが目的でしたが、今はそれだけじゃありません。そうではない力作がある事を知っているからです。駄菓子に癒されつつ、高級チョコに感嘆の息を漏らすのです。時にはお茶と一緒に奈良漬をつまむのもいいでしょう。ああ、なんて贅沢。書籍もネットもそれぞれ良さがあります。どうか皆さん、色んなジャンルに手を出して欲しい。読んでみたら意外にハマるジャンルがあるかもしれません。分かりやすく面白く書かれた歴史ものは、頭の中にすいすい入ってくるので学生さんにおすすめです。感性が豊かな方は、詩がもつ独特の世界に気持ちよく浸かれます。そして、ネットの小説が楽しく読めたのなら、過去現在の名作もきっとすいすい読めることでしょう。この世界には素晴らしいお話がたっくさんあるのです。ぜひ、すてきな物語と出会ってください。


 見る人も、書く人も、書かれる小説も、いろんなものがここにはあります。


 小説を読み始めたばかりの人。

 既存のテンプレには飽き飽きだという人。

 初めて小説を投稿した人。

 もう一段階レベルアップしたくて奮闘している人。

 淡々と物語を紡いでいく人。


 願わくは、すべての人が楽しく、充実した時間を過ごせますように。そんなワールドピースな願いを込め、ここらで筆を置きたいと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても納得できる例えでした。なろうは駄菓子屋(褒め言葉)、同感です。 自分はとにかく活字が読みたくてこちらのサイトに登録したくちなので、正直なところ流行のジャンルや人気の設定などには疎いで…
[一言] 新着で読んだ物語が気になり、検索してこのエッセイへ辿りつきました。 『駄菓子屋』というのは思わず「それだ!」と言いたくなる良い例えですね。 ネット小説などを読みいくらか経ちますが、確かに幼少…
[一言] はじめまして、猫の玉三郎さま。 「なろう」歴4か月の新参者の私ですが、「そうそう」と賛同する箇所多数で、読んでいてなんだかうれしくなってしまいました。 読書歴は長いのですが、文筆歴はとて…
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