クレバー シリアサイトの日記
この話に出てくる法界、モンスターベルトや魔法界、そこにいたエイシェントドラゴンのノガードは後にCODEシリーズの世界に出てくる存在なので分かると思います。
俺は法界のクレバー シリアサイト。
剣士であり、クリスタルタワーのハイロワーでもある。
そして、伝説の勇士の1人でもある。
法界。
本来は自分の世界に名などつけない。
しかし、混沌界という平行な位置の別次元があるので、法界と呼ばれる。
この前にかなり訪れた者は、自分達の世界を下界と呼んだ。
それは、上界と呼ばれる縦の並行世界があるからだ。
言葉が通じたのは、最初に来た法術を使う強力な者が、自分達の通訳のために言霊という力を使った為だ。
今日はクリスタルタワーよりはるか遠い街、エンドレスストーンに向かっている。
エンドレスストーンは世界の果てにある。
正確には、この世界は人間が住める場所は20%だけ。
この街の向こうは不入の大地と呼ばれる荒地である。
草1つ生えていない何もない大地が広がり、その先は何があるか分からない。
法術師の感知でも範囲が届かないほど広い。
探検隊が何度も万全の体制で先に向かったが、戻ってきたものはいない。
何故か空間法術も、移動法術も通じない。
長老いわく、大地から発生する特殊な磁場のせいだそうだ。
それでも、俺はその先に向かうことにしていた。
策はある。
エントアストだ。
先住民であり、俺達ハイロワーの法術師が束になってもかなわない存在。
この街でエントアストを見かけたという噂があった。
エンドレスストーンは静かで人影1つなかった。
街の中央の広間にある噴水の近くに立て札が出ていた。
それには『エントアストの「かい」出現。非難せよ』かい。
それはエントアストの中でも、なかなか見ることのない存在。
街の大通りを歩いていると、家の屋根から気配が近づいてきた。
振り返ると普通の青年のような姿の人間が立っていた。
その無邪気な笑顔からは強烈な力を感じる。
「君は逃げないんだね」
「かい、俺はシリアサイトだ。一緒に不入の大地の向こうに行ってほしい」
「随分、風変わりな人間だね」
しかし、笑顔とは裏腹に恐ろしい雰囲気をかもし出している。
彼は平気で気に入らない人間を殺す。
それでも、俺は下手に出る気はなかった。
「エントアストほどじゃないが」
「気に入った。いいよ」
軽くかいが引き受けたことに俺は驚いた。
「じゃあ、この街から必要なものを集めて早く行こうか」
馬車に水と食料などを積んで何もない大地を進み始めた。
馬車は3日続けて走り続けた。
馬は倒れてしまったが、かいは薬を取り出して飲ませると、馬はすぐに元気になる。
草1本ないので、俺達の食料から果物をやった。
水も少しだけやると、馬は落ち着いて休んだ。
「ここは法術が使えない。だから、空気中にも法力要素はない。俺達も食料や水が必要だぞ」
かいが馬車の屋根で寝そべりながらそう言った。
「でも、馬がないと俺達は自分の足で進まないといけない」
「俺達、じゃない。お前だけだよ」
「それでも、馬を見殺しにできない。食料も水も馬とともに…」
「はいはい、もういいよ」
かいは向こうを向いてしまった。
しばらくすると、人間の骨が落ちていた。
近くにテントがぼろぼろで建っている。
「ここまで、この探検装備でよく来たものだ。もちろん、この様子だともっと先まで行って、諦めて戻ってきた途中に力尽きたんだな」
「食事に慣れていない、法術になれている俺達が、食料や水のいる過酷な探検は無理があるんだ」
俺も辛口なかいに一応、同調してみた。
「俺達も同じ運命にならないといいが」
すると、かいは馬の上で俺に視線を向ける。
「だから、俺達、じゃなくてお前だけだって。元々、俺達先住民は向こうから来たんだし」
その言葉に驚いた。
彼らと対話するのが俺が始めてだし、彼らからそんな話が出て驚いた。
かいと一緒なら、不入の大地の向こう側にたどり着ける気がした。
一週間がたった。
一向に生物は見なかった。
かいは天真爛漫で屋根で鼻歌を歌っている。
そのうち、馬は力尽きて倒れた。
「食料が増えたね」
その言葉に苛立ちを覚えたが、かなわないので無言になった。
馬を弔って、最低限の持てる食料と水、荷物を担いで先に進んだ。
かいは何も持たずに、突然猛スピードで駆け出した。
良く見ると、彼の足元にある地面が、土の色が変わっているのに気づき、先住民のテクノロジーと推理して、そこに乗った。
すると、1蹴りで50mは跳んだ。
かいに追いつくと、彼は言った。
「この辺には、イルオートって土があるんだ。弾力性がかなり高いんだよ」
早く、それを言ってほしかった。
4時間は駆けただろうか。
すさまじいスピードで進んでいた。
おそらく、誰も来たことのない場所を優に超えているだろう。
そのうちに、遠くに蜃気楼でオアシスが見えてきた。
近くにオアシスがあるのだ。
丁度、水が皮袋2つになっていた。
早くたどり着くことを祈ったが、
結局、オアシスは目の前に現れなかった。
かいはそれに関して何も言わない。
夜になり、一休みするときにかいが言った。
「さっきの蜃気楼は幻覚岩が見せたもので、本物じゃないし、オアシスなんてないぜ。この大地は何もないし、もちろん、地下水も川もない。オアシスが発生するはずがないくらい見当ついているよな。一応、念のために言っておこうと思ってさ」
「で、あとどのくらいで向こう側に着くんだ?」
彼は指を1本立てた。
「1日ぶっとうしであの道を進めば、何とか着くんじゃないか」
その言葉にやっと安心が心に芽生えた。
やっと何もない世界から抜け出した。
サバンナのような場所にたどり着く。
食料は干し肉が3塊に水が皮袋半分。
このサバンナは法力要素が空気に多少含まれているので、もう、食料、水分はなくても大丈夫である。
先には林が広がっている。
そこに行こうとしたが、かいは制した。
「あそこはガイ族のテリトリだ」
訳が分からないが、かいは深く説明はしない。
こちらもそれを求めようとしなかった。
かいの機嫌を損ねる恐れは避けたかった。
林を回って岩山の谷の道を進む。
さらに法力が空気中に濃くなっていった。
ここには法力がかなり濃く空気に含まれている。
力がどんどん湧いてきた。
彼らの強さはこの空気に秘密があるのだろうと思った。
岩場を進んでいると、3人の剣士が現れた。
談笑していた彼らは僕達を見るや否や剣を抜き襲ってきた。
かいは指を弾くと、彼らの剣は圧縮空気の弾に弾かれて岩場の高い場所にそれぞれ刺さった。
彼らは逃げずにかいに向かった。
彼は右手を向ける。
すると、3人はあっという間に空に舞い上がり、岩場の上に飛んでいった。
改めて、彼が敵でないことを肌で感じた。
岩場の谷の細い道を抜けると、そこには巨大羊歯の森が、じめじめとした空気の中に広がっていた。
「ところでお前、いつまで俺についてくるんだ?」
かいに言われて戸惑った。
かいなしでこのエントアストの世界で生きていけないだろう。
「別にいいけどな。お前みたいに俺達を恐れない奴は珍しいし」
そこで、内心ほっと胸を撫で下ろした。
しばらくすると、丘の下に湖が広がり、湖畔に巨大な街が広がっていた。
「カイヘル国の湖畔の町、サンドだ」
「国?」
そこで、彼は丘に寝そべり町を見下ろしながら言った。
「お前達には、国という概念はないのか。面白いな」
結局、国という概念を教えてもらえなかった。
説明が難しいようだ。
サンドの街に向かって丘を下っていった。
丘を降りると、すさまじい大通りの人通りに驚いた。
ここはこの『国』の中心部らしく、我々の世界での数10倍の人を見ることが出来た。
この全員がエントアストだということに危惧を感じた。
街の門をくぐると、商店が大通りの脇に並んでいる。
その中の1つにかいは寄った。
それは酒場である。
俺も一緒に入り、バーボンをかいと飲むことにした。
すると、突然俺の体の中に力が湧いてきた。
ここのバーボンはエントアストには普通のアルコールだが、我々には能力上昇効果があるようだ。
ここにきて、徐々にエントアストの力に近づいているようだ。
酒場で喧嘩が始まった。
かいはまるで演劇を見るように楽しんでいる。
俺はすぐに逃げようとしたが、
喧嘩していた2人が俺を見つけて叫んだ。
「何でラグムがここにいるんだ?」
ラグムとは我々の総称のようだ。
すぐに法力を高めて戦闘態勢になる。
そこで、かいが言う。
「俺が連れてきた」
「なんだと!」
かいと俺、喧嘩していた2人が対峙した。
俺はさらに力を高める。
すると、オーラがかなり発することができた。
ここに来て、エントアストの能力を得ているようだ。
勝てる自信はないが、死ぬほどやられることはないと思った。
光に包まれて、光を具現化して沢山の細い糸を発生させた。
俺は相手の攻撃の衝撃波がくると同時に、光の盾を発生させたが、吹き飛ばされて壁に激突した。
でも、それに耐えられるので、力がついているのかもしれない。
かいはすでに外で大きな戦いを始めて、建物の1つ2つは壊していた。
俺もすぐに光の剣を沢山発生させて、すぐに振るった。
相手は簡単に避けて、すぐにエネルギー波を放った。
それを光の羽で飛んで避けて、剣を放つ。
相手に無数の剣の1本が刺さり、やっと敵に傷をつけることができた。
相手は強烈な電撃の弾を放った。
俺は光の糸を無数に出して、巨大な槍にして、電撃を突き刺して、それごと放った。
自分の電撃と俺の槍が同時に敵に襲った。
さらに追い討ちをかけて、光の糸をさらに増やして、彼を巻き付けてエネルギーを放った。
それでも、ダメージはあまり受けていないようであった。
さらに、外に出て酒場にいるエントアストが手助けに来ないように、2対2になった。
「お前、ラグムなのにやるじゃないか」
相手だけがダメージをくらっている状態に、かいが俺を認めた。
俺は最大限の力を発揮して、光の巨大な爪の手を右手に宿らす。
攻撃が効く可能性は分からないが、とにかく、その爪を振るった。
敵はすぐに圧縮空気の盾を作ったが、それごと引き裂いた。
相手は右腕を切り裂かれ、唖然と俺を見ている。
俺自身、徐々に力が湧いていく状況に驚いている。
今では、エントアストと同等の強さを持っているようだった。
「お前、本当にラグムか?」
その言葉に答えずに、光の拳を振るった。
思い切り殴られた敵は、そのまま建物の壁に埋まってしまった。
かいはこちらを見ながら、相手を簡単に倒した。
かいはエントアストの中でも腕利きらしい。
「流石だな。ラグムも見直したぜ」
俺はこの変化に戸惑いを感じていた。
周りの見る目も変わった。
ラグムだからとからかう者はいなくなった。
しかも、エントアストの中でもかなり強いかいといることで、さらに一目置かれるようになった。
少しはこの街で過ごしやすくなる。
かいは、ホテルにチェックインをして、そのまま眠ってしまった。
今までの長期間の不入の大地の旅があったので、疲れていたのかもしれない。
…否、彼に疲れはないだろう。
俺はソファで窓から湖を眺めた。
あの荒地の先で、こんなに穏やかに過ごせるとは思ってもみなかった。
朝になり、さらに街の中心部に向かった。
すると、教会の中に入っていった。
エントアストが信仰心を持っていることも驚きであるが、かいがそこに入っていくことにもっと驚いた。
「ここで何を?」
「金をおろしにな」
祭壇の奥にあるドアを行くと、その先に泉があった。
ドームがガラスで出来ていて、太陽の日が泉の水面に反射している。
その先に金貨の壷が並んでいて、屈強な番人が立っている。
その壷に近づき、1つからかいは金貨を取り出して皮袋に沢山入れた。
金貨を持ったかいとともに、街の東に上がっていった。
西に泉があり、東に街がある。
その街は山肌に広がっているので、東へ行くほど高台になっていた。
その頂点には、宮殿があった。
「ここは?」
「いわば、お前達のクリスタルタワーだ。王国の頂点の王族の住む宮殿という建物だ」
その宮殿まで来ると、衛兵が槍を構えて立ちふさがった。
「俺はかいだ。こうとえんはもう来ているか?」
すると、衛兵は槍を収めて敬礼をした。
「かい閣下、お帰りなさいませ。こう様とえん様はまだお越しになられていません」
この会話で不可解なことが沢山あった。
門を通り、広すぎる庭園を歩いているとき、俺は訊いた。
「閣下って、かいは何者なんだ?」
「まあ、気にするな」
俺達は巨大な目の前の建物に向かって進んだ。
宮殿の前で、ある剣士が立ち塞がった。
「いむ、お前はまだ俺に未練があるのか?王位はやっただろう」
ところが、彼の近衛兵がどっと現れる。
そこで、かいの隣に2人の人間が現れた。
こうとえんである。
こう、えん、そして、かいと彼の弟のいむ、近衛兵が対峙した。
俺はかい側に付くしかなかった。
そこで、いむが腕を振ると、兵隊が3人に剣を抜いて襲ってきた。
俺は眼中にないらしい。
そこで、えんとこうが一瞬にして全員の剣を折って叩きのめした。
かいはいむの前に出て波動を放つ。
しかし、いむはあっさり右手だけで弾いた。
強力なかいと同等かそれ以上の強さだと判断できた。
俺は法力を高めることにした。
かいがいむに飛び掛るその瞬間、俺は法術で空気の刃を腕にまとい、そのままいむの後ろに回る。
いむはかいの攻撃の防御に精一杯で、俺に構うことはできなかった。
俺の空気の刃はいむの背中を横に切りつける。
いむが体勢を崩す。
そこに思い切りかいがエネルギー弾をまとった拳でみぞおちに叩きつける。
いむが地面にめり込んだ。
そこに俺は後ろに跳んで、さらに空気の刃を放った。
いむは見えないバリアを張った。
それをかいが蹴ってバリアを破った。
そこにこうとえんの攻撃から逃れた兵がいむの前に立ちはだかった。
兵には、俺が今度は空気ではない、得意の光の力で対抗することにした。
光の爪を右手に宿らせて、1度に全員を切り裂いた。
2人は避けたが、後は傷つきながら吹き飛んでいった。
残りの2人もこうが一瞬に倒してしまった。
残るいむはやっと立ち上がると、全員の強さに圧倒されて後ずさった。
「さあ、どうする?弟君」
腕を組むかいに彼は命のエネルギーを固めた弾丸を両手に溜めてそれを放った。
流石のかいもそれには焦りを感じ、最大のバリアを張った。
えんとこうも助太刀して、バリアを強化した。
俺は光の爪を使い、その弾丸に振り下ろした。
それは4人の全力で何とか破壊することができた。
その爆発で、かい達はバリアで無事だったが、俺は吹き飛ばされてしまった。
光の翼を出して上空に逃げたが、それでもダメージをくらった。
降りると、次の兵隊が攻めてきていた。
「おい、あれを見ろ」
兵の中に巨大なストーンゴーレムが1体いた。
「あれは昔の俺達一族の先祖の開発した、死滅した技術だ」
かいがそう言う。
「俺達には歴史に興味を持ったり、記す概念がないから、別の種族が物好きで俺達の歴史も記しているから、ゴーレムを倒すには、そいつらに聞くしかない」
こうがそう言う。
「ゴーレムは無敵だ。俺達が束になっても叶わない。コントロールも難しいが、国王が俺達が手に負えないと想い、無理したんだろう」
よく見ると、味方である兵が踏み潰されている。
「この世には7つの民族がいる。お前らラグム、一番歴史が古い俺達エントアスト、俺達と密接な関係で歴史を記しているのがノートライト。あとの4つはよく分からない」
最後にえんがそう言った。
とにかく、ゴーレムを倒す為に、ノートライトのいる町に向かうことにした。
ノートライト族のいる町は、彼らの住む地域、
カーボンソード山脈にあるらしい。
宮殿から北に遥か80km先も離れている。
宮殿から駆けて逃げるが、追撃部隊が追ってくる。
軽装騎兵、隠密部隊、馬車戦車5台。
そして、最後にストーンゴーレム。
ゴーレムは遅いが、隠密部隊は足が速くすぐに追いついた。
俺は光の爪で攻撃をするが、彼らの動きについていけなかった。
かいは俺を守ることもせず、次々に敵を倒していく。
こうは高い木の上で見物している。
えんは思い切り敵と戦い、楽しんでいた。
俺は圧縮空気を思い切り溜めて、半径5mに自分を中心に法術を最大に発揮した。
かいは両手で防ぐ。
こうは木の上から高く飛んで避ける。
えんは俺を睨みながら片手で俺の攻撃を防いだ。
敵の隠密部隊は全滅した。
彼らは素早さと技術だけが取り柄だったようだ。
「次の敵が来る。ノートライトに敵を連れて攻撃の巻き添えは気の毒だ」
その俺の言葉に無言で答えて3人は俺と先を急いだ。
山道に差し掛かる。
流石にこれらけ我々と感覚の違うエントアストと一緒にいると疲れる。
そこで、山道の向こうに小型の人間がいた。
「ノートライトだ」
えんが見下すように言う。
すぐに近づこうとするが、彼は槍を俺に向けた。
「俺、少し、お前達の言葉分かる」
エントアスト、俺達とは言葉が違うらしい。
エントアストは原住民、俺達と言葉が近くても不思議じゃない。
「敵じゃない。俺達はエントアストのゴーレムについて知識を聞きたいだけ」
しかし、情のないエントアストを理解しているのか、
全然信用はない。まして、ラグムの俺達が情があるとしても、遠い世界の住人のことなど、知るわけもないだろう。
「ゴーレムは古代の存在」
「それが後ろから追ってきている。どうやったら、倒せる?」
そこで、彼は少し考えて答えた。
「村長なら分かる。お前は奴らとは違う。村にはお前だけしか入れない」
俺は振り返ると、かい達は俺だけ行けというジェスチャーをした。
敵が追いつく前に、彼の村に行ってゴーレムについて聞くことにした。
気づくと、彼の魔術のように瞬間移動で村の入り口にいた。
それは、外の人間から村の場所を隠すために、魔術を使ったのだろう。
法術ともエントアストの力とも違うものであった。
村の中を歩くと、全員の小人が俺を見た。
そして、奥の山の中腹にある大きな屋敷に行く。
そこには、村長が門の前で待っていた。
魔術で先に導いてくれた彼がテレパシーで伝えたのだろう。
村長はゴーレムについて教えてくれた。
目の中に強烈な光を注ぐと動きが止まり、その止まっている10秒間に腹部にある程度強力なエネルギーを放つと、ゴーレムは崩れ落ちるとのことだった。
それを教えに元の道に戻った。
魔術で元の道に来ると、小人は消えた。
前にはかい達はいなかった。
前に来た道を戻った。
しばらくすると、軽装備兵を1万は一網打尽にしたかい達がいた。
どうやら、俺はあの村に数分いる間に、こちらの世界は数時間が経っていたようだ。
すっかり疲労困憊の彼らに俺はゴーレムの倒し方を伝えた。
と、同時にゴーレムが迫ってきていた。
俺は突っ込み、ゴーレムが放つ無数のレーザーを避けながら、目の中に精一杯の光を放った。
そこで、かい達は残ったエネルギーを光の弾にして腹部に放った。
かいの弾はゴーレムの手に阻まれる。
えんの弾はかいが弾いたゴーレムの手の隙間からゴーレムの腹部に当たる。
そこで、ゴーレムはよろけた。
こうの弾が最後に腹部で破裂した。
ゴーレムはそのまま、前に倒れて動かなくなった。
最後に俺が最大限の光の爪を右手に出す。
倒れて動かないゴーレムの上に飛び上がり、腹部を攻撃した。
ゴーレムは粉々になって散った。
かい達はよろよろで互いに肩を貸し合いゴーレムの残骸を見下ろす。
助け合うという感覚のない彼らにはかなり珍しい光景だった。
よほどの絆を3人は持っているのだと思った。
「無敵の化石を倒したんだな」
とかい。
そのまま、また宮殿に戻ることにした。
門を通ると、追撃部隊とゴーレムにやられたと思われた俺達が帰ってきたので、残った近衛兵は逃げ出した。
重機兵が盾を前に最後の砦になった。
俺達はとりあえず、その前で対峙しながら、体力の回復をする為に休むことにした。
体力が少し回復すると、かいと俺は兵隊に突撃した。
2分で重機兵の半分を倒した。
そこで、こうとえんも参戦した。
6分後には、兵を殲滅して宮殿の中に侵入をしていた。
しかし、宮殿は捨てられて、誰一人いなかった。
ある部屋に向かったかいは、何か呪文を唱えて、壁のレバーを下ろす。
すると、部屋の中央の円に3人のエントアストが召喚された。
「がい法務大臣、せる財務大臣、きむ外務大臣」
かいの顔を見るや否や頭を深々と下げた。
「皇帝はどこに?」
すると、せるが言った。
「湖の向こうに4艘の戦艦で逃亡しました。ゴーレムが倒された時点で、我々は閣下から逃亡を始めたのです」
すぐに、かいはえんとこう、そして俺に言った。
「ここは俺に任せて、お前達はその戦艦を追って沈めてくれないか?」
俺達は無言で頷いた。
戦艦を追う為に、まず山頂の宮殿から湖畔の町の最も低い場所に急いだ。
宮殿であれだけ激しい戦いがあったのに、街の住人は普通に暮らしていた。
それが不自然でならなかった。
ある意味、エントアストの図太さなのかもしれない。
湖畔に来ると、戦艦を追う為に湖を渡るものを探した。
港に船は止まっていたが、誰も乗せてくれない。
力づくで強力させようとしたり、船を奪おうとするえん達を制して、最後に聞いたのはお約束のおんぼろ漁船で、その漁師は快く了解して俺達を乗せてくれた。
見た目は渋々、といった感じだが。
エントアストなら仕方ないし、もう、彼らの行動と心内は容易に分かるようになっていた。
湖を進むが、すでに戦艦は見えない。
ただでさえ、こちらより足が速いのに、先に出発している。
「お前の法術で何とかならないか?」
えんの言葉に俺は風の法術を使うことにした。
光の爪を大きく広げて帆にすると、風を吹かせた。
ものすごいスピードで漁船は壊れそうになりながらぎしぎしと進んだ。
すると、1時間後に湖の向こう岸に戦艦が止まっている。
俺達はすぐに高く飛んで戦艦に着地した。
しかし、すでに誰もいなかった。
こうは腹いせに戦艦を全て破壊した。
とにかく、湖の先の草原を進み敵兵達を追った。
4艘の戦艦ということは、そんなに大部隊ではない。
そして、足も遅いだろう。
草原を光の法術で翼を出すと、こうとえんを掴んで、思い切り力を込めて飛んだ。
流石に、もう彼らは力を回復したみたいで、すぐに俺から離れて2人は自ら飛び始める。
3人で皇帝の部隊を見つけるのにそう時間はかからなかった。
すぐに後方部隊を蹴散らすと、エネルギー弾を放つ主力部隊とぶつかった。
ここまでくると、皇帝の兵はかなりの実力を持っていた。
警戒しながら、徐々に軍との距離を縮めていった。
しかし、総攻撃になかなか手が出せなかった。
草むらで実力も上の多勢の兵を相手に、たった3人で何が出来るのだろう。
そこで、作戦でそれを補うことにした。
風の法術で別の種族が生息していることが、しかも、戦闘は全然駄目だが、頭脳派であると感知できた。
すぐにえん達に相談するが、彼らは自分達が見ているので、俺だけでその種族に助っ人を頼むことにした。
草むらの先には土の穴があった。
その中を進むと、本箱で包まれた壁の巨大空間に出た。
小太りの小人達が本を読んでいる。
その中の1人に声をかけた。
彼らは全ての民族に精通しているらしく、言葉も勉強している。言葉が通じた。
手短に相談して、策士の助っ人を頼んだ。
彼ら、ネムルはコミュニケーションが苦手で一族以外の者には嫌悪を示している。
その中で味方を探すのは至難の業であった。
ネムル族の洞窟には、沢山の枝道が出ており、そこに各施設や住居があるようだ。
その中に離れた住居があり、ドアを叩いてみた。
出てきたのは、ひげをたくわえた小人で、変わり者だという雰囲気が漂っていた。
今までのいきさつを話すと、策士として手伝ってくれると軽く約束してくれた。
ネムル族の中でも変わり者のようだ。
彼を連れてすぐにえん達の元に急いだ。
元の場所に戻ると、すでに皇帝の部隊はいなかった。
道の先をネムル族の『ヘルランド』を背負って、高速で駆けていった。
すると、やっと兵隊を見つけた。
その脇にえん達が草むらの中で警戒しているのが、一目で分かった。
すぐに俺達は合流した。
ネムル族のヘルランドは強力な大軍にこのメンバーにどうすればいいのか、かなり悩んでいた。
「こうなったら、頭を先に討つしかないな」
彼の意見は正論だった。
草原の1本道では、奇襲も無理。
正攻法でも実力も数も上な敵にはかなわない。
皇帝1人を狙うしかない。
だが、周りの兵士達が邪魔で、直接攻撃するのは難しい。
「さあ、どうする?」
嫌味を込めてこうが尋ねる。
「おとりで近衛兵の1/3を分離する。道の関係で重機兵、近衛兵、皇帝の並びになっているから、草むらに隠れて中央から攻めれば、近衛兵しか来ないはず」
「残りの2/3を掻き分けて皇帝だけを集中するのか?」
えんがヘルランドに訊く。
「トラップと奇襲で一瞬、動きを止めるんだ」
その作戦で行くことにした。
俺達は中央部で飛び出した。
えんは高く飛んで、それを追って1/3の兵がそれを追った。
と同時にヘルランドが草を結んで作った足掛けの前に顔を出す。
近衛兵は次々に彼に迫って転んでいった。
その間に俺とこうは飛び出して、皇帝の馬車に彼はエネルギー弾を、俺は光の爪を放った。
しかし、馬車を壊して皇帝は高く飛んだ。
上にいたえんは近衛兵を相手にしていたが、すぐに下から来る皇帝に体当たりした。
と同時に、こうも体当たりする。
そこで、大爆発が起こる。
周りの近衛兵はほとんど地面に叩きつけられて気絶する。
俺は空気のバリアを張って、2人を守った。
しかし、皇帝の攻撃はすさまじく、こうとえん自身もバリアを張ったが、瀕死の重傷を受けて地面に降りた。
俺達3人の前に大きな皇帝が降り立った。
明らかに勝ち目はなかった。
皇帝に怯まずにえんとこうは飛び掛る。
彼らには恐怖という感情はないのだ。
気づくと、ヘルランドが手を地につけていた。
すると、地面がどろどろになって、周りの重機兵はその重い鎧のせいで地面に足を取られ、半分も体が地面に沈み、動けなくなった。
そのまま、元の地面に戻し、彼らは地面に埋められてしまった。
その力を今まで使わなかったということは、彼が俺達を今まで信用していなかったということである。
皇帝はえん達のエネルギー弾を片手で弾き、腕を振っただけで空気圧で2人を吹き飛ばした。
空中で戦う彼らに、俺も参戦することにした。
しかし、普通に戦っても3人でも勝てない。
そこで、新たな法術の技を試すことにした。
光の爪を右手に宿し、そこに空気をなくして真空を作った。
2人に気をとられている隙に、俺は意を決して皇帝に突っ込んだ。
皇帝に真空をまとった光の爪を振るった。
皇帝は右足で簡単に蹴り飛ばして、俺は地面に激突した。
ヘルランドは俺にある指輪をくれた。
それをすると、法力がどんどん湧いてきた。
それが何なのかは分からないが、今は彼に聞いている暇はない。
すぐにまた飛び出した。
えんが結界を張り、こうが電撃を放った。
皇帝は5m飛ばされたが、すぐに結界を外した。
そこに俺は増幅した法術を放った。
空気の中の水素と酸素を爆発させた。
皇帝は両腕で防いだが、少しは手ごたえはあったようだ。
俺は皇帝は攻撃をかわしつつ攻撃すれば、何とかなる気がした。
えんとこうに気を逸らしてもらいつつ、俺は空気爆発の攻撃を続けた。
しかし、少ないながらダメージを受けているはずの皇帝だが、全然変わりがなかった。
彼は剣を振り、空気の刃を放つがそれを俺達はかわしつつあった。
そのうち、皇帝は叫んだ。
「エンペラー、エクスプロージョン」
すると、彼の周りから光の弾が無数に飛んできた。
俺達はすぐに地面に降りて、ヘルランドの作った地面の中のシェルターに逃げた。
頭上では、光の弾が大爆発した。
ヘルランドのシェルターは簡単に壊れた。
えんとこう、俺の空気のバリアを張ったが、それも破られ、俺達はダメージをくらった。
息を整えて、血をぬぐって頭上の皇帝を全員で睨んだ。
皇帝はさらに同じ技を出そうとした。
そこで、爆発が起きないように皇帝の周りに真空の空間を作った。
爆発は不発になり、彼は空気を求め苦しみ始めた。
しかし、俺の法術は1分と持たなかった。
簡単に真空の幕は取れた。
それでも、すぐにまた真空を作る。
えんはそこで飛び出して、エネルギー波を放った。
こうもそれに続く。
流石に真空を外す力は、彼らの攻撃を防ぐ為に割き、そのために真空を外せなくなった。
下では、ヘルランドが何かをしている。
結界を張って、真空を保つ助けをしているようだった。
酸欠のため、皇帝は苦しみだして、地面に落下を始める。
それに追い討ちをかけるようにえんとこうは攻撃を続ける。
勝てると思ったその時、皇帝は本気を出した。
すさまじい風圧に、俺達はかなり吹き飛ばされた。
ヘルランドの結界も破壊された。
すぐに俺達は体勢を整えて距離を取った。
そこで、今度は皇帝の反撃が始まる。
どんどん、光弾が放たれる。
それはとてつもない破壊力で、避けると地面が大きくえぐれた。
それに加えて、皇帝は重力場の操作を始めた。
右手を俺達に向けると、重力が強くなって地面にへばりついた。
それはどんどん強くなり、自分の体を支えるだけでも、精一杯になっていた。
もう駄目だと思ったそのとき、ヘルランドが地面に結界の模様を書いた。
しかし、結界を張ったがそれも無意味だった。
すでに彼の力も皇帝にかなわなかった。
万事休すのこの状況で、遠い空から多くのドラゴンが現れた。
何十のドラゴンは皇帝に向かって炎を吐いた。
誰が召喚したのか、それらは皇帝の気をそらし、俺達はすぐに自由になったので、皇帝から距離を取った。
皇帝はドラゴンに攻撃を始めた。
その間に体勢を整えた俺達は最後の力を振り絞って、最大の爆発する光の弾を発生させた。
その巨大さで皇帝はすぐに気づいた。
だが、そのまま俺達は放った。
凄まじいスピードで皇帝に向かった。
皇帝はドラゴンを全てなぎ払うと、その巨大な光る爆弾を両手で受け止めた。
そして、笑みを浮かべて跳ね返した。
俺達はそれを避ける為に駆け出した。
しかし、すでに遅すぎた。
あれは地面にぶつかれば、半径1kmは破壊する。
俺達はせいぜい逃げても100m。
間に合わずに爆発に巻き込まれるだろう。
それでも、必死に草原を割った道を走った。
そこで、背後に巨大な光の弾が落ちるのを感じた。
俺達はいっせいに伏せた。
しかし、いつまでたっても爆発は起こらない。
そっと振り向いたら、そこにはあの光の弾を受け止めた者がいた。
そう、かいである。
そのまま、それを跳ね返し、
皇帝は爆発した。
かいは皇帝の息子。
それなりの力を持っていても不思議じゃない。
すぐに、俺達の周りにバリアを張り、そのまま、振り返ってとどめの一撃を放つ。
光線は皇帝の額を貫通して、そのまま地面に落ちた。
「かいのお父さんなのに、何の躊躇もなく…」
俺がそう言うと、彼は笑顔で言う。
「俺達には血族の絆などない。それに敵ならどこの誰だろうと敵だ。親子は関係ない。とりあえず、宮殿の方は片付いたぜ」
かいの言葉に俺は空しさを感じた。
かいは宮殿に戻るつもりはないらしい。
ここで、えんとこうに宮殿で後始末を頼んで、彼は俺と次の街に向かうことにした。
「ここに王権を取り戻しに来たんじゃないのか?」
すると、彼は悪戯っ子の笑顔を見せた。
「ただの裏切り者達の処刑だ」
そして、俺は後ろを見た。
なぜか軍師としてついていたヘルランドが来ていた。
「君はどうしてついてくる?」
すると、彼は横を向く。
「お前らが面白そうだからだ」
この地区は変わった性質の人が多いようだ。
しばらく、進んでいくと、
大きな鉄の海が広がっていた。
液体の鉄は温度が低く、乗っても沈むことはなかった。
「これは鉄じゃない。エルトマスト合金だ」
ヘルランドが言った。
かいは構わず、どんどん金属の海を歩いていく。
それにあわてて俺はついていく。
小人のヘルランドはさらに足を急がせた。
すると、この海の中から巨大な化け物が現れた。
蛸と烏賊を足して2で割ったような化け物で、12本の足を鞭のように俺達に振るわれた。
金属に弱いようで、ヘルランドはなす術はなかった。
かいは高く飛ぶと、大きな光を発してそのまま放った。
化け物は墨を吐き、その光を相殺してしまった。
化け物を倒すべく俺は最大の空気の刃を放った。
と同時にヘルランドが叫ぶ。
「右から足の鞭」
離れてサポートしてくれるらしい。
右にいたかいは、すぐにその足を受け止める。
しかし、4mは引きずれた。
「上に墨」
そこで俺は空中から離れて地面に降りる。
上空に墨の雲が放たれた。
「真正面から攻撃」
かいはすぐに横に飛んで、すかさずにエネルギー弾を放った。
化け物は足の隙間から胴に攻撃を受け、そのまま沈んでいった。
足以外は弱かったようだ。
金属の海を進んでいくと、数隻の船が向かってきた。
「バンク族だ。無視してやり過ごそう」
ヘルランドがそう言うのと同時にかいは船に襲い掛かり戦争を起こしていた。
1隻を奪って俺達に手を振る。
「戦闘部族だ。今は雑魚の先発隊だが、
この有様を知られたら、本隊が来るぞ」
ヘルランドが恐れつつ言う。
よほどの相手なのだろう。
「その前に進んでしまえばいい」
俺達はかいの略奪した船に乗り、帆に法術で風を当ててスピードを出した。
それでも右前から巨大戦艦がこっちにやってきた。
「間に合わなかったか」
俺は落胆した。
バンク族の戦艦は主砲を撃ってきた。
それを何とか避けながら回り込んですれ違って逃げることに成功した。
それでも、機関銃を撃ってくる。
初めてこの世界で見る機械兵器を見る。
気づくと、船の船底に1人バンク族のクルーが隠れていた。
人質にしようとするヘルランドに、即攻撃をしようとするかいを止めて、彼の言い分を聞いた。
「おいらは味方だ。元々、海軍は嫌いなのに上官が配置したんだ」
「で、あの戦艦の弱点は?」
ヘルランドは訊くと彼は船尾を指差した。
「巨大なエンジンがある。周りは合金で覆われているがそれを突破したら、エンジンが爆弾の代わりになる」
それを聞くと、俺は法術で光線を船尾に集中させた。
かいも波動を放った。
戦艦は大爆発を起こして、ゆっくり沈んでいった。
バンク族の名前は爆と言った。
彼も変わり者でヘルランドのように俺達についてくることになった。
船は海をさらに進む。
ところが、急に凪になり船が止まった。
俺の法術の風でも進まない。
「ここの特有の錬炉ドールだ」
爆の言葉に俺達は顔を見合わせた。
「この金属は元は固体で、液体になるためにはこの辺の活火山の熱が必要。そして、その活火山が海底にあるのがここ。錬炉ドールだ」
つまり、固体と液体が混ざっているので、進まなくなったということらしい。
俺は法術で船の前の金属の海を固体の橋に変えた。
そのまま、歩くことにした。
爆は海上民族のため、あまり歩くのに慣れていないらしい。
すぐにスタミナが切れる。
そのずんぐりむっくりした体格もあるだろうが。
短足のヘルランドも同様。
そこで、かいは船を持ち上げて即席の道においた。
それに2人を投げ込むと、軽く構えて突いた。
船はすっとその細い道を滑っていった。
俺とかいはゆっくりその後を歩いていった。
金属の海は1時間で途切れた。
向こう側は岩山がそびえ、断崖絶壁であり、船が衝突したのか粉々になっている。
「もっと、考えてくれ。殺す気か」
爆が言うとかいは無邪気な笑みで言う。
「この程度で自分の面倒も見られないなら、俺達についてこれない」
俺は同感だと身に染みて思った。
「で、お前達はどこから船を出している?」
かいの質問に、爆は指を右に向ける。
「たった1つ海岸がある。だが、おいら達の砦がある」
「破壊すればいいじゃん」
そこで、かいに1つの民族を絶滅させるのを避けるために俺は進言した。
「そんな面倒なことしなくても、ここを上ろう」
「それもそうだな」
後頭部に手を組み、俺の心内を覗くように言った。
2人を担いで、かいは思い切り跳んで、断崖を駆け上った。
俺は空を飛んで上までいき、金属を元の液体に戻した。
断崖の上は、密林になっていた。
密林の中を進んでいると大きな石像が見えてきた。
「遺跡?」
俺は俺達の世界の原住民の遺跡を思い出す。
石像は5つあり、その中央の大きなものは、足元にピラミッドがあった。
そのピラミッドに入り口は3首の狼がいた。
「ここは?」
爆は海の民族でここまで来たことはないらしい。
ヘルランドはあの地域限定に住む民族、こんな遠くのことまでは知らない。
「ノートライトだ」
かいがそう無感情に言う。
「あいつらは森の民だ。どこの森にもいる」
かい達エントアストの先住民であり、原住民のノートライトは、全ての歴史を刻む民族だった。
知識を得ることができるかもしれない。
かいにこの遺跡を調べようと言うと、彼は興味がないように首を傾げる。
そのまま、森の中を進むことにした。
しかし、2時間たっても森を出られない。
それどころか、10回は同じ遺跡の前に出ている。
おそらく、ノートライトの呪いがこの辺りにかかっているのだろう。
道案内の彼らの1人を仲間にする必要があるだろう。
しかし、彼らはエントアストを嫌っているらしい。
俺は1人でピラミッドの狼の前に行く。
うまくいけば、土のネムル族、水のバンク族、エントアスト族、法のラグム族、そして、木のノートライト族が仲間になるという奇跡が起こるだろう。
狼に気づかれないように法術で空気の屈折を作り、姿を見えないようにした。
なお、風を起こして匂いを狼に届かないようにする。
ピラミッドの入り口に滑り込むと、中は巨大なホールになっていた。
地上にあるピラミッドは全体の10分の1なのだ。
階段を下りてホールの中央に行くと、地面から家具が生えて、いつの間にかノートライトに囲まれていた。
「何しに来た?」
その中の1人が代表として前に出てきた。
「この森を出る為に道案内を頼みたい」
そこで、若者が奥から出てきて言った。
「水の民、アルトフェル族との戦いに参戦すれば、考えてもいい」
そこで、不思議に思った。
「水の民はバンク族でしょう」
「愚か者。あれは鉄の民だ。金属の海に住むだろう」
「分かった。アルトフェルの攻撃に参加しよう」
そこで、若者のインが森の抜ける役に出てくれた。
その前に、戦争が始まるが。
アルトフェルは森の先に広がる海辺をテリトリにしているらしい。
ちなみに、鉄の海は海ではなく巨大な湖だそうだ。
インと俺達だけで、先発隊として先に攻め込むそうだ。
ノートライトのこの森の国の王、バルトベルの勅命であった。
すでに、宣戦布告はしているらしいので、俺達が行くことはばれていると考えられる。
インとかいは森の中から海を望み、すぐに攻め込もうとしたが、ヘルランドが即止めた。
海の民は海に逃げられると厄介である。
そこで、地の利を封じるために海へのルート封鎖、全数の船の破壊を考えた。
夕暮れに、行動を開始した。
ヘルランドの指示どおり、爆は隠れながら海辺に行き、爆は船に長けているので、一番攻撃力のある船をのっとり主砲を使って、
次々と破壊していった。
ヘルランドは地面に地割れを起こして、海と街を隔絶した。
かいと俺はインの誘いで城塞に向かった。
兵隊が現れるが、陸地戦ではこちらに分があった。
かいは攻撃を開始して、どんどん倒していく。
インは幻覚魔法で兵士の動きを止めて惑わした。
俺は法術で波動を放ち倒していった。
城塞が陥落するのに、1時間もかからなかった。
かいの力はあまりにも強すぎたのだ。
占領して兵士、王族を地下牢に封じた頃に、ノートライトの本隊が到着した。
1つの国をたった5人で攻略したことに、彼らは驚いていた。
俺はノートライトの王に褒美をくれると言ったが、俺は断った。
しかし、爆は欲張る。
そこで、彼はインを仲間として一緒に連れて行きたいと言った。
もちろん、彼は断ろうとしたが、王の勅命で動向することになった。
海を渡るとかいは、残った1隻の船に乗り込んだ。
新しい仲間を入れて大海原に乗り出した。
すると、後ろから猛スピードで追いかけてくる者がいた。
見えないエンジンのついたサーフィンボードに乗った若者だ。
アルトフェルの報復のために追ってくるんだろう。
かいは気にしないで前に進むが、爆は気になって船を飛ばす。
インは植物のない状況に元気をなくして、キャビンで寝そべっている。
ヘルランドは船尾で追手を見つめている。
俺は攻撃に備えて、法術でいつでもバリアを張れるようにしていた。
気づくと後ろにいた青年は船の甲板に立っていた。
どうも、彼らなりの能力があるようだ。
おそらく、俺達は全員、法術の類を使えるだろう。
アルトフェルは海の民だ。海の術、水の術を使うだろう。
すると、霧が立ち込めて視界が見えなくなる。
対抗するように、爆はその霧を解いた。
彼も金属の海の民だ。同じような術が使えるのだろう。
次にヘルランドは案をめぐらせている。
彼の知識なら、軍師としての行動を教えてくれるだろう。
インもあらゆる民族の歴史や性質を知っているノートライト族だ。
分析をしてくれるたろう。
「口をふさげ、彼らは言霊を鍵にする」
インが叫ぶと、ヘルランドが叫んだ。
「クレバー、法術だ」
そこで、俺は空気の術を使い、彼が声を出さないようにした。
かいが喧嘩っぱやく手を出そうとしたが、
爆がすぐに手で制した。
俺は最大限の法力を溜めたそのとき、アルトフェルの青年は右手を俺に向けるが、すぐに諦めたように手を下ろした。
「やっぱ、すげーな。5人で街を陥落されただけある」
そして、無邪気な笑顔を見せる。
「俺はポウ。仲間に入れてくれ」
俺達は互いに顔を見合わせた。
「一族を殲滅した俺達を?」
「ノートライトに仕組まれたんだろう?仕方がないさ。それに俺達はそういうの気にしないし」
つくづく、この辺りの民族は奇妙な感覚の人種が多い。
「いいんじゃない?」
かいは頭の後ろに手を組んで軽く答えた。
船は一週間は進んでいるが、一向に向こう岸につく気配はない。
改めて、海とは広いものだと実感した。
今までの湖が狭く感じる。
やることがない状況で、食事の必要のないこの世界は魚釣りで魚を取って食べる必要も、水を確保して飲む必要もない。
本当に暇なのだ。
爆とぽうは水が好きのようで、船の操作と帆の調整をしきりに行っている。
インは幻術で森をキャビンの1つに作り出していた。
その中でただひたすら眠りについている。
かいは偵察用の展望台で遠くを見ながら寝そべってブランデーのビンをあおっている。
ヘルランドは地面のない状況が落ち着かないようで、甲板をひたすら掃除している。
おれは、船尾で術と武道を鍛錬していた。
1週間が過ぎただろうか。
やっと小さな島が見えた。
法術で風を起こしてスピードを上げて、それでもこれだけかかったのだ。
島に碇を下ろして岩場に上がる。
この島にテントを立てて、周りを調査することになった。
ヘルランドは久々の地面に、すぐに山に向かってしまった。
インは森の中に進む。
川を見つけたポウはそこに向かう。
爆は金属の含まれる鉱物のある岩場を回る。
皆、それぞれの属性の場所に引かれるのだろう。
かいは俺と島の上空に飛んで島を感知し始めた。
かいは気づいていないが、この島は半島であるらしい。
満潮時だから島のようだが、裏側に1本の浅瀬があると感知できた。
俺の法術の感知範囲はクリスタルタワーでも広い方だろう。
そして、ここに謎の団体が潜んでいることも。
かいに指を指す。
森の奥に草むらが動くのが見えた。
かいは視線をそこに凝らす。
「敵か?」
「ここまでの殺気でお出迎えじゃないだろう」
「じゃあ、暴れてくるか」
「待て、かい。相手の数と実力が分からない」
「正体なんて、戦えば分かるさ」
かいが突っ込んでいく。
すぐに俺はかいを追った。
かいは草むらの群集に突っ込むと、すぐに火の剣の山が発生した。
水、土、木、金の一族がいるので、最後は火だとは想像できたが、火を何もないところから出す術を持っているとは思ってもみなかった。
彼らはすぐに火炎放射が始まり、かいはそれを防ぎながら光弾を放った。
すると、ドラゴンを召喚して襲ってきた。
しかも、10匹以上はいるだろう。
それでも、下級ドラゴンなのでかいは簡単に落としていった。
俺が慌てることも手を出すこともなかった。
しばらくして、炎の巨人が現れた。
俺は地上に降りると、インが森の中から現れて言った。
「炎の魔人だ。この世界で森や川、泉とラピスラズリの草原、翡翠の森と13の国があの魔人、たった1体で荒地になった。そう、あの不入の大地だ」
「誰がどうやって倒した?俺達ラグムでは不可能だ。1番強力のかい達エントアストか?」
すると、インは首を横に振った。
「レール族だ。レール族自身で作り出して、自分達でそれを封印した」
最悪の知らせだった。
「何故、俺達を攻撃して、かいが暴れただけであれを?」
「もちろん、彼らは自意識過剰な性質だ。だが、寝は弱虫でね」
「どうすれば、この事態を収拾できる?」
そこにヘルランドが現れた。
「俺達が束になっても勝てない。レール族と交渉してあの化け物を封じてもらうしかない」
それができたら、攻撃を最初からしてこないだろう。
かいにそのことを伝えたが、それでも、火の魔人に突っ込もうとした。
「国を滅ぼすほどの存在だぞ」
「でも、奴らが作れたものじゃないか」
そのまま、突っ込んでいくが、魔人の体から発する熱気だけで、ダメージを受けて距離を取った。
魔人はかいに炎を吐く。
ドラゴンなんてライターの火のようであった。
物凄い火山の噴火のような炎が発せられ、かいはすぐに下降して難を逃れるが、
背中を火傷していた。
俺は交渉役の爆を見つけると、すぐにレール族の元に向かった。
そこで、かれらの先発隊の1人に話しかける。
「レール族に問う。何故、我々に戦いをしかける?」
そこで、彼らの中から交渉人が現れる。
「我々のテリトリに入った。それに、応戦してきただろう」
「彼の非礼は詫びる。エントアストはそういう民族なんだ。それに大勢の人間が攻撃をしようとしたら、
先手を打とうとするのは、好戦的な民族でなくとも、そういう感情になるのは否めないだろう」
「では、応戦はこの際、置いておく。でも、テリトリへの侵入は言い訳できまい」
「知らなかった。レール族に会うのは、6民族にとっても稀なんだ」
「説明になっていない。知らなければ、お前達は法を犯しても罰せられないのか?」
「郷に入りては郷に従え、か。確かに正論だが、君達は我々がここに来る前、または、侵入後でもそれをいきなりの戦闘でなく、口で説明すべきではなかったのか?」
「概念の違いだ。エントアストが戦闘態勢を見て、攻撃を始めるように」
交渉は難航を極めた。
「しかし、炎の魔人はやりすぎだろう」
すると、爆の言葉にレール族は一斉に前を見た。
「あれは我々の仕業ではない」
その言葉に俺達は顔を見合わせた。
「どういうことだ?」
すると、レール族の中の1人の少女が姿を見せる。
「あれはお兄ちゃんだよ」
「まさか?呪いか」
「いや、元々炎の魔人は我々の人体実験の結果なんだ」
その言葉を長老らしき人物が言う。
「今まで、ウイルスとして封印されていたのだが、3日前の津波で封印の遺跡が破壊されてな」
とにかく、あれは俺達で倒すしかない。
できれば、ウイルスを退治して元の姿に戻したいのだが。
流石に、ヘルランドでも軍師を勤めるのは難しかった。
洞窟から現れたヘルランドは爆に状況を聞くと、まず、封印を考えた。
俺達は6人で炎の魔人を六角形を作るように囲む。
そして、互いの質の法術を使い、六芒星を作る。
様々な色の光が互いに伸びてそれは炎の魔人を囲むが、魔人は封印の光線を簡単に破り、俺に向かって炎を放つ。
俺はすぐに高く飛んで避けるが、炎の熱は襲ってくる。
そこを法術でバリアを作り守ると、最大のエネルギー波を放つ。
だが、流石にこの地区へ来て成長している俺でも魔人にはかなわない。
全然効いていなかった。
そこで、魔人の中のウイルスを取り出そうと、俺は法術で小さくなり、彼の口の中に入る。
かなりの熱気で死に掛けるが、冷却バリアを回りに出して胃の辺りで浮遊してウイルスを見てみた。
感知できない。
人間の体内の病原菌の仲間のウイルスとは別の存在のようだ。
マグマの胃液を眺めてすぐに思いつく。
これも法術であるなら、その原因があるはず。
炎ウイルスを発生させているその原因を探した。
すると、腸の入り口辺りに煌く存在があった。
それは炎を発する石であった。
それを手に触れないようにそれをバリアで包み、俺は口から外に出た。
しかし、炎の石がなくなったのに、彼は元に戻らなかった。
そのとき、ヘルランドが叫んだ。
「それはウイルス源だ。ワクチンを作って投入しろ」
すぐに法術でウイルス解析を行い、そこからワクチンを生成した。
そして、石に再び入れて魔人の口に放った。
しかし、防がれて石は地面にめり込んだ。
それをイルは草で石を地面の上に出し、上空の俺に放った。
それをダイレクトで蹴って、不意打ちで魔人の口に入れた。
すると、ワクチンで炎の魔人は苦しみだした。
そのまま、徐々に体の炎が消えていき、煙を放ちながら小さくなっていった。
炎の魔人はレール族の男性になった。
彼らの体格の特徴は顕著で、細長いイメージであった。
「お兄ちゃん」
すぐに妹が駆け寄った。
レール族はすぐに我々と対峙した。
「まあ、ここはテリトリ侵犯と魔人ウイルス治療の両方で手打ちにしないか?」
かいがそう言うと、レール族長老は髭を撫でて考え込む。
すると、元魔人だった青年が妹を引き離して言った。
「彼らは命の恩人、いや、世界を救ったんです。我々のテリトリを犯したマイナス以上のプラスをもたらしました」
そこで、長老はテリトリを無断で侵入したことを、簡略して客としてもてなした、と言う名目にして
俺達を許した。
レール族のテリトリを進んでいくと、後ろからあの青年が走ってきた。
「俺も連れて行ってください」
全員はかいを見た。
「別にいいんじゃない。全民族が揃うし、面白いじゃん」
軽くそう言うのは、俺は予想通りだった。
彼の名はモノであった。
7人はさらに森の中に入っていく。
すると、ゼリーの川に出くわした。
「かい、目的地は?」
しかし、彼は何も言わなかった。
ゼリーの川を足が沈む前に足を出すことで沈まずに進む。
その先に草原が広がっていた。
中央には岩のレリーフがある。
かいがふと呟いた。
「あれが魔王ゼルの抜け道だ」
彼の目的はそのゼルを倒すことであるのを、今俺達は知った。
ゼルの抜け道を見つけたかいは魔王の復活を待つことにした。
彼はこの1週間以内にこの遺跡からゼルが出てくると言った。
召喚してしまえば早いが、それでは意味がないそうだ。
力は我々7人よりはるかに強い彼は不意打ちが丁度いいそうだ。
かいにしては、姑息な手を使うとかなり以外だったが、それだけ強敵だと言うことだろう。
俺は休息とパワーアップに精神集中で励むことにした。
ゼルは突然、遺跡の中から飛び出した。
俺達の不意打ちが一斉に始まった。
俺は精一杯の波動を放った。
かいはエネルギー弾を放つ。
残りの全員は得意の特性の力を放つ。
しかし、爆風の中から悪魔は現れる。
精一杯の俺達の不意打ちに無傷だったのだ。
さすがのかいも冷や汗を流した。
ゼルは手を前に出す。
瞬間、俺は全員の前に出て、精一杯のバリアを張った。
ゼルはエネルギー弾を放つ。
俺達は地面に落ちて、かなりのダメージを受けた。
後ろの景色は荒野に変化していた。
今の俺達にゼルを倒す力はない。
逃げようとかいに言うが、彼は拒否した。
全てはこのために、とだけ言い残して。
かいはもう1度エネルギーを放った。
しかし、焼け石に水だった。
ゼルは炎を吐いた。
かいはさっと上空に逃げた。
他の俺を含めた6人は互いに力をあわせて結界を張った。
しかし、それは30秒持てばいい方だろう。
そこで、かいは力を込めてエネルギーを放つ。
今度はなぜか効いた。
ゼルは地面に落ちていった。
ゼルは5大要素の部族の法術の結界に俺の法術がその結界を強化した。
そこで、かいの力が凝縮されたのだ。
この30秒以内にかいはゼルを倒さなければならない。
すでに2秒は過ぎた。
ゼルにさらにかいは追い討ちをかける。
かいのエネルギー弾のバルカン砲を放った。
ゼルは6秒後に強力なフォースを放つ。
結界に沿ってそれは天に昇った。
地上にいる俺達でさえ、その衝撃で気を失いそうになった。
でも、結界を作り続けた。
かいはその攻撃を上空1000mまで上って何とか耐え抜いた。
それでも、その光は大気圏を越えて黄色い彼方に消えていった。
ダメージを絶えつつも、かいはさらに攻撃を続けた。
真っ向勝負のかいにふさわしい行動であった。
ゼルは15秒後に地面に埋まった。
結界の効き目はあとわずか。
ゼルにキャパシティーを超える攻撃をかいは連続で攻撃していた。
あの魔王のゼルが反撃できないくらい。
それでも、ゼルを倒すことはできない。
20秒が過ぎる。
流石に結界の中でこれだけの攻撃がされると保っているのも辛い。
そのうち、爆がスタミナ切れで膝をつく。
結界の外にいるのに、衝撃だけでダメージを俺達は受けていた。
30秒後にとうとう俺達は力を使い果たし、そのまま地面に倒れた。
ゼルは地面に埋まったまま、砂埃が舞っていて、上空にへとへとのかいがいた。
砂埃がおさまるとかいは降りてきた。
そこにはゼルが立っていた。
「まさか…」
そこで、俺はモノを見て禁断の法術を思いついた。
彼の体内に残る炎の魔人のワクチンを俺は法術で元のウイルスに戻した。
彼は炎の魔人に逆戻りした。
かいは俺を始めて睨んだ。
しかし、それ以上、俺を責めることはしなかった。
俺の隣に降りて黙って、魔人対魔王の戦いを高みの見物をした。
魔人は炎を吐く。
全てを焼き尽くす炎は魔王を飲み込んだ。
魔王でもダメージを受けて地に伏せた。
ゼルは炎の魔人に勝てず、業火に焼かれて消え去った。
そこで、俺はワクチンを法術で彼の体に発生をさせて元の姿に戻した。
かいは倒れている俺の前に来て息を乱しながら見下ろした。
「まあ、いいや」
彼の心中は複雑なのだろう。
でも、俺は判断は間違っていないと思っている。
かいは目標が終わり、宮殿に帰ると言った。
彼の旅も終わりらしい。
他の連中もかいが帰るというので、それぞれ帰ろうということになった。
俺はあの不入の大地を越えないといけない。
しかし、今はこの地域にきて、かなりの力を得ている。
あのかいほどではないが、エントアストの中でもかなり上の実力だと自負できる。
1人であの不毛の地帯を目指した。
目の前にすると、流石におののいてしまうが、食料と水を行きの2倍を用意して担ぎ、思い切り駆け出した。
すると、よく見ると大地に色の違う場所がある。
そこに乗って走ると10倍のスピードで走れた。
それも10kmまでで、そこからは普通の大地になる。
とにかく、今までで比べ物にならないほど早く走った。
不入の大地に入って3日がたった。
あることが分かった。
2つの次元の穴が見つかった。
1つは魔力を感じる世界への穴。
もう1つは高度な力を感じる世界への穴。
その高度な世界への穴に入ってみることにした。
すると、同じような不毛の大地が広がっていたが、法界よりもこの大地は小さいようだ。
3時間で森に出た。
その森は川のように長く広がっている。
そして、その中には獰猛な生物がうろうろしていた。
「あそこはモンスターベルトだ」
振り向くと、青年がいた。
「別世界から来たな。ここは君のいるところじゃない。元の世界に戻るんだ」
彼に従うことにした。
知らない世界でさ迷うよりましだろう。
次元の穴に向かった。
今度の世界の不入の大地はかなり広かった。
しかし、法術の検知では、法界ほど馬鹿広くなく、前の世界ほど狭くもないということは分かった。
法術で西に行けば、3日で街に着くだろう。
ここでは、食べ物なしでは生きていけない。
残った食べ物と水を大事に駆け出した。
すると、大地を進む船が見えた。
大地を進む船を見て驚いた。
動力はおそらく物理の原理ではないだろう。
そのまま船を追った。
しかし、その速さは尋常ではなく、さっさと消えてしまった。
そのまま、西に進むとやがて街が見えてきた。
街の中に入ると、大きな街道が続き、左に巨大な広場が広がっていた。
その中に戦士の銅像とフクロウの銅像があった。
少年が近づいてきて、何かを話しているが、言葉が違うので分からない。
俺は法術で言語の互換性を整合して、言葉を通じるようにした。
「あれは、伝説の勇者、エルス・マーサの銅像で、隣が偉大な魔術師、ウッディ・ホーロウの銅像だよ」
「ここは王国なのか?」
「ロ・エト王国だよ」
「あのフクロウがどうして魔術師なんだ?」
「元々人間だったんだけど、魔法の失敗でフクロウの姿になって、面倒なのでそのままの姿で過ごしていたからだよ」
「変な奴」
「失礼だよ。おいらもエルスみたいに偉大な剣士になるんだ。元々、タトナ族らしいけど、不入の大地越えてここに来たんだって」
よく分からないが、黙って少年の話を聞いていた。
この街にきな臭い雰囲気がする場所を感知した。
西に向かう街道を進んでいると、やがて、住宅街が現れる。
商店が並び、売り込みの声が耳につく。
それをさらに進むと草原の中の道に出る。
1蹴りで5kmほど進むと北に向かう道が見える。
それを進むと山脈が見え始めた。
その山の中に洞窟があった。
かつて、何かが潜んでいたらしく、その気配は今も根強く残っている。
「エイシェントドラゴンの王か」
「そう、ノガードの住みかだったのさ」
振り返ると、魔法使いの老人が立っていた。
ノガード。
ドラゴンの王のことは、法界でもよく知られている。
彼は次元を超える力も持っているし、様々な存在に召喚もされる。
そのノガードが数100年もここにいたのだ。
もちろん、ここの世界の時間なので、俺の世界ではそこまでの時間はたっていないのだが。
その洞窟に進む。
すると、異次元への扉の欠片があった。
それに触れると、周りの風景がゆがみ始め、そのまま、別の空間に吸い込まれていった。
気づくと、見慣れた風景が広がる。
そこは法界であり、クリスタルタワーのはるか上空であった。
クリスタルタワーで長老に今までの話をした。
書記官は全てを記載していた。
すぐに、俺はエントアストと一緒に行動し、俺達を攻撃する敵のエントアストと心を通わせたということで取調べが始まった。
だが、エントアストの住む地域では、俺達はそこにいるだけで、パワーアップすることを知り、エントアストと同じくらいの力を持つ俺に彼らは畏怖してすぐに釈放された。
不入の大地の先には世界の終わりがあり、何もないという概念は覆され、探索隊が編成されようとしていた。
法術師がどんどんクリスタルタワーに集まってくる。
俺がエントアストの地に行ったあの地に、法術師の探索隊とともにきている。
これから、あの地に向かおうというのだ。
果たして、何人が生き残れるか。
たどり着いても、エントアストに殺されずに済むか。
早速、俺を先頭に進み始めた。
1週間で、食料が尽き始める。
俺の記憶では、半分も来ていない。
先に俺は共倒れしたくないので、このまま先に進むことにした。
あの地で手に入れた力で走る。
探索隊は追いつけるものはいない。
そして、かいが教えてくれたあの自動に進む道まで駆けていった。
後は、すぐにその道で簡単にエントアストの地に再び辿りつくことができた。
探索隊はまだ、誰も着いていない。
しばらく待っていると、3人の人影が見えた。
誰もが瀕死の状態で、歩いていること自体、奇跡に近い状態だった。
すぐに助けに行って、法術の使えるエリアまで連れてきてから回復の術を使った。
3人を休ませていると、森の中からエントアストの旅人2人がやってきた。
「お前ら、この大地を越えてきたのか?」
「ああ」
「低レベルの民族にしては、やるな」
俺は無視をして、3人を空中に浮かせながら森の奥に歩いていった。
しばらくすると、エントアストの村に出た。
そこは、10件程度の家しかなく、奇妙な家畜が無尽蔵に放たれていた。
病院らしきところに行くと、3人を診てもらうことにした。
中には医者がいたが、俺達を見ると見下したように鼻で笑う。
「診てくれませんか」
彼は首を横に振った。
「せめて、場所を貸してくれないか」
しかし、それも拒否された。
しかたなく、村はずれの空き家で3人を藁の上に寝かせて、ヒーリングを試みた。
3人の法術師はここに来て力をつけ、自己治癒をした。
そこで、3人の正体が分かった。
クリスタルタワーの警備部隊。
その中でも下っ端の警備員だった。
何故、そんな彼らだけがたどり着いたのだろうか。
俺は疑問を残して3人とともに行動をすることにした。
俺達は村を出ると、3人が不入の大地を越える力がつくまで、この地にいることにした。
山を越えて少し大きな町に出る。
そこで見たことのある顔を目にする。
そう、えんであった。
近くにはこうはいない。
えんに近づこうとすると、3人が怖がった。
えんの方が近づいてきた。
「ひさしぶりだな。そいつらは?」
「探索隊だ」
俺がエントアストと対等に接していることに驚いていた。
えんは今、街の賭博場で遊んでかなりの財産を得て、遊んで回っているらしい。
そのまま、彼は去ってしまった。
俺達は修行のために、ある場所に向かった。
山奥の鉱山。
そこにある鉱物がある。
それは法鉱石という法力を増幅させる特殊で貴重なものがあるそうだ。
見つけられるか分からないが、前にヘルランドから聞いていた。
鉱山に入ると、突如化け物が襲ってきた。
そこは捨てられた鉱山で、化け物の巣になっていたのだ。
ドラゴンと虎を合わせたような存在であった。
化け物を倒す為に、3人は法術を駆使してまずは結界を張った。
次に、大きなエネルギー弾を連発した。
しかし、化け物は傷一つつかなかった。
俺が次に炎の弾を放つ。
1発で化け物は火の海の中に埋まる。
そして、ついに動かなくなった。
3人は1発であの化け物を倒した俺を怯えるような視線で見ていた。
鉱山の中に今度は慎重に足を向けた。
しかし、どれが法鉱石なのか分からず、とりあえず、何でも掘り出して外に出していった。
後は法術で試すしかない。
鉱物を片っ端から法術で試した。
しかし、1つも法術に反応するものはなかった。
途方にくれていると、大きなドラゴンが現れた。
俺は3人を守るように構えた。
すると、ドラゴンは首を下げて乗るようにせかした。
俺達はそれに乗ることにした。
ドラゴンは俺達を乗せると、そのまま空に飛び立った。
不入の大地を越えてどんどん飛び、あっという間にクリスタルタワーにたどり着いてしまった。
どうも、長老がドラゴンを召喚したようだ。
クリスタルタワーで俺は調査部隊の一員になった。
そう、力を買われて信頼も得て、地位を手に入れたのだ。
気づくと部隊長になり、20人を束ねていた。
もう、不入の大地捜索はなくなった。
その計画で何十人もが命を落としたのだから。
これで、俺の旅は一時終了した。
クリスタルタワーで、一段の指示を出して生活する退屈な暮らしになったのだ。
俺が長老に話をしていると、1人の法術師が現れた。
彼も1人でエントアストの世界に行き、かなりの修行を積んだそうだ。
そこで、修行の間で腕を見ることにした。
すると、彼はかいと同じくらいの体術を使っていた。
法術は筋力強化に使用している。
だが、俺はそれに負けることはなかった。
彼自身、俺に勝てると思っていたらしく面食らっていた。
とりあえず、彼を俺の側においておくことにした。
向こうで何があったのか、どうやってたどり着いたか話してくれることを待ちながら。
完
CODEストーリーの外伝的な話です。
これを読んでいると、他の話とつながりが分かります。