表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
DROP&DROP ~アイテム発掘代行承ります~  作者: マイルドエンタン
1/3

『デビルズ・レザーネックレス』

国外追放


 それが今日、俺に下された刑だ。


「異議あり! この者は皆もよく知っての通り歴代最強と謳われた将軍です! 今までの功績に免じて減刑を申し出ます!」


 まぁあれだ。なにをやらかしたかと言われると軍規違反だ。


「王女様。ご静粛に願います。議決後の異論は却下させて頂きます。」


 隣国と武力抗争の際に俺が敵の将軍を討った。ここまではいい。


「そんな……あんまりです……」


 敵将軍が所持していたネックレスを奪ったのがいけなかった。だがあれだけの装備品を見つけてしまったのでは仕方がない。


 装備品の名は『デビルズ・レザーネック』と言う。装備した者には悪魔の契約が結ばれる。多少の血液と引き換えに体力、反射神経、身体速度が大幅に強化される。魔法使いの場合はさらに魔法力まで強化されるというスーパーユニーク装備と呼ばれる代物だ。


 奪ったから軍規違反だと? まさかそんなわけないだろう。むしろ戦利品として国に収めなかったらそれこそ軍規違反だ。まぁそれなんだがな。国に収めなかったから俺は今こうして追放されようとしている。


「たかが装備品一つでこの仕打ち! 私は許せませんわ!」

「まだ怒っていらっしゃるのですか」

「誰の為に怒っていると思っているのよ!?」


 さっきからうるさい女はこの国の第二王女『アーシェリカ・ティモ・ブラウス』だ。王位血統の第二位だけあって女王になれる可能性も秘めているようだが、まぁ落ち着きがないのが玉に瑕だな。頭脳明晰で容姿端麗まではいいんだが……。


「マテウス……私の気持ちがわからないあなたではないでしょう」

「あなたよりも上の人間達から国外追放と言われたのです。仕方がないでしょう」

「……そんな言葉を聞きたいのではないのです。こんな事になるならあの時あのような事を言わなければと悔いても悔いても悔やみきれませんわ」


 あの時。『デビルズ・レザーネック』を持ち帰って国に帰る途中の事だった。行軍中に少女が俺を訪ねてきた。なんでも俺が討った将軍の娘でネックレスを父の形見として返してほしいという馬鹿げた話だった。一応王女様にお伺いをたてたところ俺の自由にしていいといわれ馬鹿正直にネックレスを少女に返してしまった。

 その事が第二王女のライバル達に知られ直属配下将軍の俺は追放ってわけだ。めでたしめでたし。


「それでは私はこれにて」

「ちょっと待ってくださいマテウス」

「はい。まだ何か?」

「本当にこんな事になってしまい申し訳ありません。約束も守れずに……」

「気にしないでください。約束の件は残念ではありますが、私以上に王女様のほうが残念でならないでしょうから」

「もし、私が女王になり今回の件を白紙にできれば戻ってきてくれますか?」

「職権乱用とは穏やかじゃないですねぇ」

「どうなんですか?」

「……その時になったら考えますよ。では」


 そう言って俺は国を出た。



 



 ってのが十年前の話だ。月日が経つのは早いなぁおい。


「マスター。依頼が届きました」


 今はなにやってるかというとこれだ。


「依頼内容です」


アイテム名:『ピンク色の毛皮』

成功報酬:金貨一枚

追記:毛皮一枚につき金貨一枚で最大三十枚まで


 とまぁこんな感じの依頼を請け負う仕事をしている。


「よし。じゃあさっそく狩りに行くか」

「はい。準備してきます」


 ここは俺が立ち上げたギルド『DROP&DROP』だ。主にアイテムや装備品の収集を行っている。他のギルドのように迷宮に挑んだり決闘大会に出場したり強敵に挑んだりという事は行っていない。まぁ収集ギルドってやつだ。


「お待たせしました」


 この少女は……もう十七だったか。この女は副ギルド長『リナ・デル・オルノ』。普段は立派なハウスキーパーとしてギルドハウスを守護してくれている頼りになる女だ。依頼があった際にも人手が必要なときは手伝ってくれる。まぁこいつと俺しかいないギルドなんだがな。


「金貨三十枚か。なかなかいいじゃん」

「マスター。リナはそろそろメイド服を新調したいのですが」


 それは俺も前から新調してやらないとなと思っていた。ここ数年で彼女は非常に魅力的な肉体へと成長していった為、若干きつそうなのだ。特に胸のあたりが。


「わかった。報酬もらったらそれもって行ってきな」

「ありがとうございますマスター」


 これでもう少し愛想がよければモテるんだろうが、無表情で機械的な娘なのが玉に瑕だな。俺は一緒にいて落ち着くからいいんだがなぁ。


「準備完了。参りましょう」

「おう」





 さて、ピンク色の毛皮というアイテムについて語ろう。文字通り見た目がピンク色をした獣の皮なんだが普通の毛皮とは異なる点が色以外にもある。


『物理防御に優れている』

『素材加工に適している』

『貴族や王族のみ着用が許されている』


 つまり防御服に向いているわけだ。色の事から女性用ドレスとして加工される事が多い。暗殺や襲撃から身を護れるドレスを着付けたい、あるいは着付けさせたいと思う貴族は非常に多い。まぁ需要がめちゃくちゃ高い毛皮だということだ。


 さて、どんなモンスターからドロップできるのか。答えはこの俺達が先ほど到着した山の麓の広場にある。


「それではコールします」


 リナが動物の鳴き声に似た音を出すことが出来る道具を使用する。


 しばらくすると木々や草花が揺れ始める。標的のおでましだ。


「リナ。何匹察知できたか聞いておこう」

「十五匹です。マスターは?」

「……六匹」

「…………」


 一斉にやつらが姿を現した。狼の顔、熊の胴体に蛇の尻尾。まさに化け物だ。その化け物の名前は『カラバリ・キメラ』。水色、黄緑、ピンク、薄紫色の四種類の毛皮を持つことから名づけられているようだ。個体によって皮の色が違う為ピンク色の個体のみが標的となる。そんなカラバリキメラは弱点が多い。まずは動きや反応速度が遅い。俺達にしてみれば何匹群れようが楽勝な相手なのだが……。


「マスター」

「おう。なんだ」

「百匹と十五匹でした」

「おう。百十五匹だな。ピンクのやつは四十だ」

「…………」

「お互い修行が足りんな」






 その後、なんやかんやピンク色のカラバリキメラ四十体を倒して毛皮を手に入れることに成功した俺達はギルドハウスへと戻ってきた。するとリナがマスターと訊ねてきた。


「なんだ?」

「やはりギルドハウスを空にするのはどうも落ち着きません」

「そうか?」

「やはり罠を仕掛けましょう」

「だからダメだって言ってんだろうが!」


 リナの罠は死に繋がる。以前勝手に落とし穴を作成していた事があった。内容はヒドイものだった。とてもじゃないが十代の女の子が考えるような落とし穴ではなかった。十mもの深さを掘りさらに底は強力な酸の水溜りとなっていた。底に落ちるまでに傷を負わす為の刃物もたくさんむき出していた穴を見て戦慄した。


 もちろん俺は叱りつけた。万が一迷子になった子どもや悪意をもたない一般市民が訪ねてきたらどうするんだと言い聞かせたが……。


「運がないのでは?」


 真顔でそう答えやがった。リナが十四歳の頃の話である。





「ご心配なさらずに。致命傷程度のダメージを負わす罠にしますので」

「致命傷の意味を調べてみようか?」

「ではそろそろギルドメンバーを募集しませんか?」

「それは常日頃考えてはいるんだがなぁ」


 このご時勢。ドロップ目的のみの仕事や狩りしか請け負わないギルドに人が集まるわけがないのだ。さらに俺達は評判が悪い。某国家から落ち延びた元将軍と冷徹なメイドしかいないギルドと世間一般からはみられている。


 うむ。一応このあたりでギルドとメンバーの宣伝をしておこう。


 まずは俺から。ギルド『DROP&DROP』のギルドマスター『マテウス』だ。小国家『アリビ』第二王女直属の筆頭将軍だった経歴がある。魔法は少しだけ使えるが体術のほうが得意だ。


 次は連れのリナを紹介しよう。ギルド『DROP&DROP』副ギルドマスター『リナ・デル・オルノ』。こいつとであったのはリナが七歳の頃だ。当時小国家『アリビ』と隣国の小国家『アルマーニ』は国境の境目で争いが起こっていた。リナの父親は『アルマーニ』国境警備隊隊長を務めていたが戦いによって命を落とした。そしてある人物によってスーパーユニークアイテムである『デビルズ・レザーネックレス』を敵将軍に奪われそれをわずか七歳にして父親の遺品を取り返しに敵国へと一人足を運ぶ。それがリナである。

 

 あれから五年後。つまり今から五年前になる。放浪生活を続けていた俺はそろそろ拠点を構えて一箇所に留まろうと考えていた頃だ。自国には戻れない為、『アルマーニ』へと足を運んだ。だが内戦の真っ只中だった。隣国の元将軍がうろついてたらまずいと思い足早にその地を離れた。その途中にあるだだっぴろい荒野で俺達は運命の再会を果たした。


 彼女は酷い姿をしていた。全身から血を流してふらふらと歩いていた。


「おい。大丈夫か?」

「…………」


 生気のない眼で俺の方をみた。最初はリナだとわからなかったが首からぶら下っているネックレスを見てすぐに思い出した。


「お前!? あの時の娘か?」

「あなたは……父の仇?」

「まぁ、そうなるか」


 襲ってくるかと思ったがそうはしなかった。理由を問うとリナは正直に全てを話してくれた。


「あなたを恨むのは筋違いだとはわかっています。ですがやっぱり憎いので戦争が続いていれば戦地で再開も叶うと思い私は修行しました。兵士になるためにです。そして悪魔と契約を交わしました。代償は『女の鮮血』。私は処女を失いましたが強力な力を得ました。そして仕官したのですが肝心のあなたが国を追われてしまっていることを最近になって知りました。これではこの国にいても仕方ないと思い出国したのですが追ってを出されてこの様です」

「おまっ!? 鮮血が代償って最大級の契約方式じゃないのか!?」

「はい。今こうやって直に接してわかりましたが一瞬であなたを殺すことができるくらいの力はあります」

「ならなぜそうしない?」

「色々考えました。お互い国の為に兵士として戦うという後ろ盾的な理由があって殺せるならよかったのですが、兵士でないのであれば殺せません」

「そこがわからん。俺が憎いならそのナイフを俺に突き刺せばいい」

「父は兵士として死にました。ならば私も兵士として兵士であるあなたを倒さねば意味がないと考えていました」


 めんどくさい思考をもった娘だと思った。こだわりというかなんというか。しかし、鮮血を差し出してまで俺を倒そうと思っていたのか。いたいけな少女をここまで追い込んでしまったのか。


「俺を殺さないとしたらどうするんだ? 処女まで差し出してるんだぞ」

「はい。ですので責任をとってください」

「どうやって……あぁ自害しろってことか?」

「違います。私を娶ってください」


 今こいつ何て言ったんだ。おかしいな。耳はまだ遠くないはずなんだが聞き間違えたか。


「私はあなたの為に処女を差し出して力を得ました。それはつまりあなたに奪われたようなもの。責任を取るべきです」

「えぇ……」

「こんなに若い美少女に娶ってくださいと言われてその反応はありえないと思います」


 淡々と無表情で迫ってくるリナからとりあえず距離をとる。てか怖いわ。


「つまり夫婦になろうって事か?」

「はい」

「いやおかしい」

「恨みを想いへ、憎しみを愛情へと心を上書きしてあなたに尽くしましょう」


 いくら少女とはいえ女にここまで言われてしまっては男としてしっかりとした答えを出す義務があるだろう。俺は脳をフル回転させて最良なアンサーを探した。








「つまり衣食住を提供したらいいんだな?」

「そういう事です」


 こうしてギルド『DROP&DROP』は結成された。さぁ皆もアイテム収集しようぜって感じの宣伝で今回は占めておこう。





 






ゆっくりなペースになりますがなんとか続けて書いていこうと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ