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第5章2
「なあ、雲隠」
「?」
「おまえが星火だったら、どうしてた?」
そこまで人を信じることができたか、と学然に訊ねられ、雲隠は二胡を弾く手を止めた。
「どう……でしょう……」
信じたい気持ち。
でも、無理かもしれないと思う気持ち。
信じたくとも信じきれず、かといって吹っ切って前に進むこともできず。
自分は臆病なだけだ。
ここで何もせず、時間の流れに逆らってただただ生きているだけだ。
(限りある命……)
雲隠は月を見上げる。
果てることがない己が命――。
(――私は……)
ふと思い出す柔らかな笑顔。
彼女だったら、今の雲隠を見て何と言うだろう。
(美麗……)
大切な人の名を心のなかでつぶやき、雲隠は目を伏せ、再び二胡を奏でるのだった。
これで第3話は終わりです。
書き手の私が言うのもなんですが、このお話は結構好きです。
とくに星火がばっさまとじっさまのもとに戻っていく場面が大好き。
サイトでは、ちゃっかりイラストもいれてもらった場面です。
さあ、次は…第4話…の前に、でっかい外伝が1つ控えています。
どうぞお楽しみに♪