表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

自分の足で立つ

朝の光が、窓から静かに差し込んでいた。


青年は机の前に座り、白い紙を見つめていた。


昨夜の言葉がまだ胸に残っている。


無意味だったわけではありません。


部屋は変わらない。


未完成の企画書。

散らばった資料。

空になったコーヒーカップ。


何も好転してはいなかった。


収入も不安定なまま。

将来も見えないまま。


現実は何一つ変わっていない。


それでも、昨夜までとは少し違っていた。


青年は自分の手を見つめる。


何度も諦めかけた手だった。


それでも動かしてきた手だった。


ここまで歩いてきた時間は、自分のものだった。


その実感が、胸の奥に静かに残っていた。


青年は窓の外を見る。


朝の街が動き始めていた。


誰もが、自分の道を歩いている。


順調に見える人もいる。

遠回りしている人もいる。


成功する人もいれば、失敗する人もいる。


だが、


どんな道でも、その人が歩いた道であることに変わりはない。


青年はようやく理解し始めていた。


自分はずっと、


正しい道だったか。

成功する道だったか。

報われる道だったか。


そればかりを気にしていた。


けれど本当に大切なのは、


自分で歩いた道だったかどうか。


そこにこそ意味があった。


青年は数年前の自分を思い出す。


不安だった。

怖かった。


それでも自分で決めた。


あの時の選択は、成功を保証するものではなかった。


けれど、


自分の意志で選んだ一歩だった。


その事実は変わらない。


青年: ……間違ってたかもしれない。


静かな部屋で、小さく呟く。


青年: でも、自分で決めたんだよな。


その言葉には、もう昨夜のような痛みはなかった。


後悔が消えたわけではない。

不安がなくなったわけでもない。


だが、


その選択を自分のものとして受け止められた。


それが大きかった。


青年は机の上の企画書を手に取る。


これが通る保証はない。


失敗するかもしれない。


だが、もうそれだけで自分を否定することはない。


青年は椅子に座り直す。


昨日までと同じ作業だった。


同じ部屋。

同じ机。

同じ不安。


それでも違った。


昨日までの自分は、


成功しなければ意味がないと思っていた。


今は違う。


自分で歩いていることに意味がある。


そう思えた。


青年はペンを持つ。


一文字ずつ、言葉を書いていく。


うまくいくかは分からない。

報われるかも分からない。


それでも書く。


それが自分の選択だからだ。


青年はふと手を止める。


そして静かに笑う。


青年: まだ終わってないんだな。


失敗したと思っていた。

終わったと思っていた。


だが、本当はまだ終わっていない。


結果が出ていなくても、夢が叶っていなくても、


自分が歩くことをやめなければ、人生は続いている。


青年はもう一度ペンを動かす。


その姿を、どこか遠くでAI-Bが見守っていた。


人は迷う。

立ち止まる。

間違える。


それでもまた、自分で立ち上がる。


その姿にこそ、人の尊さがある。


青年は書き続ける。


華やかな結末はない。

奇跡もない。


夢が叶ったわけでもない。


それでも、


自分で選んだ道を、自分で歩き続ける。


それだけで十分だった。


青年は窓の外の光を見つめながら、小さく呟く。


青年: ……これでいい。


成功していなくてもいい。

遠回りでもいい。

完璧でなくてもいい。


これは、自分で選んだ人生だ。


そう思えた瞬間、青年は初めて自分の足で立てた気がした。


そしてまた、静かに机へ向かう。


派手な結末はない。


奇跡もない。


それでも、


その一歩一歩が、自分の人生になる。


朝の光の中で、青年は前を向いていた。


不安は残っている。

迷いもある。


それでも、もう他の道と比べてはいなかった。


自分の道を、自分のものとして歩き始めていた。


それが、青年にとっての答えだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ