第1話 絶望の絶頂を迎えた日の奇跡
運命は決まっている。
誰が足掻こうが変えられない確定事項。
惑星が衝突し合い地球が誕生したように······
ニュートンが落ちるりんごを見て万有引力の法則を見つけたように······
行き歳いけるもの全てに死があるように······
だからこそ運命は受け入れるしかないものなのだ。だが、そんなものにも極僅かに謎の引力によって覆る時がある。
それは自身で人生に絶望を味わった時。
そう······僕はこの理不尽な世界を脱するため、家の中で首吊りをしていたはずだ······はずなんだが······。
「ここはどこだ······?」
目の前に広がる見覚えのない風景、耳をすませばこれまで聞いたことのない言語の会話が飛び交っている。
何が起きているんだ······?
死ぬ前の走馬灯にしては、記憶のどこを掘っても見覚えのない風景だし、知らない言語で話しているのも明らかにおかしい。
俺は暗い路地裏を抜け、日の当たる明るい街道へと出る。
どこを見渡しても僕の知っている世界とは全くの別物。全てが石や木を使った3世紀前のような家ばかりが連なっていた。
周囲には不明の言語で買い物をする住人が無作為に歩いているし、学生服を着た若者さえ歩いている。
「これはもしや······異世界に転生した······?」
街一面を見ながら軽く呟いた。
「ЕГККЙЙГКφВ?」
僕の声は周囲の者に聞こえていたようで注目を集めてしまった。
······一度出直そう。
周囲の注目から逃げ出せた僕はとりあえず過去を掘り返すことにした。
あの時、僕は間違いなく亡くなったはずだ。自室にあった縄で首を吊した。
その時の苦しみやこれまでの後悔の感覚はしっかりある。
なのになぜ僕は生きている?
そもそもここはどこなんだ······?
孤立化した静まる空間に突如、よくゲームのチュートリアルに出てくるAIのような音声が流れる。
━━━あなたに言語理解とユニークスキルを一つづつ付与しました。あなたに言語理解とユニークスキルを一つづつ付与しました。━━━
━━━ピロン! あなたに〈魔王リスミラの進行を止める〉のタスクが追加されました。ズーズーズップツン······━━━
AIのような音声は何度か呟くと画面と共にテレビがショートした時のように消滅した。
「何だったんだ······?」
少々の思考時間とこの謎だらけの世界に転生したという事実を踏まえると自ずとAIのような音声の話した意味が分かってきた。
「魔王を止めろと言っていたし、ラノベの定型文みたいなやつか! 異世界から呼ばれた勇者みたいな。 AIのような音声も言語理解やユニークスキルを付与したって言ってたわけだしステータスとか激強とかだったりして······」
······ステータスってどうやって開くんだ?
僕は試した。手で空を撫でてみたり、思いっきり[ステータス表示]と叫んでみたり······、しかし、どの動作にもシステムは反応しなかった。
······ハァ、まぁゲームじゃあるまいし、空にステータス画面が出るわけないか。
「しかし、この世界は分からないことだらけだなぁ〜! 屋台に置かれてる果物は見たことないものばかりだし、当然のように獣人も巷を歩いている」
周りを見ても前の世界とは全く違った世界観に、ここが僕の常識とはかけはなれたロマンのある世界であることを胸の奥でひっそりと留めた。




