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『まもの使い』、ゴッドハンドを志す~限界女医、異世界に召喚されたら何をする?~  作者: wag


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「あー、あなたがお姉さん?」


「そう、弟をありがとう」


お姉さん、と呼ばれた狐は嬉しそうに尻尾を振る。


『一時期攫ってましたとは言えない』


「ところであなた、私と話ができるのね。

 そんな人間初めて会ったわ」


「あ、やっぱいないんだ、こういう人間」


「儂はもう一人だけ会ったことがあるがな」


金色の鹿はのっそりとその場に身を伏せ、懐かしそうに言う。


「そ、その話、詳しく聞かせてくれないかな」


「もうずいぶん昔の話だよ」


「いいの。その人、女性?

 『まもの使い』って言ってなかった?」


「その通りだ、よく知っているではないか」


「実は私も『まもの使い』なんだけど、

 このジョブが稀だからどうしていいか分からなくて」


「・・・お主はどうしたいのだ、その力を使って」


鹿の離れた目がキーラを捉える。

すべてを見通すようなその視線から目が離せない。


「どうしたい、とは」


「そのままの意味じゃ。

 『まもの』の力を使い、何を望む」


キーラはどう誤魔化そうか迷ったが、迷った末、隠さないことにした。


「今、この国では魔物の大量発生が起きてる。

 これって人間にとっては良くないことなんでしょ?

 『まもの使い』の力があれば、人間と魔物、

 お互いを害するのを止められるんじゃないかと思って」


「・・・ふむ」


金色の鹿は黙り込んだ。


「『まもの』を支配するではなく、か」


「支配するのはまた別のお人というか、

 魔王とかいるんじゃないでしょうか・・・」


「まぁおるにはおるがな」


「いるんだ」


「ああ。いつか会ってみるといい。

 まあ、そのうち向こうから来るかもしれんが」


金色の鹿は面白そうに角を揺らすと、


「まあいい。

 そなたの願い、相分かった。

 ひとまずは仲間を増やす事じゃな」


「仲間」


「ああ、何やら前の『まもの使い』は言ったぞ、

 仲間を増やすと出来ることも増えると」


「そうなの?」


キーラはメニュー画面を開示すると、


「あ、あった、これか。仲間一覧」


まだ何も書かれていないその画面は、多分仲間が出来たらリストアップされていくんだろう。


「どうやって仲間を増やすの?」


「さあな、だが以前の者は儂に真名を寄越した。

 それを儂が受け取ったら、仲間認定されたらしい」


「真名・・・」


「ねえねえ」


九尾の狐が会話に入ってくる。


「良かったら私で試してみる?」


「え、いいの?」


「御礼もかねてね」


ゆらりと尻尾を揺らし、狐はキーラの前にお座りし直した。


「えーと・・・真名、ってことはフルネームかな。

 私は吉良 綾。

 仲間になってくれる?」


「喜んで、キラーヤ」


そのとき、キーラと狐の間に金色の糸が結びつき、消えた。


「なんか出来た気がする」


再度メニュー画面を開くと、「仲間一覧」に「九尾の狐」が追加されている。


「できた!ありがとう!」


「どういたしまして」


ひとしきりワイワイやっていると、



「お前ら、俺を置いてけぼりにしやがって・・・」


という呪詛が聞こえた。


「あ、ごめん、ルカリア。つい」


「まあ何となく分かったからいいけどよ。

 で、仲間ができたら何か良いことあんのか」


「出来ることが増えるらしいけど。

 ・・・あ、増えてる。会話有効範囲拡大、だって。

 やってみよう」


タッチすると、・・・特に何も変わらない。


「何か変わった?」


「いいえ、何も」


キーラと狐の間では何も変わらない。

しかし、


「俺のほうが変わった・・・

 聞こえる・・・魔物の声が・・・」


ルカリアが手を挙げていた。


「なるほどぉ・・・大体分かった・・・」


「では、儂も仲間にして貰おうかな」


金色の鹿が言う。


「いいの?」


「ああ、『まもの使い』の魔力はご馳走じゃ。

 儂もまた若返りそうじゃわ」


「じゃ、遠慮なく。

 私は吉良 綾。仲間になってくれる?」


「喜んで、キラーヤ」


鹿との間にまた金色の糸が結ばれ、消えた。


「さっきから何だその、キラーヤって」


「私の名前。吉良 綾っていうの」


「キーラじゃなかったのか」


「吉良はファミリーネーム。

 綾がファーストネーム、続けて吉良 綾」


「まどろっこしい、キラーヤでいいな」


「魔物たちもそう認識しているみたいね」


何でもいい、もう。

キーラでもキラーヤでも好きに呼んでくれ。


その後、


「僕も仲間にしてくれる?」と可愛いおねだりに抵抗することなくクダギツネも仲間にし、キラーヤとルカリアは森を後にしたのであった。



帰り道を歩きながら話す。



「しかし、やっぱ凄えんだな、

 『まもの使い』って」


「そうなの?」


「あの鹿は皇国の守り神だぞ」


「えぇ~・・・」



ーーーーーーーー


「久しぶりじゃのう、『まもの使い』とは」


「そうなのですね」


人間が去った後、鹿と狐は語り合う。


「ああ。

 前の彼女は可哀相な子じゃった。

 悲しい悲しい心の持ち主じゃった」


鹿は目を閉じ、ずいぶん遠い記憶になったその声を思い出す。



『まものの力を使って何をしたいか?

 ・・・復讐。これしか出て来ないわ』



黒い髪を怒りにたなびかせ、彼女はそう言った。



「彼女は傷つきすぎたのだ。

 すべての人間を恨むほどに」



目を閉じたまま、鹿は呟いた。

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