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『まもの使い』、ゴッドハンドを志す~限界女医、異世界に召喚されたら何をする?~  作者: wag


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6

「ほれ、腕試し」


図書館での座学から数日。

現在キーラは身の回りの旅支度(主に皇家が出資してお任せ状態)の最中である。


森行きを心底ビビり散らかしているキーラの前に、元『秘術の賢者』がひとつの獣かごを手に現れた。



「なにこれ」


「魔物だ」


見ると膝の高さほどの獣かごに、細長い身体をした毛並みの真っ白な生き物が入っている。


「クダギツネという。

 魔物だが弱い。その辺の動物と変わらない。 

 どうだ、何か感じるか」


キーラは突然の腕試しに若干引きながらも、「俺がいるから安心しろ」との言葉を信じてかごに近づいた。


『かわいい』


真っ白な細長い顔にはまん丸の黒い瞳がちょこんと付いていて、正直とても可愛らしい。オコジョの冬毛モードをびよーんと伸ばしたような。


『しかし、腕試しも何も。

 どうやって力を使えばいいやら』


しばらく睨み合ってみるものの、何も起こらない。

つぶらな瞳でじっとこちらを見られているだけだ。


「・・・試してみるか」


キーラは自分の衣服から、仕事用の電話を取りだした。


「おい、何するんだそれ」


「分かんないからテレフォンサポート」


「てれ・・・?なんて・・・?」


最後の通話履歴にリダイアルする。

キーラの思い違いでなければ、この電話の繋がる先は。


「はーい」


出た。あの時の女性の声だ。


「あ、あの、吉良ですが」


「連絡ありがとう、気づいてくれたのね」


「えーと、少々困っておりまして」


「力の使い方?」


「そう、いやその前に色々あるんですけど」


「それはまた追々ね。

 力の使い方だけど、まずは解放が必要ね。

 言うとおりやってみて。

 左手で右手首を掴んで」


電話を肩で挟み、言うとおりに掴む。


「はい、言って。『解放』」


「『解放』」



するとパキン、と耳元で音が鳴り、掴んだ右手首から、左手の指の間から漏れるように紫色の光がゆらゆら現れた。


「なにこれなにこれ」


「次、言って。『開示』」


「『開示』」


フォン、と音がしたかと思うと、目の前に液晶のような透明な画面が現れた。


「右手を掴んで開示、でメニュー画面表示よ」


「異世界、っていうかゲームだねぇ・・・!」


思わず笑ってしまうが、これがなかなかに有用情報ばかりである。



「えーっと?

 ジョブ:まもの使い

 熟練度:不可算、ってなんだこりゃ。

 あとはまだ空欄ばっかり。

 インベントリもあるんだ。

 

 で?あ、能力タブあった。

 能力も色々ありそうだけど、

 今解放してあるのは『会話』だけか。

 これ?常時展開ってやつ?」


「そうそう、それ。

 一度タッチしてみて」


該当の部位にそっと指先を押し当てると、耳の奥で今度は「カチリ」と音が聞こえる。


「あーなんか、スイッチ入ったみたい」


「でしょう?

 一度それで試してみてね」


「あ、あの。

 このテレフォンサポートはいつまで有効でしょうか。

 どうやら機体の充電は減ってないみたいですけど」


「いつまででも。

 でも多分、そんなに出番はないわよ?

 力をどう使うかはあなた次第だから」


「そうは言っても、

 サポートがあると無いとでは大違いですよ」


「そう?それならいつでも掛けてきて」


「で、一応伺いますけど、

 貴女は女神様でいいんですよね?」


「そうそう、私はネフェリ。

 私の愛する子らによろしくね」


じゃ、健闘を祈るわ、と言ってカチャンと通話は切れてしまう。



「・・・おい、何だ今の」


「テレフォンサポートですって」


「訳がわかんねえが、その道具が女神に通じるってのか」


「そうみたい、どうやら」


「なんだその聖遺物みたいな奴!」


貸せ、と言われて一緒にリダイアルするも、今度はコールも鳴らずに切られてしまった。


「これはお断りなんだなあ」


「俺とは喋りたくねえってか」」


「うーん、その辺の機微は分からないけど」



まぁとりあえず一歩は進んだと、

気合いを入れて再度クダギツネに向かい合う。


『展開した能力は会話。ってことは』


「ごめんね、巻き込んで。

 痛いことされなかった?」


キーラは努めて優しくクダギツネに語りかけた。


「・・・い、痛く、ない・・・けど」


「聞こえたぁ!」


か細い、あどけない声が聞こえ、

思わず『秘術の賢者』に振り返る。

が、どうやらクダギツネの声は彼には聞こえないらしい。


「あ、ごめん。

 けど、どうしたの?」


「お姉ちゃんが、僕を探してる。

 どこだ、どこだって探してる」


「お姉ちゃん?」


何か会話している風なのを嗅ぎ取った『秘術の賢者』が割り入ってくる。


「何だって?」


「この子のお姉さんがこの子を探してるって。

 あんた攫ってきたわけ?」


「いや、俺が森に入ったら1匹でひょろひょろ出てきた。

 ちょうどいいと思って捕まえた」


「それを攫ってきたっていうのよ!」


「あ、あの、僕、」


クダギツネが何か言いたそうだ。


「その人間につかまる前から、迷子だった・・・」



ーーーーー


という訳で、予定を前倒しして森にやってきた。

迷子の保護者捜しである。


「まぁ、サポートセンターのお陰で能力解放はできたしね」


「俺の機転は何だったんだよ」


「いやいや、森にいきなり行ったらパニックだったかも。

 機転には感謝してるよ」


「ならいいが・・・」


青い髪を無造作に触り、何やらもごもごしている。


「で、名前は何て言うの?」


「俺?俺はルカリア」


「あんたじゃないわよ、クダギツネのほう」


恥ずかしかったのか、その場でしゃがみ込む元『秘術の賢者』ことルカリアを横目にキーラは歩く。


「僕、名前はない」


「あら、じゃあどうやって探そうかしら」


獣かごから出したクダギツネは、器用にキーラの肩に巻き付いている。



「あんたのお姉ちゃん、お名前は?」


「わかんない・・・」


「じゃあ見た目は?」


「いっぱいふさふさの尻尾がある」


「ほぅ・・・」



なるほどわからん、とキーラは呟いた。

仕方がない、一か八か。


すう、とキーラは息を吸い込むと、


「おーい!誰かこの子のお姉さん知りませんかー!」


と大声を出した。


・・・だが、何も返答はない。


「おーい!迷子のクダギツネ預かってまーす!」


再度呼ぶと、ガサガサ、と茂みから音がして、大きな木の陰からのっそり大きな角が見えた。どうやら鹿のようだが、異様にデカい。トラックくらいデカい。あと全身金色。


・・・が、不思議と怖くはなかった。


「おお、こんにちは」


「こんにちは、お嬢さん。 

 迷子とはその子かい」


「そうなの。たくさん尻尾があるお姉さんを探してて」


「はは、それは九尾のことだな。

 待ちなさい」


金色の巨大鹿は空を仰ぐと、しばらくじっと動かなかった。


するとさわさわ、と周囲の草が一斉にざわめき出す。


「うん、こっちへ向かっておるわい」


首を下げた鹿がそう言うと、突風がキーラ達の周りを吹き荒れた。


「うわぁ!!」


思わずへっぴり腰で目をきつく閉じる。


ややあって風が止み、恐る恐る目を開けると、


「お姉ちゃん!」


自分の背丈以上ある大きな金色の狐が、たくさんの尻尾を揺らめかせながら「お座り」状態で待っていた。



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