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『まもの使い』、ゴッドハンドを志す~限界女医、異世界に召喚されたら何をする?~  作者: wag


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「あの、ルカリアはどうしてます?

 全然連絡ないんだけど」


キラーヤはダスティに、気になっていたことを質問してみる。

そうなのだ。あの薄情な秘術師、全然連絡してこない。


もしかしてキラーヤの所在が分からず途方にくれてやしないだろうか、とちょっと心配になったのである。


ダスティはふいと目をそらすと、一口サイズのプチシューをひとつ皿に乗せる。


「・・・ルカリアは先月からロインにいますよ。

 ロインで仕事をしたっきり、帰ってきません。

 あの話の検証のための資料を、ね」


ダスティはほら、あの聖女の、と言葉を濁して示唆してくる。


「え、さっきまでロインにいたのに!

 入れ違いかぁ。

 …聖女の力が人間へも害となるって話?」


「それです。

 キーラ様から見ても、聖女は危険だと思いますか」


贅沢にも執務のおやつにデザートワゴンを持ち込む権力者ダスティは、他にもキラーヤ用に小皿に甘味をとりわけ、フォークを添えて差し出した。


久しぶりの手の込んだ甘味を前に浮上する気分を隠すように、キラーヤは真面目な顔で意見を述べる。


「…そうですね、危険はあると思います。

 まぁ前回は容赦なくやりすぎたんですね。

 瘴気が毒だとしか思っていなければ、仕方ありませんが」


「その言い方だと、

 聖女は必ずしも危険ではないと聞こえますが」


「いや、基本的には劇物だと思います。

 できれば頼らないほうがいい。


 ただもし今後召喚してしまうことがあれば、

 瘴気の働きも元に、能力について熟練すれば。

 丁度良い具合、っていうのがあるかも」


「…あなたが能力を使いこなす修行をするように、ですか」


「はい、その通りです」


キラーヤはこの大臣たちの後押しのもと、魔物の管理をすべく修行をさせてもらっている。すぐにでも成果を出して欲しいだろうに、太っ腹な待遇である。

 

「そうなると、

 前回の聖女はずいぶん事を急きましたね」


「確かに。

 魔物曰く、術自体は超強力だったらしいので、

 術の強度だけに注目して修行したのかな」


「そういった資料が、

 少しでも残っていれば良かったのだが」


ダスティは深いため息をつき、話題を逸らすように言った。


「ところで、今日の宿はもう決まりましたか。

 今日はもう遅い時間ですが、

 明日には皇帝らにもお会いされたほうが良い」


「まぁ、できれば」


「王城に部屋を用意させますか?」


「あぁ、いえ、不要です。

 皇居の森に壺…いや、泊まる用意がありますので」


「なにも野営せずとも!」


「いやいや、大丈夫です。

 森の中のほうが都合がいいもので」


ダスティは何一つ分からないという顔をし、


「なるほど…心は魔物と化しましたか」


と可哀相な者を見る目をした。


「まだ人間です!!かろうじて!!」


かろうじて、とか思っちゃうあたりが重傷だよな、とキラーヤは自嘲した。



ーーーーーーーー


「進捗は順調か、キーラ殿」


翌日、皇帝私室にて。


キーラはディアドラを連れ、皇帝に謁見していた。

ただし公的ではなく、あくまで私的な面会の体である。

皇帝が座るソファセットの後ろにはダスティも立っている。


「いえ、まだ道半ばです。

 お待たせして申し訳なく」


「いいや、都合を押しつけたのはこちらだ。

 協力感謝する。そちらは?」


「ディアドラ・ヨークと申します」


「…その名、聞き覚えがある。

 そなたもしや、『最強の学者』ヨーク教授か」


「恐縮です。

 魔物生態研究所主任教授を拝命しております」


「キーラ殿、彼女を師としたか」


「ええ、魔物を知らずに魔物を制せるとは思えませんので」



やはりディアドラ、国内では皇帝に轟くほどブイブイ言わせていたらしい。



「なるほど興味深い。

 ・・・ところでキーラ殿。

 少し話しておかねばならんことがある」



皇帝は背後に控えるダスティ大臣と顔を合わせてひとつ頷き、座っていたソファセットから身を乗り出した。両膝に肘をつき手を組み、それを見つめながらぽつりと呟く。



「…すまない、ルカリアはもう、

 キーラ殿のサポートに出せんだろう」



ぽつりと絞り出したように出した言葉に、キラーヤはあっけに取られた。


「…ルカリアが?何かありましたか」


皇帝は黙り込む。何かを言いかけては留まるその様子に、キラーヤの胸がざわつき始めた。


「陛下。仰ってください。

 ルカリアに何かありましたか」


言葉にもつい焦りが乗る。



「キーラ殿がルカリアと離れて、

 どれくらいになる」


「・・・2ヶ月と少し、ですが」


「・・・そうか。

 その間はキーラ殿は何を?」


「修行です。ダンジョン内に籠もって修行を」


「ダンジョン内か・・・

 どうりで見つからんはずだ」


はぁ、と深いため息をついた皇帝は、強ばった眉間を指で揉んでうなだれる。


「探してくださっていたのですか」


「いや、あまり貴殿にとっていい話ではない。

 ルカリアという監視抜きでは、

 貴殿を野放しにしておくのは我々としても恐ろしい。

 代わりの監視を放っただけだ」


「なるほど」


「ルカリアから貴殿と別行動を取ると聞き、

 すぐに貴殿の足取りを追わせた。

 だがどこからかぷっつり切れてしまってな」


「すみません、

 色々とイレギュラーな移動手段も使いましたから」


「ちなみに八本脚の馬に乗っていたというのは、

 本当のことか?」


「それは本当です。スレイプニルといいます」


「ほう、それは魔物使いの力を使ったのか」


「まぁ、そんな感じですね」


「・・・まぁよい。

 貴殿の修行の成果は出ているようだしな」


「私の話は良いとして、

 ルカリアはどうしているのです」



キラーヤは焦れ、皇帝相手にやや強引に話を戻した。

何だか嫌な胸騒ぎが止まらず、飲んだ茶の温かい塊が胸をなぞっていくのがやたら遅く感じる。



「…ロインに行った、という話は聞いたか」

 

「ええ、ダスティ大臣より」


「話さねばならん。

 ルカリアが皇居に戻ってから今まで、

 何が起こったか」



そうして語られたのは、

キラーヤがのんきにダンジョンに籠もっている間、

ルカリアや周囲に起こった出来事だった。





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