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『まもの使い』、ゴッドハンドを志す~限界女医、異世界に召喚されたら何をする?~  作者: wag


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習得した技能を存分に練習し、キラーヤたちがダンジョンから這い出た時、ダンジョン侵入からいったいどれくらい経っていたかというと。


「2ヶ月かぁ、けっこうしっかり経ったなー・・・」


久しぶりの本物の太陽の眩しさに目を細めるキラーヤ。


「相変わらず、ダンジョン内にいると時間経過を忘れます」


しばらくは文化的な生活がしたいですね、と笑うディアドラ。


そう、修行期間はなんと2ヶ月にも及んでいた。

食糧や水はダンジョン内に豊富にあるとはいえ、なかなかの期間だ。

言い方を変えれば、たった2ヶ月で大きく自身の力を向上させたとも言える。


ダンジョンすぐそばの魔物研究所内で茶を飲みながら、

キラーヤはだらりと欲求を口にする。


「買い物いきたーい!!

 新しい服がほしーい!!遊びたーい!!」


「致しましょう致しましょう」



・・・というわけで、久々にロインの街にやってきた訳であるが。



「どう?見える?」


『見える見える!!すごーい! 

 あ、そのリボン買って!』


「了解」



まずは長らく放置したアラクネの機嫌を取るべく、約束通り服飾店にやってきた。

流行の服を一通り見て、どういう服が欲しいか打ち合わせた後、早速生地や装飾の買い物である。生地は買うが、アラクネは糸については自身の糸を染めて使いたいらしく、染料もいくつか見繕った。


「ずいぶん買ったねえ」


実はダンジョン内での収穫物を売ったキラーヤ、現在懐はほっかほかである。今後はジュエルドラゴンの宝魔石を売ればいいし、財布の紐はゆるゆるだ。


『腕が鳴るわー!

 あ、でも、採寸とかどうする?

 これからこっちに帰ってくるの?』


「君をこっちに召喚しちゃえば簡単だけど・・・

 試してみたい方法があるのよね」


そう言って一度壺に戻ると、買った商品の中から一つ、おまけでもらった小さなボタンセットを手に取った。


「さて。アラクネ-?」


『はーい!』


「ちょっとそこでストップね-!」


『はーい?』


魔力を篭め、「転送!」と呟くと、掌の中からボタンが消える。


「行ったー?」


『ん?・・・わわ、来た!!

 出てきた、ボタン!』


「大丈夫そうね!

 じゃちょっと少しずつ送るね-!」


そう、これはダンジョン内で獲得した「転送・転移」能力のテストである。

ゴーストタイプの魔物の階層で、「あれ?あの子さっき別の場所にいたな・・・」ということが相次ぎ、ディアドラ曰く「行ったことがある場所なら転移できるんでしょうねえ」との意見があり。


しめしめと能力を拝借して試してみたところ、これがなかなか便利そうな能力であったのだ。

「全部行ったかな?」


『多分大丈夫、たくさんありがとう!』


「じゃ、私も行きまーす!!」


『え?』



アラクネと繋がったまま、キラーヤは魔力で全身を包むイメージをする。


「座標、アラクネ!行きます、転移!」


ぴょんっと軽くその場でジャンプすると、そのまま空中に引っ張られるような感覚になる。ぐらりと視界が揺れ、少し揺らめきながら着地した目の前には、


「到着!」


驚いた顔のアラクネが座り込んでいた。




ーー

「さぁ、じゃああとはよろしくね」


「任せて!

 できたら念話で連絡するね!」



アラクネの棲まい(なんとアトリエのように整えられた立派な木製の小屋だった)で採寸を済ませ、あれやこれやと生地を身体に当てて遊んだあと、久々の森を散策する。


2ヶ月前は何とも思わなかったが、瘴気を利用するために向き合い続けた結果、なんとなく「あぁ、これが瘴気か」みたいなものが分かるようになってきた。分かりやすく色がついて見えるわけではないが、冷気というか重みというか、なんとなく空気が違うのが分かるのだ。

その目で見ると確かに、この森は瘴気が強い。

そしてさらに瘴気が濃い方、濃い方へと進んでいくと、やっぱりあの湖に辿り着いた。



「おーい、シータさんやーい」


浮島に向かって呼びかけると、すぐにふわふわと蜉蝣が飛んでくる。


「なんだお前、もう帰ってきたのか」


「いや、ちょっと新しい技能を試しにね。

 ところでどう?若木の具合は」


「ああ、目に見えて成長を始めた。

 もうそろそろ、私が森を出てもよい頃かと思っていた」


「本当?良かったねえ」


「お前のほうは身体に負担はないか?」


「うん、今のところ大丈夫そう」


「ならいい。

 困ったことがあれば呼べ」


「うん、またね。

 じゃあ、私はもう戻るけど、

 ちょっとこの辺りの瘴気借りるね。

 じゃ」


キラーヤはそう言うと、周囲の瘴気を自らの身体に集めて魔力に変換し、再転移に必要な分を補給する。


「すごい量。

 なるほど、こりゃ瘴気溜まりにいると身体が楽かも」


もはや人間より魔物のほうが近しい存在になってきたぞ、とキラーヤは自嘲した。


「さて、座標ディアドラ、転移!」


またぴょん、と軽く飛ぶと、


「ただいま!」


壺の家に無事戻ってきたのであった。




森の浮島、蜉蝣を通してキラーヤと会話していたシータは驚きに目を瞬かせる。


「あいつ・・・今転移したか?

 たったこの期間で?・・・化け物か」


ぶるりと身を震わせ、キラーヤが消えたその地点を見つめるのだった。




ーーーーーー


話は少し遡る。



「資料が来ない、だと?」


皇宮にあるダスティ大臣の執務室。

集まった賢者たちは、トライツの発言に眉をひそめた。


「はい、そのとおりです。

 ロインの図書館内から取り寄せる手はずの、

 過去の収穫量の資料なのですが。

 司書が呼び寄せても出てこないそうでして」


「出てこない・・・」


皇女はあまり良く分かっていないのか、怪訝な顔をしている。


「遠い過去の記録は、

 閲覧が極端に少ないのと保護の観点から、

 最下層に近いところに保存されています。


 が、何日経っても出てこないそうです」


「どういうことだ?」


ダスティが問う。


「考えられる可能性はいくつか。

 消失しているか、朽ちているか、

 外に出られないように秘術で縛られているか。

 

 ・・・どのパターンも望ましくはないですね」


「どうする?ルカリア」


ダスティに問いかけられたルカリアは、何度か確かめるように頷くと、


「・・・ロインに行くほかあるまい。

 ダンジョンに潜る」


と言い切った。


「僕もそれしかないと思います」


トライツも同意する。


「ただ、・・・ただ」


ルカリアが何かを言いかけて逡巡する。

その様子を見て、皇女ナディーンは重く静かな口調で語りかける。


「ルカリアあなた、最近体調が優れないのでしょう」


ナディーンは「予見の賢者」、占術師である。

ルカリアの纏うものが、この皇宮に戻ってきてからというもの、精彩を欠いているのには気付いていた。


ルカリアは重く頷く。


「その通りだ。

 原因は分からないが、少しな」


「回復士のところには行ったの?」


「ああ。回復術を何度かかけて貰ったが、

 あまり効果はなさそうだ。

 

 ・・・だが、ロインには俺が行こう。

 秘術が絡んでいる可能性があるなら、

 俺が行った方がいい」


トライツはルカリアの顔色を窺いながらも、


「・・・僕も、ルカリアさんが適任だと思います。

 僕も一緒に行きますので」


「それは心強いな」



こうして、ルカリアとトライツはロインに向けて旅立ったのだった。





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