第六話 白崎図書館からの封書
『先週〇日夜、アルバイト帰りに立ち寄ったコンビニを最後に消息を絶った男性。高梨悠真さんの事件ですが――』
テレビから流れてくる行方不明者のニュースに眉を顰める。
今月で三人目。少し多すぎる気がした。
男性アナウンサーが無機質な声音で告げるニュースを聞き流しながら、私はテレビを消した。
これ以上聞きたくなかったから。
ブツン――と切れた画面は光を失い、代わりにコーヒーを持つ私の姿が映った。
寝起きのまま、寝癖のついた髪。少し恥ずかしくなりながらも、どうせ一人だからと視線を逸らした。
「はぁー怖い怖い。物騒な世の中だね」
ソファへ腰掛け、スマホを眺める。
こちらでも行方不明事件は話題だ。
しかしこちらでは夜逃げだのなんだのと面白おかしく騒がれていて、少しだけ気分が悪い。
もう少し真剣に事件を見られないのだろうか。
すぐさま記事から目を逸らし、動画サイトを立ち上げる。
適当な動画を流しながらコーヒーを啜った。
「……にがっ」
ざらりとした粉の味が舌に残る。いつもと同じように作ったはずなのに、寝ぼけていたのか失敗してしまったようだ。
鼻の奥に苦味と焦げ臭さが広がる。まるで灰でも舐めたような。――もちろん舐めたことなんてないから想像だけど。
もったいないが、これを飲む気にはなれない。
残りはそっとテーブルの上へと置いた。
小さく息を吐き、ソファへ体重を預ける。
――ピーン……ポーン、と少し間延びしたような、おかしな音でインターホンが鳴り来客を告げた。
荷物が届く予定も、友達が遊びにくる予定もない。そもそもこんな朝早くに一体誰が来たと?
不思議に思いながらモニターを覗き込む。画面にはノイズが走り、ブツブツと点いたり消えたり。
その最中に、黒い何かが一瞬写り込んだ気がしたけど、一瞬すぎて何もわからない。
「もしかして、壊れた? 最悪なんだけど……」
コーヒーの失敗に続きインターホンの故障。
朝からツイてない。
私は壊れたインターホンを無視し、顔を洗いに洗面所へと向かった。
「ん?」
その途中だ。視界の端に白いものが映った。
良く見てみると、身に覚えのない白封筒。しかも時代錯誤にも赤い蝋で封までしてあるものだった。
「なにこれ?」
こんなもの、さっきまではなかったはずなのに。
疑問に思ったその刹那。ふと、封筒からさっき嗅いだ苦い臭いがした――気がする。




