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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵


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080 絨毯爆撃の迷路、壁上の疾走

 草原を振り返ると、まだ他校の機人が来る気配はなかった。これなら、ゆっくりと進むことができる。


 俺は疑似迷路に入り、静かに走り出した。


 巨大な壁が乱立する迷路の中は先が見えず、進むべき道が分からない。それに右へ左へと何度も曲がるため、方向感覚もおかしくなってきた。


 ゴールに近づいているのか、それとも遠のいているのか分からず、舌打ちをした瞬間、足元に影が落ちた。


 見上げると、複数の魔法が放物線を描きながら、迷路に向かって飛んでくる。狙いは俺だろうが、正確な場所が分からず、方向はバラバラだ。


 だが、運悪く巨大な火球が前方に着弾して道を塞いだ。耳を澄ませると、あちこちで轟音が上がっている。


 他の道も塞がれ、疑似迷路はさらに複雑となる。闇雲に放った魔法だと思ったが、俺を足止めする最善の一手だと気づかされた。


 戦術の高さに舌を巻く。ほとんどの選手が三年生だと思うが、即座にこのような作戦を思いつくとは、高学年の授業内容に興味が湧いた。


 俺は足を止め、腕を組むと壁に背を預けて、魔力消費を抑えるため、一部機能を停止した。





 他校の機人たちが一斉に疑似迷路に魔法を撃った。それは絨毯爆撃のように広範囲に放たれた。


 ソウガがどこにいるのか分からないため、その戦術は正しい。だが、全員が示し合わせたかのように、違う場所を狙った。偶然にしては都合が良過ぎる。


 ――どうも、きな臭い。陰謀の匂いがする。


 私は眉をひそめ、唇を噛むと、ハンナの声が届く。


「他校の選手たちは、よほどソウガが怖いようですね。あそこまでして足止めを謀るとは――」


 たしかにバックアタック・マッチの決勝――テッペイさんとの戦いを見れば、彼を警戒するのは分かる。


 だが、さっきの妨害は別だ。個人の選手を警戒して行う範疇を超えている。全学園の魔導機人が魔法を撃ったのだ。


 誰が何を企んでいるのか分からないが、嫌な予感がする。自然と手を握りしめた。そのとき、リュウゾウ先生が口を開いた。


「ハンナの言うことは分かるが、第二の障害――黒鉄の森と違い、障害は残り二つだ。ここはソウガを妨害するより、四位以内に入ることを優先したほうがいいはずだ。どうも胡散臭いな」


 さすがリュウゾウ先生は気づいているようだ。先生と目が合い、尋ねられる。


「ナツメはどう思う。ここで先頭のソウガを足止めする意味があると思うか? わざわざ通路を塞いで、自分たちも不利になるようなことまでして」


 先生の言葉に、ハンナもようやく他校の動きが異常だと気づく。私は肩をすくめた。


「意味はあると思うよ。例えば決勝前に彼の実力を確かめたいとかね。あと、通路を複雑にすることで不利にはならない。条件は全員が同じ。それよりも、他校同士であれほどの連携ができるほうが気になるかな」


 私の指摘に先生とハンナは息を呑む。そんな二人を横目に、足を止めて壁に背を預けるソウガを見つめる。その意図は読めない。


 だが、彼もかなり警戒していることは分かった。


 やがて後続の機人たちは迷路に突入し、狭い通路を、先ほどの連携が嘘だったかのように機体をぶつけ合いながら走り出した。


 機人同士が衝突する音は観客席まで届いた。そのとき、止まっていた武蔵零式の目が青く光った。





 他校同士の連携――ナツメに指摘され、ようやく違和感の正体に気づかされた。


 確かに先ほどの妨害は連携されていた。狙った場所も重なっておらず、放たれたタイミングも同じ――完璧な一斉掃射だった。


 ついハンナに視線を向ける。彼女もナツメが何を警戒しているのか理解したのか、顔を青ざめさせていた。


 とはいえ、誰が何を目的にソウガを狙っているのか分からず、対策の打ちようがない。焦りは禁物だ。しばらくは注意深く静観するしかない。


 気持ちを切り替え、競技場に視線を向けると、ソウガが動き始めた。


 再び後続の機人が魔法を放つかと心配した。だが、疑似迷路は狭く、壁は高い。砲身の角度をほぼ垂直にしなければ壁は越えられず、ソウガには届かない。


 何より、さすがにレースも終盤に差しかかっており、選手たちは妨害よりも順位を上げることを優先し、少しでも先に進もうと機体をぶつけ合っていた。


 ソウガの狙いが分かり、笑みが零れる。これなら魔法の妨害を気にする必要はない。しかし、他の機人より走行速度が遅い武蔵零式はいずれ追いつかれる。


 結局、他校の選手たちの妨害は、その目的を見事に果たした。誰が考えたのか分からないが、絶妙な一手だと言わざるを得ない。


 思わず歯ぎしりする――そのとき、武蔵零式が大きく膝を曲げて腰を落とした。


 直後、地面が爆発し、土煙が舞った。視線を上げると、宙に浮くソウガの姿が目に映る。その光景に観客は呆然とした。


 機体同士が衝突し、こすれ合う音だけが競技場に響き渡る中、武蔵零式は壁の上に降り立つと、周囲を見渡した。


 やがてゴールを見つけると、狭い通路をひしめき合い走る機人を見下ろし、壁の上を颯爽と走り出した。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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