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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵


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071 無音の一歩、轟音の一撃

 ソウガの身体能力に驚愕する。見せかけの踏みつけで後ろに下がらせ、そこから踏み込みへと変化させ、刺突を放った。


 すべてが計算通りだった。だが、あいつは不十分な体勢から後方へ高速移動した。機人の性能もあるが、瞬時に回避へ転ずる反射神経に目を見開く。


 壁に激突したソウガは起き上がると、機体と肉体――両方を確かめるように背筋を伸ばす。小型機人ならではの動きに観客はざわつく。


 思わず俺も操縦桿から手を離し、肩を回してしまった。


 やがて歩き始めるソウガ。その姿は自然すぎた。かすかな金属の擦れる音すら聞こえない。漆黒の小型機人は足音すら立てない。


 すでに俺の間合いに入っている。だが、ソウガは歩みを止めない。ゆっくりと近づいてくる。


 戦いを諦めたわけではない。そう信じて盾を振り下ろした。


 大気を裂いて迫る盾を、半身になって躱す。飛び散る破片がソウガに当たるが、気にした様子はない。


 そのままくるりと回転し、再び歩き始める。余裕を見せるその動きに口角を上げ、わずかに腰を落として機体を安定させる。


 次の瞬間、両手の盾を連続で突き出した。


 凄まじい速度で繰り出される連撃。それをソウガは最小限の動きで躱し始める。


 頭上から迫る刺突には円を描くように回避して裏へ回り込み、横薙ぎには上体が地面に触れるほど低くして躱す。


 俺の機人――蘆花三式の間合いの内側三メートル。そこに留まり避け続ける。理由は分からない。だが、時間が経つにつれ、あいつの動きが洗練されていく。


 すでに十分は過ぎた。いまだ近づくことなく回避している。操縦桿を握る手が汗ばむ。ふと残量を見やる。


 ――まだ魔力は十分にある。魔法を使っていない、当然だ。


 だが、俺の集中力のほうが切れそうだ。気力を振り絞り、モニターに映るソウガを睨み、操縦桿を握り込む。


 鋭い斬撃――だが、ぎりぎりで躱される。短く息を吐き、一度仕切り直そうと後ろに下がろうとした瞬間――


 ()(たび)、ソウガが消えた。今度は、足音もなかった。





 純白の機人――蘆花三式の間合いに入ると盾が迫る。ぎりぎりで躱し、近づくと足を止める。


 盾からの攻撃に適した距離だ。もう少し近づくと足が届き、踏みつけられる。それは俺が望む鍛錬(・・)にはならない。


 盾だけに集中して避ける。右直突、左上突、右横薙ぎ――すべてを最小限の動きで躱し続ける。


 次第に感覚が研ぎ澄まされていく。外装を通して大気の流れが伝わってくる感覚に、思わず笑みがこぼれる。


 結局、小型機人と呼んでいるが、操縦技術なんてなかった。武蔵零式を装着しても、習得した武術を再現できることが重要だと気づいた。


 ――極めるのは技術ではなく感覚。


 父との鍛錬を思い出しながら、動きを再現していく。それは機人の性能と相まって、想像を絶する技へと昇華されていく。


 テッペイの攻撃を躱しながら、モニターに映る魔力残量を確認する。


 『84/115』


 その数値に口角が上がる。通常稼働で消費する魔力は三分で『1』。すでに十分は経過している。多く見積もっても、本来なら『4』は減る。


 だが、実際に消費したのは『6』。あれだけ激しく動いても、通常稼働より僅かに、『2』多いだけだった。つい口元が緩んでしまう。


 武術を取り込むことで武蔵零式は、より最適に動かすことができる。そして、それは魔力の節約にも繋がる。そう確信した俺は、純白の機人を見やる。


 その瞬間、電光石火の刺突が迫る。


 瞬時に父の技を思い出し、タイミングを合わせた掌底突きで軌道をずらして回避する。


 ふと、気づく。かすかに盾が戻る動きが鈍い。操縦に隙がある。


 好機と判断し、高速移動に入る。今までとは違い、武術を取り入れる。腰を落とし、つま先に力を入れる。


 父から教わった『縮地』の構えになると、一気に駆け出した。


 無音の高速移動。地面に接するのはつま先だけ。踏み込むのではなく、地面を叩くように駆け抜け、一瞬で背後に回り込む。


 停止する瞬間――つま先を立て、横に回転しながら勢いを殺して静かに止まる。


 ――誰も気づいていない。


 静寂が落ちる中、がら空きの背中に跳び蹴りを放った。純白の機人――蘆花三式は振り向く気配はない。


 勝利を確信した瞬間、影が落ちた。


 顔を上げると、猛然と振り下ろされる盾。機人の可動域は人間を超える。後ろを向いたまま、肩だけが勢いよく回転する。


 大気を裂き、迫る盾を前に油断していた俺は、跳び蹴りを解除することができなかった。


 ガンッ――凄まじい激突音が耳を貫き、遅れて凄まじい衝撃が全身を襲った。


 気づくと地面に叩きつけられていた。朦朧とする意識の中で、俺だけは『全身が有効打』と冷たく理解する。


 ――もう一手、読むべきだった。


 そのとき、ノイズが混じるアナウンスが耳に届く。


<し、試合終了! この勝負は、済聖光学園の勝利です! そして、バックアタック・マッチの優勝者はテッペイ・アリタス選手です!>


 その言葉を聞き終えると、俺は意識を手放した。

ここまで読んでくださってありがとうございます。

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