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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵


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051 学園総体を前に(2)

 ソウガの登校をぼんやり待っていると、校庭がにわかにざわめき始めた。


 窓から見下ろすと、ちょうどソウガが王家の魔導車から降りてきた。その後をヤクモ君も続く。


 最初は、ソウガと王家の関係について憶測を交わしていた生徒たちも、二人が並ぶと口を閉ざした。


 一部の女子だけは、黒髪に金色の瞳が輝くソウガと、白銀の髪をなびかせるヤクモ君を見て、甘い吐息を漏らしていた。


 髪を短く切り揃え、精悍な顔立ちを隠さなくなったソウガは、鍛え抜かれた体と相まって、密かに女子たちから人気を集めている。


 眉目秀麗なヤクモ君が隣に立つと、黒と白のコントラストが際立ち、互いを一層引き立てた。


 二人が校庭を歩き出すと、人垣は左右に分かれて道を作った。


 こめかみを押さえ、困惑の表情を浮かべるソウガ。おそらく、王家の車での登校という軽率さを悔いている。


 ヤクモ君の狙いがどこにあるのかは不明だが、王家はソウガを取り込もうとしている。


 ――でなければ、私用とはいえ、王家の魔導車に王太子との同席を許すはずがない。執事の態度を見ても明らかだった。


 ソウガとヤクモ君が好奇の視線にさらされる。私は深くため息をつき、当主であり父のジュンイチ・ピクセルへ報告するため、黒いパネル<回覧板>を取り出す。


 素早く今朝の出来事をまとめ、王家の動向に注意することを入力する。


<警戒:王家動向/総体当日 観覧席配置>


 念のため内容を再確認し、配下の生徒に手渡した。彼女には悪いが、今日は休みにして関係各所に回ってもらう。


 彼女は一礼して、すぐに教室を出る。入れ違いで二人が入ってきた。一気に教室が華やいだ。


 ――ソウガの知らないところで、彼はクラスの中心人物の一人になっていた。そんな彼がヤクモ君と一緒に現れれば、こうもなる。かすかに嫉妬がよぎる。


 ため息を堪え、笑顔で取り繕い、席を立って二人に手を振って挨拶した。



――――――――――――



「ふーん、なるほどね。そんな話だったんだ。よかったね、ソウガ。少しだけど、武光七翼に近づけて。これも私が決闘を提案したおかげかな」


 昼休み。いつも通りソウガとハンナの三人で弁当を食べて会話する。もちろん話題はヤクモ君との登校のことだ。


 彼の話を聞き、少しだけ安心した。ヤクモ君個人の用件で、王家と直接の関与はなかった。


 ただし、コイズミ陛下が興味を持たれている件は気になる。とはいえ、ここから先は大人たちに任せるしかない。


 権力も実権もない子どもが介入する余地はなさそうだ。


 気持ちを切り替え、話題を変える。まずは学園総体の競技について。ソウガからタコさんウインナーをもらって喜ぶハンナを見やる。


 視線に気づいた彼女は、大事そうにウインナーを弁当の隅に置き、咳払いをして、ソウガに語りかけた。


「ソウガ、総体の競技について、ナツメさんと相談して決めたわ。これがその競技よ」


 ハンナは一枚のメモをすっと差し出した。ソウガはわずかに警戒しながらも礼を述べて受け取り、すぐに確認する。


 次の瞬間、彼は目を見開き、ハンナと私を交互に見た。困惑しているようだ。紙にはたった三つしか書いていない。優勝を目指す彼には申し訳ない。


 だけど、実質魔法が使えない機人では、出場できる競技は限られている。しかも、いまだ謎が多い機体だ。無理はさせられない。


 説明しようと口を開きかけたとき、梅雨の切れ間を裂く雷が轟く。窓を衝く閃光が、私たちを照らし、静寂を焦がした。


 嫌な予感が胸をかすめ、思わず開きかけた口を閉じると、メモに視線を落とすソウガをじっと見つめた。

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