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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵


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038 所有と婚約

リライトしました。<(_ _)>

魔女の烙印を押された聖女は、異世界で魔法少女の夢をみる

https://ncode.syosetu.com/n8033lh/

 ソウガの言葉に原初の機人が初めて反応した。『目』が光り、各部が開放され、その中身をさらけ出した。


 そこには、計器のような盤面がびっしりと備え付けられていた。明らかに、魔導の技術が詰め込まれた機人を思わせる。


 ――いや、機人を超えたオーバーテクノロジーと言ったほうがいい。


 機人工学の権威であるリュウゾウ先生すら言葉を失っている。動力機関が稼働しているのか、微細な振動が伝わってくる。


 立ち尽くすしかない私たちをよそに、ソウガはまじまじと内部を観察すると、胸部の窪みに手をかざした。


 刹那、計器が光り始め、関節から微光が漏れ出す。背の排気口からは、熱を帯びた空気が吐き出された。


 目の前の光景に理解が追いつかない。息を忘れる。そんな中、彼はゆっくりと漆黒の機人に近づき、背を向け、倒れ込むように身を預けた。


 次の瞬間、ソウガが機人に飲み込まれる。各部はすべて閉じられ、どこにも彼が見える隙間はなかった。


 唖然とする私たちを無視して、プレートアーマーよりもいかつい機人が動き出した。とてつもない重量が床を軋ませる。


 相手がソウガということも忘れ、とっさに魔法を発動しそうになる。


 けれど、すぐにリュウゾウ先生が間に割って入る。ふと周囲を見渡すと、全員が緊張で顔をこわばらせ、手をかざしていた。


 ただ一歩を踏み出しただけで、圧倒的な存在感を放った。緊張が満ちる中、リュウゾウ先生が声をかける。


「おい、ソウガ、大丈夫か? 俺の声は聞こえるか」


 原初の機人は歩みを止めて振り返る。青く発光する目がこちらを見据えたかと思うと、かすかにノイズが混じった音声が届く。


「はい、先生、聞こえます。こっちの声はどうですか?」


 やがてエコーが消え、声色がソウガだと分かって安堵する。私たちの緊張をよそにどこか気楽に話す彼に、かすかな怒りを覚える。


 一矢報いてやろうと、笑顔を作って、若干の恐怖を覆い隠して機人に近づいた。


「へえ~、起動するとなかなか格好いいね。で、これで原初の機人の所有者は、名実ともに君になったね。間違いなく大勢の貴族や豪族――ひょっとしたら、王家も君を取り囲もうとするかもね」


 表情がないはずの機人が、目に見えて動揺する。排気口から漏れる空気の温度がわずかに下がった。


 視界の端に、眉を下げるヤクモ君が入るが無視し、微細な振動を繰り返す機人を見やる。


 その姿にほくそ笑む。少しだけ溜飲が下がり、気分も落ち着き、言葉を重ねる。


「やっぱり、このままってわけにはいかないよね。じゃあ、王家にも発言力を持ち、中立を維持する我がピクセル家との婚約を進めさせてもらうから。明日には王都内に知れ渡ると思うよ。よろしくね、ダーリン♪」


 最初に反応したのはハンナだった。彼女は眉を上げ、射すくめるような視線を向けてくる。だが、軽くいなして無視する。


 突然、起動したばかりの原初の機人が停止し、膝から崩れ落ちる。


 背の排気口から一気に空気が吐き出される。直後、油圧が抜けて各部が開放され、ソウガが吐き出された。


 床に手をつき蹲る彼に視線を落とす。一瞬で室内が陰り、外を見ると五月雨が降り始めていた。


 音もなく湿気を運んでいた風が、一瞬にして重さを帯びる。


 太い銀の針と化した雨粒は、開け放たれた窓枠を越えて、床とソウガを無慈悲に打ちつけていた。

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