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方言だけ最強。機人×魔法の学園で逆転  作者: 黒鍵


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101/107

101 二割の赤

 最後の障害――バトルフィールドに入ると、俺はクラウチングスタートの姿勢になった。


 直後、武蔵零式が超高速移動を開始し、景色が線となって後ろへ流れる。だが、モニター映像はすぐ補正され――前方をはっきりと映す。


 そのときだった。突然、分厚い壁にぶつかったような衝撃を受ける。目の前には何もない。だが、確かに受けた(・・・)。混乱した俺は、大きく体勢を崩して倒れた。


 地面に突っ伏したまま、俺は懸命に顔を上げる。視界の先には、魔導砲から吹き出る突風を推進力に変えて走る紺碧の機人が見えた。


 まさかここで風魔法で攻撃してくるとは思わなかった。火花を散らしながら滑る俺は、急いで起き上がろうとする。


 だが、途轍もない推進力がかかり、なかなか止まらない。ならば、いっそ勢いに任せて地面を転がる。


 推進力を回転して逃がし、勢いを殺す。やがて速度が落ち始めると、俺は起き上がり、シンヤさんを探す。


 そのとき、モニターの左半分に、猛烈な風に押されてよろめきながら走る紺碧の機人が映し出された。


 慌てて振り返ると、すぐにシンヤさんの機人を捉えた。だが、世界がひどく歪んで見える。


 武蔵零式の衝撃吸収も、俺の三半規管には無意味だったようだ。前後左右の概念が消失し、どろどろに景色が溶けて混ざり合っている。


 首を振り、懸命に視界の回復を試みる。しかし、その間も紺碧の機人はゴールへ向かっていく。


 このままでは負けてしまう。焦る俺は、モニターに映る魔力残量を見る。数字が揺れてぼやけるが、何とか読み取る。


 『45/125』――すでに魔力残量は半分を切っていた。


 第五の障害に突入する前が『72/125』。超高速移動で『5』。なら派手な転倒で機体制御と衝撃吸収に魔力を使ったのだろう。


 亜音速からの転倒で軽い脳震盪で済んだことを考えると、納得するしかない。シンヤさんのほうが(うわ)()だった。


 このまま何もせず負けるわけにはいかない。魔力残量が『45』なら、ぎりぎり五大機能『火』を使える。


 俺が使える魔力は『25』。魔力残量が『20』を割ると、武蔵零式の安全装置が起動して、強制排出される。


 すぐに魔力を込めて右手をかざし、シンヤさんの機体に向けて五大機能『火』を発動させる。


「あつか――けん!」


 起動スペルを叫び、二つの手甲から蒼炎の刃を発現させる。だが、すぐに俺は右手に魔力と意識を集中し、左手の魔法剣を消した。


 その瞬間、手甲から伸びる刃は激しく煌めき、より実体を増す。もはや質量を持った魔力の塊となった『火』の魔法剣――。


 モニター右下には『35/125』。やはり起動で『10』消費した。そして今も一秒に『1』ずつ、魔力残量が減り続けている。


 昨日、起動したときは三十秒に『1』だった。これから俺が試そうとすることが、いかに魔力を消費するか分かる。


 息を吸い込み、狙いを定める。瞳孔に合わせてモニターがズームされ、紺碧の機人をはっきりと映し出した。


 その時間はわずか三秒。だが、その間も魔力は消費し続け、残りは『31』となっていた。俺は覚悟を決め、この一撃に集中する。


 シンヤさんの機体を真っすぐ見つめ、突き出した右手に左手を添えると、モニター右下の数値は『30』に変わった。


 即座に俺は銃の引き金を引くように、右手の人差し指を曲げた。刹那、バシュッと鋭い炸裂音が上がった。


 モニターには猛烈な速さで紺碧の機体に向かう蒼炎の刃――魔法剣が映る。その刃は大気を引き裂き、シンヤさんの魔導機人に迫る。


 確実に捉えた。そう思ったとき、機人の肩の魔導砲が緑色に輝き始めた。どういった仕掛けかは不明だが、背後から迫る魔法剣を察知したようだ。


 シンヤさんは風魔法で魔法剣を吹き飛ばすつもりらしい。直後、砲口から強烈な突風が放たれた。


 百メートルは離れている武蔵零式も強烈な風を受け、機体が揺れる。


 だが、魔法剣はその突風という事象そのものを斬り裂いた。そして、速度を落とすことなく、凄まじい勢いでシンヤさんの機体に迫る。


 風魔法で推進力を得た魔導機人だったが、魔法剣で効果をかき消され、急激に速度が落ちた。急ブレーキがかかったかのように体勢を崩す。


 前のめりになる紺碧の機人。なんとか転倒を回避しようと、右足を大きく踏み出した――そのとき、蒼炎の刃が機人の足を貫いた。


 『火』の魔法剣は見事に膝裏に刺さり、そのまま突き抜けると、その役目を終えたかのように粒子へと変わり、霧散した。


 そして右膝に大穴を空けられたシンヤさんの機体は自重を支えきれず、膝からぽっきりと折れて地面に倒れた。


 これでシンヤさんの魔導機人は走れない。ほくそ笑むと魔力残量を確認する。


 『26/125』


 これなら普通に走ってゴールできる。俺は安堵の息を吐いて、魔力枯渇で軽い頭痛が襲う中、気力を振り絞って走り出そうとした。


 そのとき、魔力残量の数字が変わり、モニターが真っ赤に染まった。モニター右下には『25/125』が黄色く点滅している。


 混乱する俺。突如、視界が一転する。武蔵零式は装甲を開き、俺を地面へと投げ捨てた。鉄のように固い地面に叩きつけられた俺は、苦悶の表情を浮かべる。


 しかし、体の痛みより、魔力枯渇による頭痛がきつい。加えて、何が起きたのか分からず混乱する。


 俺は地面に手をつき、起き上がろうと顔を上げた。


 朦朧とする意識の中で、俺は大きな勘違いをしていたことに気づく。安全装置が起動する数値は魔力残量の二割を割ったとき――。


 つまり、『20』ではなく、『125』の二割――『25』だ。そんな単純な思い違いだった。


 ――五大機能『火』を起動できたことに浮かれ、油断していた。愚かな自分に怒りを覚え、舌打ちをする。


 ふと前方を見ると、片足になりながらも這ってゴールを目指すシンヤさん――紺碧の機人の姿が見えた。


 その凄まじい執念に言葉を失う。しかし、地面から伝わる振動から、後続の機人が近くまで迫っていると察する。


 優勝もできず、ただシンヤさんの妨害をしただけ――そのことに後悔がよぎった。懸命に地面を這う紺碧の機人を見て頭を下げると、俺は意識を手放した。

読んでくださり感謝です<(_ _)>

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― 新着の感想 ―
迫力ある緊張感も伝わります。 ーーすごいです。 ソウガ君ーーまたもや……。
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