第33話 はじまりの夫婦とやらは
はじまりの始まり。
現実世界と異界には境目があり、それ相応の立場のある『組』が境となる『川』を管理していた。
それぞれの長たちは、部下らを信頼し。必要な助けを求める事にも遠慮はしなかった。
それが、お互いの世界でいう『許されない恋』についても。
現実世界では『熊の神』と呼ばれていた、厳つい男が。
裏となる異界では、『月の蛇』とも呼ばれる熊とは戦友であり、役職でこそ『細君』などと呼ばれてはいたが。
熊の方には、既に妻や子らがいた。それなりに愛してはいたが、それでもやはり……普段は異界にいる相棒の方を愛してやまないと魂の奥底では震えていたのだ。
だから、名義分は家庭内の中でも『愛人』として迎え入れてはいる。万が一の『種子』の受け入れ先として。
熊はそれなりに地位のある存在で、『王』とも言われた存在なのだ。愛人であれ、その子孫が残れば良いと盟約を交わすのを妻も許した。
お互いが、ごく普通に夫婦となれない心境を知れば、誰でもそう思う。今でこそ戦争はないが、それを鎮めた盟友同士の恋。
赦されないのは、親たちが悪かった……とされている。
現在、『地球カプセル』にてその最奥とも呼ばれた伝説級の『編集』を。祖母と祖父になるはずの、彼らの何十代目かの子孫らは。孫らのために、過去記録を『アーカイブ配信』として……小さな小さな自分たちの当代編集長といっしょに視聴していたのだが。
「……夢物語、デスカ?」
「……いや、実はこれは」
『我ら、カプセルの主でも……これを見るのは二度目だ。お前が引き継がないように、幾らか我慢してくれ。実は内面が成人しているから見せたが」
「!? まさか!? 無修正!?」
「おばあちゃん用語を少し足そうか? 深夜枠など大したことがない描写もあるよ」
「……ばあちゃん、どんな状態で観たの?」
「お前よりマシだが、体が高校生くらい?」
「あたし変えて!?」
『「すまん。クーのために、耐えてくれ」』
「理不尽!? 遠くのおばあちゃん!! センシティブ枠の編集は今後するからね!!」
『「ワタシらのためにも頼む!!」』
「……大昔じゃ、意味なかったんだぁ」
これから続くは、記録映像をアーカイブ配信にするが。出来るだけ、セーフティ枠にAKIRAが少しずつアレンジした物語になりそうだ。
地球の幼い技術では、どれだけ頑張っても百年程度じゃ『受胎措置』の保護を守るのはとてもとても難易度が高く、高額な延命措置が必要なのをお許し願いたい。
現実側の復興支援で、AKIRAはのちに魂らへその序文を刻み込んだのだった。




