表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/35

第22話 再生編集の始まり 壱

 連れてきた『AKIRA』が女であるはずなのに、どうして男に入れ替わってしまったのか。


 成とフェイは『マチャ』の方が女だったのかと連れてこようと動きかけた。だが同時に、頑丈が売りの警視庁の建物がぐらぐらと揺れ動いたため、起きないAKIRAを揺さぶった。



「AKIRA! 起きろ! 期限が来たから動くしかないんだって!」

「起きなよ、AKIRA! ボクら編集部側が本来の役目をしなくちゃいけないんだ!! このままだと、『事変の兆し』が」



 始まる、とフェイが真っ裸のAKIRAらしき青年に触れようとした途端。とろりと柔らかいゼリーのように、溶けてしまって床に流れ落ちてしまった。これには成も目にしていたので、驚かないわけがない。



「は!? ちょ、え!? 何処に流れて行ったんだ!!?」

「ボクも知らないぞ!? と言うよりも、待て?? ってことは、『峯岸妃里』に依頼しているように見せて……自分で用意した鯨の皮の回収が終わってた?? 中身の掃除が終わっているからこそ……いだ!?」

「いでで!?」



 今度は物理的に痛みが訪れた。いきなり、ソファの後ろの壁が崩れてきてふたりの頭に落ちてきたと言う。古典的な場面転換に思えたが、警視庁の建物がお菓子の箱を崩すように壊れるわけがない。


 つまり、と成とフェイは自分の両手で幅を広げるようにしてみせた。


 夢見の予知の中でしか使えなかった、狭間を修復するための魔法。光る青いネガのフィルムらしき帯の中には、それぞれが扱える『武器』がきちんと収納されていたのだった。



「……おいおい。ボクもこちらの修復をしなくてはいけないのかい?」

「ばあちゃんの編集部に居たんだろ? なら、次の編集長の仕事も叔父さんとしては手伝わなきゃいけねぇんじゃね?」

「く! 仕方ない!」



 互いに帯を一周させて、自分の身体に巻きつける。それで服装も武器も装着出来るのだから、魔法はどうも使い易くてクセになってしまいそうだ。


 だがしかし、ここからが本番だ。


 必要最低限でしか、自分たちは各所の補強工事などで陥没事変を保護したに過ぎない。この建物が壊れ始めたのだから、日本崩壊からもう天変地異のスタートが踏まれているのだ。


 地盤沈下が起こり、建物のぐらつきも自分たちで感じ取れるのなら。長年過ごしてきた、この建物とは永久にお別れと言うことになる。


 AKIRAか不明でも、あの肉体が蕩けたと言うのなら何処かの水道管あたりに流れ込んで、自分が向かうべき場所へ移動したのだろう。


 成とフェイにはそこまでの芸当が今の肉体では無理だ。まだかろうじて『人間』でいるようだから、ここばかりは自力で地下道に潜るしかない。


 成は、選んだ武器から『大鎌』を選んでいたため、ここは遠慮なく『斬る』ことにした。狭間でメメが水を切り刻んだように、ザクザクと床のコンクリなどが切り刻まれていく。



「とにかく。確実に『水』か『氷』の中にボクらも移動しないとな!」

「ここ二十五階だったよな? もっと斬るか?」

「降りてから決めよう! ここも保たない!」



 刻んだところに出来た穴へ飛び込むと、下まで斬ってしまっていたのか。何処も暗く、肉が焼けた臭いで鼻が曲がりそうになるがこれくらいの予想はふたりともしていた。


 肉体だったものが消える瞬間の、わずかな異臭はどうしても出てしまう。死と再生とやらに犠牲がつきものと言うのは、こちらの編集部も同じだ。


『魂』を約束された異界に召喚するためには。


 何万通りでもきかない組み合わせで、地球の表側の災害の中で出る『選者』を導いていく。そのための派遣編集者が成やフェイ。


 期日を知らせるのが、政や朱里だが彼らも今現在どちら側にいるかはわからない。


 最終的に迎えに行けるように、まずは編集の仕事をしなくてはいけないのだ。



「くっそ! 朱里迎えに行きてぇ!!」

「阿呆! まずは仕事だ!」



 降りて行っても余裕の会話をしているうちに、地下道に到着はしたが。電灯がまだ生きているのか、ふたりを待っていた人物がよく見えた。服装はきちんとしていたが、髪色とかは先ほど蕩けた『AKIRA』のはずだが。



「兄さんら、宜しゅうたのんます」

「「クー!!?」」



 話し方で区別していたので、口が開いてしまうのは仕方がない。特徴的なグラサンを出した彼は、装着するとぺろっと舌を出した。



「うちのAKIRAにこっち側頼まれたんすよ」

「……てことは」

「あの子は、門に?」

「がっつり、編集長の担当してくれてますぜ」

「「……頑張ります」」



 理由が理由なので、がっくりするのも仕方がなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ