裏切り
エレンは数分間、動くことが出来なかった。
安堵と疲労が一度に押し寄せてきたから出会った。
エレンは、なんとか自分の体制を整えて、他の奴隷達がいる場所にゆっくりと歩いて行った。
エレンはみんながいる場所に到着すると、開口一番、このように言った。
エレン「僕達は自由になったんだ!」
他の奴隷達は意味が分からないままじっとエレンを見ていた。
エレン「僕がガイヤをやっつけた。もう何にも恐れる必要は無くなったんだ」
みんなは少しずつ意味が分かったようで、喜びの声が次第に大きくなっていった。
エレン「聞いてくれ」
エレンは言った。
エレン「僕達には身寄りがない。だから、当分の間はここで過ごそうかと思う」
エレン「僕が一番年上だから面倒は見るよ」
エレン「ここにはガイヤが残した食べ物もいっぱいあるし、暮らしていけると思うんだ」
こうしてみんなとは引き続き一緒に暮らすことになった。
平凡な日常が1週間ほど経ったある日、奴隷だった一人のグースが16歳の誕生日を迎えた。
その日の早朝、エレンは川に水を汲みに出掛けていた。
エレン「いい天気だな。今日はグースのお祝いをしないといけないな」
エレンはガイヤの支配から解放されて気分が良かった。
エレンは川に到着した。
水を汲むためにしゃがもうとしたその時、背後に気配を感じて振り返った。
ザシュ!
エレンの左脇腹を矢が貫いた。
エレンの前にはグースが弓を構えて立っていた。
グース「おっと、外してしまったか、ざんねん。だが致命傷には変わりないな」
エレンはこの光景が信じられなかった。
グースとは年も近く、お互いを励まし合いながら数年を過ごしてきた仲だった。
エレン「グース!何を・・・」
グースは笑みを浮かべながら言った。
グース「決まっているだろう?この世界は弱肉強食。強いものがより強くなる世界なんだよ」
エレン「苦労を共にした仲間だろ!?」
グース「仲間?笑っちまうぜ。ガイヤからいい能力奪えたんだろ?それを俺が貰ってやるぜ」
グースはこちらに向けて弓を構えている。
残念ながらエレンには反撃するスキルも持ち合わせていなかった。
エレンはグースから目線をそらし、川の方をチラッと見た。
グース「おっと、川に飛び込もうなんて考えるなよ。俺のスキルは<瞬速矢>だ。飛び込む前にやっちまうぜ」
そう言いながら、グースはエレンに狙いをつけていた。
エレン「くっ」
グース「さあ、こっちへゆっくり歩いてくるんだ」
エレンは動かなかった。
グース「なんだ?ビビって動けねぇのか?」
エレン『ここは一旦逃げるしかないか・・・』
そう考えたエレンは<隠匿スキル>を使った。
グース「な、消えた・・・!?」
グースは動揺し、一瞬、弓の狙いがエレンから外れた。
その隙をエレンは逃さなかった。
ザバーン!
エレンは川に飛び込んだ。
グースがいる一帯には、川に何かが投げ込まれた音と水しぶきだけが残されていた。
エレンは姿を消して川に飛び込んだ。
しかし重症を負っていたため、川の中で意識は失っていた。