エピローグみたいなプロローグ1
ある塔の前に、一人の二十代前後に見える紫色の髪の毛の男性が立っていた。
「これで、私の願いがかなう」
その声はやや疲れた感じがする。
「早く、行かなくては、彼奴等にバレてしまう」
塔の門を開けて、階段を登り始めて、やがて、一番上の部屋の門へたどり着いた。
「行こう、私の願いを叶える為に」
彼が門を開くと、そこには四人の人影が見える。
「まさか、お前たちがそこにいるなんて」
「ヤッパリ、言ったとおりになったな、あの時、言っただろ、あんたはそんなことはないと言っていたな」
彼の呆然とした言葉に、人影の一人が答える。
「黙れ、そんなことはどうでもいいだろ、お前等には関係ない」
「関係ないことはないよ。警告していただろ、後悔するって」
その一人が静かに言った。
「そのとおり、お前は後悔なんかしないと言っていたな」
残りの三人の人影から、一人が現れると、その姿は、鎧を纏った巨体の龍人である。
「ドルガー、そんなのはどうでもいい、私の願いを邪魔をするな」
「話をちゃんと聞いてはいないようだな、お前の今の願いは叶わないと言っているだろ」
ドルガーと呼ばれた龍人が呆れて言った。
「黙れ、此処はどんな願いもかなう筈だ」
「あのな、一度叶えた願いを取り消すことはできないよ」
残っている人影から男性が現れて静かに言う。
「黙れ、カズサ」
「だから、黙れない、願いは叶えることはできないと何度でも言う」
カズサと言われた黒髪の男性が彼を見つめた。
「若返っているから、此処ではない場所でやり直せばいいのじゃあない」
三人目が姿を顕す。その正体は金髪のエルフの女性である。
「だいち、仲間を騙し、自分だけが、その願いを叶えたのでしょう」
そのエルフは彼を睨みながら言った。
「その後の行動が問題だよ」
カズサが静かに彼に言う。
「若返り、その後に不老不死になった」
エルフの女性が呆れて言った。
「そうだ。エロノア、お前達は産まれてきた時からそうだろう、どうして、お前達だけがそうなんだ」
彼がそう言うと、残りの人物が現れる。それは銀髪のダークエルフである。
「私達だって、不老不死じゃない、寿命はあるわ。もっとも、千年前後だけですけど」
「ダーレア、そうだ。それでも、人から見れば羨望だ」
彼は恨みを込めて、言った。
「たしかにそうだよね、でも、長生きって、退屈なこともあるのよね」
ダーレアは呟く。
「なんだと、長生きが退屈だと、お前達がそれを言うのか、色々と勝手をやっているのに」
男性が彼らを睨み言った。
「退屈だからって、なるべく人に迷惑をかける様にしたくないから武術大会に参加しているのさ」
カズサがその彼に笑いながら言う。
「今もそれをやっているのか」
「そうだよ。今もやっているさ」
カズサは真剣な顔になる。
その言葉に、男は叫んだ。
「それは、お前らが不老不死だから、楽しむことがないからだ」
「さっきも言ったけど、俺たちは不老不死じゃないよ」
カズサが静かに言う。
「あなたは、欲張りすぎたのよ。私達の村から若返りの秘宝を盗み出しそれで、若返るそれだけでよかったのに'」
エロノアが彼を睨みながら彼が行ったことを思い出して言った。