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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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魔人、襲来

「奴らは硬いのか?」


キングドラゴンの戦闘力の情報を知っているのは、デュランとケヴィンだけである。


直接対峙していない刀聖には、キングドラゴンの防御力は認識出来ていない。


「さぁな、剣聖が奴の鱗を破壊する為に十数発必要だったと言えば想像出来るか?」


自分ならそれ程掛からないがな、等と余計な事は言わない。


「あいつの大剣でそれ程掛かったとなると……」


腕を組みながら思考する素振りを見せる刀聖。


ベヒーモスを一瞬で駆逐したこちらを警戒しているのか、キングドラゴンは此方へと近づこうとしていない。


「よし、サクッと終わらせよう」


言いながら、刀聖は腰を深く落としながら抜刀の構えを取る。


絶対切断を発動する構えだ。


「試さなくて良いのか?」


これ程の戦闘力を持つ刀聖なのだ、自分の武力がどれ程通用するのか試したいと思う筈だろうとケヴィンは問う。


絶対切断は相手がどれだけ硬かろうと関係無いのだから。


正に一撃必殺の技。


どんな装甲を持つ相手でも、強制的に両断する事が出来る。


それを放ってしまえば一瞬で片がついてしまい、小手調べ等出来なくなってしまう。


「あぁ、奴らが剣聖より強いと言うのなら挑む価値は有るだろうが、硬い鱗を持ってしても剣聖の剣技にその鱗が破れたのなら、それ以上確かめる事は俺には無い。それなら剣聖と剣を交える方が間違い無く楽しいだろう?」


「違ぇねぇ」


彼の言葉に、それもそうだと納得するケヴィン。


剣聖がキングドラゴンに勝てるのなら、その剣聖に勝っている刀聖がわざわざ実力を試す必要なんて無い。


格下相手に小手調べをした所で、たかが知れてるからだ。


と、建前上彼はそう言っているが、ケヴィンは彼の深層心理をこの僅かな期間で読み取る事が出来ている。


彼の本音は違う所にあるだろう。


「で、本当は?」


「何より……面倒くさいからだ!!」


「だろうな」


言いながら、刀聖は紫炎の刃を飛ばした。


巨体がご丁寧に6体も立ち並んでいるのだ。


小型の敵を相手にする訳では無い。


胴体の高さに向けてぶちかましてしまえば。


「グォオオ……」


断末魔を叫ぶ事すら出来ず、キングドラゴンは絶命するだろう。


上半身が下半身から切り離される様にズルリと地面へ落ちるキングドラゴン達。


デュランですら苦戦を強いられる装甲を持つキングドラゴンは、英雄の中にも対抗出来ない存在が出てくる事だろう。


しかしそんな魔物ですら刀聖は一撃で屠って見せた。


これが異能力の力だ。


理不尽の象徴とも言える程に残酷な力だ。


キングドラゴンの討伐の完了が、スタンピードの終わりを意味する事となる。


未だロレンシア南門では残党狩りが行われているだろうが、時間の問題だろう。


ケヴィンの魔力探知では、集まった討伐隊の人数が一人も欠けていない事を確認している。


そして着実に魔物の反応が消えていっている事から、討伐隊が優勢な状況だと判断出来るだろう。


「終わったな」


刀聖が刀を鞘に納めながら呟く。


再び舞い戻った静けさを確認しながら、ケヴィンはそれに同調しようとする。


が、一部を睨みつけながらそれを押しとどめた。


ケヴィンの反応に疑問を持ったのだろう、刀聖もケヴィンの視線に習う様に一点を見つめる。


すると、突如光の玉が現れ出すと共に、光が人の形を構築する。


転移魔法が起こす現象である。


「うひゃ~! まさか、こうも簡単に『神獣』がやられるとは思わなかったっスよぉ」


光が、人の体を完全に構築する前に、言葉を発する。


間違い無くその人物が呟いた言葉だろう。


やがて現れた人物は、白銀の薄い鎧に身を包んだ人物だった。


人と何も変わらない身なり。


頭部が有り、四肢が有り、金属の杖を持つその細い指も人と変わらない本数。


『魔人』と言うにはあまりにも『普通』過ぎるその風貌に、ケヴィンは首を傾げる。


身長は170程の痩せ型だろうか、猫の目の様な大きな吊り目に、筋の通った小ぶりの鼻に小さな口元。


緑色の瞳を宿し、オレンジ色に近い金色寄りの髪は肩まで延び、若干ウェーブが掛かっている。


普通の人類と何一つ変わらない風貌を持っている『彼』が何故『魔人』だとケヴィンは思ったのか。


それは二つ程人類と『異なる部分』があったからだ。


一つ目は、その『肌の色』である。


真っ黒と言うよりは、濃い灰色に近い素肌。


人間の褐色の有る黒い肌とは異なる異質な色。


そして額に存在する宝石の様に発光した『魔石』。


埋め込まれている様にも見えるが、人の体の構造上、間違い無く頭蓋骨に直接その魔石が存在していると言って良いだろう。


彼が現在、『浮遊』する為に使っている『風魔法』を作り出す為の魔力が、その額に存在している魔石から作り出されている事をケヴィンは感じ取った。


成程。


魔人、魔物を総じて『魔族』と言う理由の一つとして、魔力の扱い方が人類と異なる事が上げられるのか。


とケヴィンは勝手に納得した。


ケヴィン自身、魔人と言う存在を始めて見たのだから。


隣で口を開きながら唖然としている刀聖を横目で確認しながら、視線を前へ戻す。


「おっと、突然現れてビックリさせてしまったっスね? 俺は見ての通り『魔人』っス! えぇっと、人類側では自己紹介ってやつをするんっスよね? 名前は『004』っス! よろしく!!」


親指を突き出してくる魔人。


まるで番号の様な名前を発言し、少しばかりケヴィンは混乱した。


「なんだ? 魔人の癖にらしくねぇな。魔人ってのはそんなフランクな感じなのか?」


一言で言えば調子が狂うと言った所か。


魔人と言えば人類の敵、正に一触即発の様な状態だと思って居たにも関わらず、目の前の魔人からはそんな素振りが一切見えない。


「いやいやぁ、こんな性格なのは俺だけっス! 魔人の中には人を見た瞬間殺してしまう奴も居るっスよ」


「お前はそうしねぇのか?」


「さっきから見てたっスけど、おたくらは人類の中でもかなり強い方っスよね? だからもしかしたら目の前に姿を出したら直ぐに攻撃してくるかなぁ? とか思ってたんっスけど、実際今何もしてこなかったから俺も『まだ』何もしないだけっス!!」


ケヴィンは警戒を解かない。


今この魔人は『まだ』と発言した。


つまり今はまだ攻撃はしないが、遅かれ早かれ攻撃自体はすると言う意思表明なのだ。


魔人はゆっくりとこちらへ近づいてくる。


体を浮かせたままホバリングする様に向かって来た。


やはり、魔人特有の能力で浮いている訳で無く、風魔法を使用しての効果だ。


ケヴィン自身偶に行う技術の一つだ。


「004ってのは本当に名前か? 番号にしか聞こえねぇんだが」


「番号って認識で有ってるっスよ。そっちの『二つ名』みたいなもんっス。序でに、魔人の中での『強さの順番』でもあるっス」


「つまりお前は魔人の中で四番目に強いと?」


「正確には5番目っスけどねぇ。俺からも質問っス。お二人は、人類側で何番目ぐらいの強さっスか?」


彼の発言から判断出来る意味は、少なくとも魔人は『5人』は存在する。


彼は五番目に強いと言った、つまり自分以外に後003、002、001、そして000番が居ると言う事に成る筈だ。


「さぁな、正確な強さを測った事がねぇが、世間からは俺は10番目、こいつは4番目と言われてるな」


ケヴィンは正直に『表向きの情報』を答える。


つまりオールガイアランキングの順位を口にしたのだ。


自分の本当の強さは置いといて。


「やっぱり俺の目は間違って無かったっス!! 絶対にお二人は人類でも最高峰の実力だと思ったっスよ!! 特にそっちの『サムライ』さんはかなりやばい『異能力』持ってるっスね、流石にあんなもの喰らったら俺でもヤバいっス」


「サムライだと?」


ずっと黙っていた刀聖が反応し、彼に言葉を返す。


「あれ? 違ったっスか? 確か『異世界』の日本って国にはサムライって職業が有るんっスよね?」


「どうやら、こっちの事は色々と知られてるみたいだな」


刀聖は少し焦った様な声を漏らす。


異世界の事も、異能力の事も知っている魔人。


そうなれば当たり前に英雄の存在も知っている事だろう。


打って変わってこちらは魔人側の情報を何一つ知らない。


たった今、魔人は最低でも五人いると知れたばかりなのだ。


情報戦では、明らかに人類側が負けているのだ。


「あぁ成程!!」


魔人は突然ポンっと拳を叩く。


「こっちが何でそっちの情報を知っているかが気に成るんっスね? 簡単っすよ、こっちには『千里眼』を持ってる魔人が居るっス! 異能力は英雄だけの専売特許じゃないっスよ? 魔人は全員異能力を『持っている』っスから!!」


「……なんだと」


流石に動揺を見せる刀聖。


確かに異能力の存在は英雄の専売特許の様な物と言っても過言じゃない。


優れた能力を持つうえで、異端な力を発揮する事が出来る異能力。


それが有ってこそ、英雄達は戦闘を有利に運べて来た。


しかし、未だこの魔人の戦闘力が判断出来ないが、こちらの実力を見ても怖気づいていない様子を見ると、最低でも同等の実力を持っている可能性がある。


その上で異能力を持っているとなれば、人類側の有利は破綻する。


はっきり言ってケヴィンにとって異能力の有無などあまり興味無いが、それでも刀聖クラスの異能力を持っている存在が魔人側にゾロゾロ居るとなると……。


そう考えるだけでケヴィンは震えが止まらなくなる。


そして、これ見よがしに笑みを見せる。


『面白いじゃないか』等と思考を巡らせながら。

面倒くさいからだ!!

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