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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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ギルドマスター

「良いじゃねぇか。遠慮いらねぇ、俺をぶっ殺す気でどんどん放ちな。俺も相応に力を上げていくぜ」


言うと、ケヴィンは再び刀聖に向かって駆け出す。


刀聖はこちらを迎え撃とうと刀を構えるが、不意に後方へと飛びのける。


その瞬間彼の足元からケヴィンが展開したアースグレイブが突き上がる。


それを感知したであろう彼の行動だったが、彼が飛び跳ねた先には追撃をかます様に雷撃が降り注ぐ。


着地と共に更にサイドステップでそれを避ける刀聖。


その避けた先こそが、ケヴィンが彼をおびき寄せる為に牽制した場所で有り、彼が足を地面に付ける直前にケヴィンの刺突がその場へ突き出される。


しかし、刀聖は着地する前にいつの間にかベルトから抜いていた左手に持たれた鞘を地面につけ、強制的にベクトルを無くし、ケヴィンの斬撃に当たる直前の位置で制止する。


そのまま横向きに体を回転させ、ケヴィンの頭上から振り下ろされる刀。


ケヴィンもそれをバックステップで避けるが、刀を振り下ろした遠心力で回転した刀聖は、一回転した後再び刀の鞘を地面へと付け、それを支点に体を支え、再び上段から刀を振り下ろす。


ケヴィンは刀を受け止めると共に、ストーンバレットを展開し、刀聖の体を支えている鞘を弾き飛ばす。


体勢を崩し落下するシアンを正面から蹴り飛ばし、後方へと吹き飛ぶ彼に向かいつつ更に後方から氷の塊をぶつける。


あまりの威力に刀聖は跳ね返り、ケヴィン方向へと吹き飛んで来た所目がけ剣を振り下ろすケヴィン。


しかしその斬撃をぎりぎり滑り込まされた刀でいなされるが、ケヴィンは勢いのまま回転するとまだ空中に滞在している刀聖の背中へと右肘をめり込ませる。


「うぐっ!!」


受けた威力に圧され、地面へと叩きつけられる刀聖。


逃がしきれなかったエネルギーにより再びバウンドした刀聖に向かい、ケヴィンは超至近距離でのクリムゾンノヴァを発生させる。


同時に風魔法を操り、自分にも降りかかる筈の爆風の全てを刀聖へと叩きつけ、彼を三度吹き飛ばす。


追撃を仕掛けようと吹き飛ぶ刀聖に向かい、ケヴィンが駆け出した時だった。


ケヴィンは途端に体勢を低くする。


その瞬間、彼の頭上を刀聖の放った紫色の剣線が突き抜ける。


「く……これも避けられたか」


悔しそうに言葉を零す刀聖。


ケヴィンはゆっくりと立ち上がり、刀聖を見つめる。


幾つか戦って居る中、彼に不可解な部分を感じた為だ。


「あんた……面白いな」


率直な感想である。


今まで戦った誰よりも面白い。


刀聖にそう感じざるを得ない物が有った。


見ての通り、実力は明らかに此方の方が上である。


善戦どころか、ほぼ一方的と言ってもいい。


だがその攻防の間で、二度、三度とケヴィンの予想外な行動を刀聖がした時が有った。


「……ここまで敵わないもんだとはな。これが蒼氷の朱雀の実力か……想像以上だ」


あと背中が痛いぞこの野郎と文句も言ってくる。


この刀聖が、何故一度勝機を逃せば二度と勝てなくなると言われている存在なのか分かった気がした。


実力としては、確かにレオンやデュランと比べれば彼の方が上位に有るのは間違いないが、デュランが負け続ける程圧倒的な差が有る訳では無い。


戦い方を工夫すれば、彼から一本取る事も出来るだろう。


「あんた、俺の動きを『読んで』いるな?」


とケヴィンは言い放つ。


半ば信じがたいがこの刀聖と言う存在、剣を交えれば交える程此方の手の内を吸収しているのだ。


一つ一つ、戦いの組み立て方や剣の振り方、魔法を放つタイミング、それらを刀聖は『先読み』しながら戦っているのだ。


未来予知の能力が有る訳じゃないだろう。


それよりももっと、彼が好きそうな『単純な』トリックだ。


相手の戦い方の『癖』を見抜いている。


一流の力を持てば持つほど、戦い方と言う物は己の型にハマっていく。


最も効率の良い戦い方を無意識の内に算出する事で、まるで一定のリズムで戦う様な状況となる。


刀聖はそのリズムを読んでいるのだ。


だからこそ決定打となる筈だったケヴィンの斬撃が幾度か彼に防がれ、その上あれ程至近距離で放ったクリムゾンノヴァでさえ耐え切り、更にその後此方が追撃する事まで読んで絶対切断を放ってきた。


最後は此方の追撃に合わせて刃を放ったのだ。


ケヴィン以外ならもしかしたらあれは完全に当たってしまったかもしれない。


刀聖としては此方の反射神経が予想外過ぎた事が、読み切れなかった部分と言う事だろう。


「竜騎士が居ない今、現英雄の中で最強と呼ばれている俺でも100人戦って100人全員に勝てる自信等無い」


99人には勝てるがな、と一言付け足す。


「俺にも当たり前に弱点は存在するし、俺以外にも誰にだって苦手な戦い方と言う物は存在する。ずる賢いと言われ様が、俺は相手が苦手とする戦い方を見つけ出し、そこを突いて勝利する戦い方を好んでいる」


「賢明な判断だろ、わざわざ相手の土俵で戦う必要なんか無い。最も効率良く相手の弱点を突いて戦うのは当たり前の事だ。魔物相手に弱点属性で戦うエルフと同じだ」


デュランが彼に負け越している理由が正にそれだ。


デュランの戦い方はケヴィンから見ても、完全に型にハマっているのだ。


勿論それが弱い訳では無い。


むしろ大剣を扱って戦う彼の戦闘スタイルからすれば、完璧に近いと言える程誰もが理想とする戦い方だろう。


効率を求め切ったが故に、頭が良すぎるが為に陥る罠とも言える。


刀聖にとって、デュランの戦い方はもっとも戦いやすい相手となる。


効率良く戦い過ぎるが為に刀聖からすれば次は右から来る、その次は上から、と言う形で先の行動が全て分かってしまうのだ。


これが、刀聖と対峙した者が口々に言う『最初は善戦していた筈なのに、気づけば手も足も出せなくなって負けた』と言う現象の原理だったのだ。


しかしこの手法はケヴィン相手には悪すぎた。


例えケヴィンの戦い方の癖を刀聖が完璧に見抜いたとしても、それを踏まえても間が埋められない実力差が存在している。


「お前は反則的だな、それ程までに強いのならエマをお前に嫁がせる事も考えてやらんでも無い」


「それは考えなくて良いっての。て言うかそれより、ずっと俺達の戦いを見つめている『あいつ』は誰だ?」


ケヴィンが指差す方向には、真っ白の生地に豪華な装飾の施されたローブを着込んでいる一人の人物が居た。


北側の観客席のど真ん中から、此方を見下ろす様に存在しているその人物。


当初、誰も居なかった筈のこの闘技場に、刀聖との模擬戦が始まった直後に突然現れたその存在。


恐らく転移魔法の類でそこへやって来たのだが、特に何する事も無くただただ自分達の戦いを見ているだけであった為、ケヴィンは半ばそれを無視してる状態だった。


「気づいていたか」


「あんた程気配を消す能力に長けている訳じゃ無さそうだしな」


刀聖は肩を竦ませると、白ローブの人物へと視線を向ける。


「と言う事だ『ギルドマスター』。貴方の目で蒼氷は『Xランカーに相応しい』か、判断は出来るか?」


「……どう言う事だ?」


ケヴィンは眉間に皺を寄せながら刀聖へと問う。


刀聖は白ローブの人物の事を『ギルドマスター』と呼んだ。


その言葉が指す意味は、その名の通りギルドのマスターと言う事。


刀聖のニュアンス的には、DOLLSの支部マスターの様な存在では無く、この『月下無限天』の本マスターの様に聞こえる。


つまり月下無限天の全てを纏める人物、正真正銘のギルド代表のギルドマスター自身だと言う事だ。


白ローブの人物は口を開く。


此方と同じく、フードで顔を隠してる為素性は不明だ。


その声もローブに取り付けられた変声期で変化させた物。


男性とも女性とも取れない無機質な声だ。


「戦闘力に申し分は無いだろう。実績も『Xランカー』も相応しい。既に彼は炎帝、剣聖からもXランカー推薦の話が来ているからな。後はその為の資格の一つであるSランク昇格と、本人の意思が必要なだけだ」


「だからどう言う事だって聞いている」


若干声色を変化させケヴィンが問う。


「試す様な事になってすまない。実はこの手合わせは、お前がXランカーに成る為の試験だったんだ」


「は?」


「勿論この試験の結果がどうであれ、お前の意思が無ければXランカーに昇格する事は無い。ただどうにかしてお前に何れ氷帝の座へ就いて貰う為に意識を傾けて欲しかったんだ」


「つーことは何だ? どうやら俺はその試験とやらに合格したって言う話か?」


「その通りだ」


と、ギルドマスターが刀聖に変わり返答した。

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