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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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竜騎士の弟子

新キャラ?

ケヴィンは直接DOLLSへ転移はせず、あらかじめ途中の地点へと転移を完了した後、黒ローブに身を包んだ。


支部の外から気配探知を行い、中で待つ人物の情報を軽く探ろうと思っての判断だった。


通路を曲がりDOLLSが見える位置にたどり着いた所で、予定通りDOLLS内へと魔力探知を施す。


中の構造を思い出しながら観察すると、カウンター内にはDOLLSマスターが直立している様子が見える。


客払いでもしてるのか、一般席用のエリアには誰一人気配がしない。


カウンターに腰かけて居る人物が一人だけ存在するだけで他に客は居ない様である。


この一人だけ居る人物が、恐らく自分を呼び出した者なのだろうと当たりを付ける。


ケヴィンはまだちゃんと姿を見てすらいないその人物に、軽く興味を持った。


気配の断ち方が非常に上手いのだ。


魔力探知をしなければ、強いて言うのならケヴィンでなければ、そこに存在している事に気づかない程の技術である。


DOLLSの扉を開ける。


予想通りか、扉に取り付けられている看板には、まだ確実に営業時間内の筈なのだが『クローズ』と書かれていた。


つまり閉店状態にされているのだ。


ケヴィンの来訪を知らせる鈴が鳴り響き、それによりDOLLSマスターの緊張状態が緩和した様に見えた。


メイファはまだ検査入院中であり、復帰はしていない。


マスターが緊張しているのは恐らく、カウンターに居る人物……つまりケヴィンを呼び出した人物の影響だろう。


ケヴィンと同じ黒ローブに身を包んだ人物がカウンターへと座り込んでいる。


二つ名持ちである事を証明する黒ローブだが、ケヴィンの物と一部デザインが異なる部分がある。


それは、背中に『紋章』が刻まれている事だ。


紫色の刀を象る紋章。


つまり……彼は二つ名持ちの中でも、更には英雄の中でもトップに位置する存在だと言う事だ。


この紋章を持つ者は一人しか居ない。


『刀聖』、またの名を『紫炎の一閃』……その人だ。


此方の来訪に気付いた刀聖は、肩越しに視線を向ける。


その後、体をこちらへ向けるとゆっくりと立ち上がる。


「突然の呼び出しに応じて貰って感謝する。お前が蒼氷の朱雀だな?」


声の変換は行っていない。


力強い低く通る声だ。


デュランとは質が異なる低音ボイスだが、その声の主が男性である事は間違いないだろう。


勿論刀聖とは初めて会うのだが、ケヴィンはどこかでその声を『聞いた事』がある気がする。


彼の声に適合する人物を記憶の中から探り、様々な人物を脳裏に描く。


体格としてはレオンに近しい物がある。


恐らく180センチ程の長身だろう。


左の腰に、太刀と呼ばれる長い刀を帯刀している。


正確には左の腰から伸びた数本のベルトの様な物で鞘が吊られている様な状態だが。


「あんたが待ち人か?」


と、ケヴィンは答える。


「あぁ、俺は見ての通り刀聖の位を任されている者だ。炎帝や剣聖が良く世話に成っていると聞いている。彼ら共々、宜しく頼む」


「世話焼いているとは思って無いが、まぁ程々にやってるよ」


言いながら、ケヴィンはカウンターへと腰かける。


きびきびと動くマスターによって、ケヴィンの前へとコーヒーが差し出される。


メイファの様に緊張のし過ぎで熱いコーヒーを出すと言ったヘマをしない所が流石だ。


再び、刀聖はカウンターへと座り込むと、体半分をケヴィン側へと向ける。


「お前が良くここの支部に顔を出していると聞いてね、今日は用事が有って呼び出させて貰った」


「刀聖様自らの呼び出しなんて光栄な事だな」


「謙遜を、お前の実力は聞いている。炎帝や剣聖が歯が立たない程だって事をな」


「そりゃぁこっちも同じなんだがな」


ケヴィンは口角を上げる。


刀聖と言えば、Xランカーで真っ二つに分かれている派閥の一つ……所謂『刀聖派』と呼ばれるグループのリーダーだ。


つまり彼が、レオンやデュランが慕うグループの代表格だと言う事になる。


ケヴィンが口角を上げた理由には、彼への興味によるものが一番だ。


以前デュランから彼の情報を聞いた事があった。


なんでも彼と対峙した者は、一度勝機を逃せば二度と勝つ事が出来ないらしいのだ。


彼と模擬戦を行った者達は口々に、最初は善戦していた筈なのに気づけば手も足も出せなくなって負けたと語るらしい。


事実あのデュランでさえ、この刀聖との模擬戦には負け越しているのだとか。


オールガイアランキング4位に位置している彼だが、純粋な戦闘能力は現存のXランカーで一番だと言う噂も高かった。


その情報からケヴィンの悪い癖である、強者と戦いたいと言う思いが彼に対し湧きたってしまったのだ。


ケヴィンの言う『こっちも同じ』とは、此方としても二人からお前の強さを聞いているぞ、と言う事だ。


「それで、俺への用事って何だ? わざわざギルド支部一つを貸し切ってまで呼び出すなんざ、職権の乱用じゃねぇか?」


「そう言われると耳が痛いな。この場所を借りる為に経費は出させて貰ってる。何、ここ一時間ぐらいの一時的な貸し切りだ。お前とはゆっくりと話をしたくてな」


言うと、刀聖はマスターへと目配せをする。


それに反応したマスターは、一度頭を深く下げ店の奥へと消えて行った。


「マスターまで下げさせての話か。事はそんなに重大な物なのか?」


「そうだな、互いに不都合を避けようと思っての配慮だ。殆どは俺の為の事だが、こうしてでもお前とは話す必要があったんだ『ケヴィン』」


「……」


自分の名を呼んだそのニュアンスで、ケヴィンの記憶の中の一人が彼と適合した。


「……あんた、ルーチェが言ってたジパング学園エースの『シアン・ローゼンクランツ』か?」


「ご名答だ」


刀聖は、そう言いながらフードを脱いだ。


癖のない真っすぐな、特徴的な紫色の髪が視界に入る。


ジパング学園との交流戦の際、学内を見学していた時にすれ違った二人組の内の一人だ。


彼の気配の消し方が上手かった事に納得が行く。


確かにあの時気を抜いていたケヴィンに、彼は接近の気配を掴ませなかったのだから。


成程、シアンが刀聖か。


彼に習い、ケヴィンもフードを下した。


バレているのなら隠す必要もない。


何故こちらの正体を彼に知られているかは別として。


「何故俺がお前の正体を知っているのかって顔してるな? あの時学園でお前の名を呼んだ事も、お前にとっては謎だったかもしれない」


「あぁ、少し気味が悪かった所だ」


後心を読むな、と付け加える。


「炎帝達に聞いたとは思えねぇしな。あいつらはあいつらで相当口が堅い筈だ」


「確かにレオンやデュランは信頼における英雄だな。俺の陣営に付いてくれて居る事があれ程心強いと思った事はない」


「じゃぁ他の奴等か? 生憎俺はそんなに顔が広くねぇんだがな」


中々重鎮との繋がりは濃いだろうにと一言告げ、その後不敵に笑うシアンは再び口を開く。


「俺とお前には、一つの共通点があるんだ」


「まさか混血種とか言うんじゃねぇだろうな?」


そんな筈が無いのは見て分かる事なのだが、先日ジパング学園で彼と出会うまで、その存在すら知らなかったのだから共通点等と言われてもパッと出て来ない。


「……俺は、『エリル・エトワール』の『弟子』だった」


「……は?」


「つまりお前の兄弟子って事だ。聞いた事が無いか?」


ケヴィンは突然の出来事にほんの一瞬慌てるが、冷静に思考を巡らせる。


確かにエリルは自分以外にも弟子が一人居ると言っていた。


いつか引き合わせると言っていたが、それは叶う事が無かったもう一人の弟子。


それがこのシアン……。


はいそうですかと簡単に信じる事は出来ないが、しかし納得できる部分は多い。


エリル程の存在が育てた弟子だ、その存在がXランカーに所属している事はなんら不思議では無い。


ただ弟子として育てた存在が英雄だっただけの事。


これ自体は何の不思議もない、寧ろ当たり前の事だ。


此方は特に彼の素性を知らされていなかったが、シアンの方は此方の情報をエリルから聞いていたと言う事だろうか。

既出キャラでした

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