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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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異常発生

翌日、ケヴィンは再び最前線へ突き進み、周辺を侵攻しているジパング側の生徒を軽く討伐しながらゆっくりと前進していた。


昨晩大量に作り上げたグリズリーの串焼きは、先日に見せられたデュランの魔法の様な食事法で、瞬く間さえ与えられず彼の腹へと消え去った。


思わずケヴィンが吹き出してしまう程には面白い光景だった事を覚えている。


中々悪くない気分で散歩の様に辺りを散策していた時であった。


「……」


不意に己へ急接近する『大型』の気配に反応すると共に、ケヴィンは腰にぶら下げていた模擬刀を引き抜くと、その気配に向けて横薙ぎに振るった。


刃が抜かれている為鋭利では無いが、それでも彼の技術を持ってすればどんな『魔物』相手にも確かな凶器となる。


そう……今彼に襲いかかった魔物が『上級』の魔物であってしてもだ。


「……ヘルコブラ」


巨大な口を開けて襲いかかって来た為に、その口端から長い長い胴体をケヴィンによって一閃とされてしまった大きな蛇の死骸がそこへ転がる。


上級の魔物の中でも中間辺りの強さを誇るヘルコブラ。


紫色の毒々しい肌を持ち、全長は15メートルにも及ぶ個体も存在すると言われてる。


その胴体の直径は2メートルを超え、人サイズの生き物ならば簡単に丸呑みされてしまうだろう。


何より最も警戒しなければならないのは、この生物の牙から抽出される猛毒である。


本来ならばこの牙はヘルコブラが狩猟を行う時、大型の魔物へ喰らいつく際に体内へ毒を注入する為に扱う物。


人サイズの生き物は基本的に丸呑みにされる為、この毒が人に対して使われる事は殆ど無いが。


余りにも素早い生き物と対峙した際に、その毒を辺りに撒き散らすと言った行動を取る事があった。


その毒が仮に傷口にでも侵入したとしよう。


森の中ではほんの少し気を抜くと簡単に怪我してしまうものである。


するとどうなるだろうか……。


毒の効果は、全身の血液が凝固する物だ。


ヘルコブラの毒の被害に遭った生き物を解剖すると、体内の血液がゼリー状に凝固している事が見受けられる。


つまり血液の凝固により体内への血液循環が途絶え、瞬時に生物に死が訪れる事と成ると言う事だ。


その苦しみと痛みが正に地獄を彷徨う様だとされる事から、ヘルコブラと言う名が付いた。


ヘルコブラの毒を持ってすれば、あの龍種ですらそれの餌食となる程の猛毒だと言われている。


これに関しては、ヘルコブラの牙が龍の硬い鱗を貫通する事が出来ればと言う条件付きでは有るのだが。


そんな物を人が喰らえば、その生命は決して助かる事は無いだろう。


正に上級の魔物……そのランクと言いこの巨体と言い、やはりこの森に生息していたのであれば当たり前に駆除対象と成っていた筈。


昨日のグリズリーと同じく、この魔物でさえ直前までケヴィンの『探知』魔法に引っ掛からなかったのだ。


気配を察知した瞬間には、ケヴィンは既に襲いかかられている状態であった。


完全なる謎現象……だが、一つだけ分かった事がある。


ケヴィンはこの魔物が自分の近くに現れた事によってそれを確信した。


この魔物が出現したと共に感じたそれ……この魔物が扱う事が出来ない筈の『魔法』をケヴィンは探知した。


転移魔法。


魔物にこの転移魔法を扱う事が出来る種族は存在していない。


知能が人並みに高いとされる龍族ですらそれの行使は不可能である。


……つまりこの魔物は、故意的に何者かがこの森へと『送った』と言う事に成るのだ。


その何者かと言うのは、転移魔法が扱えるエルフか……それとも未だ姿を見せない『魔人』か……。


誰が? 何の為に?


後者である魔人がこの行為を仕出かしたとなれば、何故ただの学生である魔導騎士育成学園の一年生達の元へそれを送り込んだのか。


未来の戦士達の芽を摘むためだろうか?


自分達の驚異と成りうる存在を消す為?


ケヴィンは首を横に振るう。


僅か一秒とも掛かっていない思考だが、今はそれをする時では無い。


全身に感じてしまっているのだ。


その日この森に送り込まれたのは、このヘルコブラだけでは無いと言う事を。


この森全体に広げていた探知魔法が危険信号を鳴らしている。


10体、20体……それ以上にも及ぶ数の『大きな体積』を持った生物の反応がケヴィンの探知に引っかかったのだ。


「デュラン!!」


通信用魔道具を用いて、ケヴィンはデュランへと声を掛ける。


『……把握している……ケヴィン、討伐を頼む。……此方は撤退指令を出す』


「了解だ」


デュランからの即時の返答。


指令は彼に任せればどうにでも成るだろう。


いざと成ればあのグループにはエマも存在している。


大人数であろうと危険に陥る事は無い筈である。


再びケヴィンは探知へと神経を集中させる。


右方に確認出来る『エドワード』の気配はデュランから報告が入ったのか、方向転換を行うと共に急速に校舎側へと移動し始めた事が確認出来た。


彼の道なりを確認した所、障害と成りうる魔物は存在していない。


他にも撤退を開始している部隊を探知し、それらの逃走ルートを先読みし安全の確認を行う。


その先で、一体の巨大生物がゆっくりと近くの学生グループへ接近している気配を感じる。


「……ストーンバレット!!」


すぐ様ケヴィンは左手を後方に翳し、その手の先から大地属性の初級魔法を発動する。


ケヴィンの左手に集まった圧縮された土の固まりは、鋭い弾丸の様な形を象ると高速回転を始め途轍もない速度で放出される。


土の弾丸となったストーンバレットは森を一直線に突き進み、遮る大木へ大穴を開けながらも猛進する。


「グモォオオオオオオオッッ!!」


そして一体の巨大な『蜘蛛』の魔物の頭部を貫き、その生物を絶命させる。


ブラッドスパイダー。


ヘルコブラと対を張る上級の魔物。


鋼鉄の強度を誇る糸を放出し獲物を捕らえ、鋭い歯で獲物へと噛み付くとそれに毒を注入する。


毒の侵食を許した生物は、体中の穴と言う穴から血液を吹き出し絶命する。


余りにも酷い出血量から因んで、その名が付けられた大型の魔物である。


本来その強固な肉体には初級魔法等通じる筈が無いのだが、ケヴィンの放つそれは既に異端な威力。


例え上級の魔物であろうと初級魔法だけで十分だと言う事だ。


撤退を開始しているアトランティス側の生徒達の逃走ルートに、そのブラッドスパイダー以外に障害は見受けられなかった。


「……くそ」


しかし、それ以上の問題がケヴィンの探知に引っ掛かる。


それは十体以上の魔物に囲まれているであろう生徒達の気配だ。


ケヴィンは地面に強く足を踏み込むと、身体強化魔法を脚力に集中させ一気にその位置まで進行する。


目の前に立ち塞がったグリズリーを、ただの体当たりで蹴散らしながら突き進むと一瞬にして目的地へと到着する。


「……」


目の前には何十体もの巨大生物の集まりと、それに匹敵する程に転がる魔物達の死骸。


まだ魔物達が現れてから幾分も経っていないこの状況で、これだけの討伐を為せる人物は限られている。


群がる魔物の手前には腰を抜かしているのか、体を小刻みに震わせてただただ怯えている数人のアトランティス生徒。


そしてその生徒達と魔物の間に立ち塞がる一人の青年……。


「レオン……」


そう、これだけの魔物に囲まれながらも怯える生徒達を守りきっていたのは、レオン・エルツィオーネであった。

こう言う時頼りになりますね。

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