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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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初日の勝敗

いきなりクライマックス!?

しかしその隙だらけの二人にケヴィンは容赦しなかった。


二人に両腕を向け、再び風魔法を構築。


彼女達の外側から突風を起こし、風圧で彼女達の身体を強引に動かすとケヴィンの前方で二人を衝突させる。


その瞬間にケヴィンは手の平を地面に添え、大地魔法を発動させる。


「アースグレイブ」


ケヴィンの魔法により衝突し体を密着させたままの二人へ、固められた土をぶつけ彼女達を上空へと弾き飛ばす。


「ロックブレイク」


そして飛び上がった彼女達の上空に巨大な岩を出現させ、上から叩き付ける様にそれを激突させる。


その衝撃で真っ逆さまに落ちた二人は、空中でフィーネがルーチェを抱き寄せ彼女を庇うようにフィーネが下敷きと成り、地面に激突する。


激突する寸前に、ルーチェが治癒魔法を自分達に施している事を探知したケヴィン。


恐らくその治癒魔法で、二人はほぼ無傷の状態まで回復した事であろう。


確実に戦闘は続行出来る状態である事を把握したケヴィンだが、追撃は掛けずに二人の行動を見守る。


二人はすぐさま立ち上がり、体制を立て直すとケヴィンへと構える。


ケヴィンはただゆっくりと、足に固定された土を脚力だけで破壊し、二人をまっすぐ見つめ返した。


二人はどう見ても完全回復している。


あれだけの連撃を施しても、その殆どが無意味とも言える程に無傷の状態だ。


彼女達の行動から察するに、まだまだ魔力は保有しているだろう。


まだまだ戦う事は出来るだろう。


しかしそれとは逆に……彼女達の表情からは、その意思を伺う事は出来なかった。


「……ルーチェちゃん……この人……」


「うん、どうやらとんでも無い人を相手しちゃったみたいだね」


諦めている訳では無い、恐らくこちらが攻撃に踏み出せば対処こそしてくるだろう。


「何だ? もう終わりか?」


分かっていての発言だ。


これ以上の戦いは『一般』の枠を大きく超えている。


もう既に超えているのだが、それでもこれ以降の戦いは確実にこの大森林の地形を変える事に成るだろう。


彼女達が何者かはもはや証明されている様なものだが、恐らく学生に身を置いている彼女達がその隠された能力をこんな所で使うとは思えない。


つまりこの遭遇戦は、ここらが潮時であると言う事だ。


「そうだね、悔しいけどボクらは初日でギブアップする訳には行かないんだ。悪いけど今日はここら辺で逃げさせて貰うよ。……と言っても、君が逃がしてくれるのならって話なんだけど」


「そうだな……条件付きだ」


ケヴィンは軽く笑みを零しながらそう呟いた。


「条件……ですか?」


先程の戦闘で見せた確かな技術力を疑う程に、おどおどとした口調に戻るフィーネは疑問文を投げかけて来る。


「次お前等が俺と遭遇した時は、『すべて隠さず』に本気で戦う事が条件だ」


つまり彼女達に『一般人』の括りではとても誤魔化せない技術を自分に見せろとケヴィンは言っている。


その意味を理解したのか、彼女達は押し黙る。


少しの沈黙の後、そっとルーチェが口を開く。


「……分かったよ、それで良い。出来ればこの交流戦の間は、君とは二度と会いたく無いんだけどね。勿論個人的になら大歓迎だけど」


「精々怯えてな」


嫌味を込めて言い放ったケヴィンの言葉。


それを受けとめたであろうルーチェは、此方へ苦笑いを向けてきた。


と同時にルーチェとフィーネの周囲が白く光り出す。


転移魔法の発動の兆候である。


恐らく彼女程の技術ならば、発動の準備期間等無いに等しい程の速度で転移を発動する事が出来るだろう。


それをしないのは、恐らくまだ彼女はケヴィンに伝えたい事が有るからだと予想出来る。


「……さっき君はボク達に、英雄よりも自分の方が強いと言わしめる発言をしたよね?」


「それがどうした?」


ケヴィンが聞き返した瞬間彼女の笑みはふと消え、真剣な表情でケヴィンを見つめてくる。


「……その話……本当かも知れないね」


その言葉を皮切りに、彼女達は転移を発動した。


ケヴィンはそれを追うつもり等無い。


転移に込められた魔力量から計算し方向的に狙いを定め、探知魔法を発動すれば彼女達の転移先は分かる。


恐らくそこにジパング側の本体が存在しているだろうが、そこに乗り込んで一瞬でジパング陣営を壊滅させてしまう等と言った面白味に欠ける行動を取るつもりは無い。


楽しみは後で取っておく。


学園として負けようが、最終的にあの二人ともう一度戦えればそれで良い。


ケヴィンは楽しむ事を最優先にしている為、彼女達を見逃したのだった。


最後のルーチェの言葉は、まるで自分達が英雄だとほぼ暴露してしまっている形と成るのだが、それを本人達は気づいているのだろうかとケヴィンは疑問に思う。


彼女達との戦闘に集中していた為、すっかりと日が暮れてしまった。


辺りは既に暗闇に包まれだしており、周囲の確認の為にケヴィンは探知魔法を発動する。


周囲と言えど、その範囲はこの森全体に及ぶ程である。


相応に魔力を消費するが、その程度の魔力等ケヴィンにとっては痛くも痒くも無い。


その上他の者にこの探知魔法を感知されない様に魔法を構築している為、定期的にこの探知魔法を使用しても発動者である自分の位置を他の者に悟られる等と言った事象は起こらない技術まで追加付与していた。


現在ケヴィンは北方、つまりジパング陣営側を向いている。


前方十数キロ先に、大勢のジパング生徒達が陣地を作り上げているのが分かる。


やはりアトランティス側の進軍率と比べると、その差は倍近く違う。


互いの学園は既に休息の準備を始めている様子であり、その場から進行を試みている気配は見当たらない。


ケヴィンから南東に十数キロ進んだ位置に、一人の人物の気配を探知する。


先程も確認したが恐らくその気配はエドワードの物だろう。


流石学年トップクラスの実力を誇る生徒であり、更に単独行動を許された数少ない遊撃部隊の一人だ。


進行速度はジパング側のそれに匹敵している。


もう一人の遊撃部隊の筈のレオンの気配が全くとして無いが、まさか炎帝が早々に脱落する事もあるまいとケヴィンは深く考える事を辞めた。


やはり予想通り、進行速度から言って本格的に戦闘が始まるのは翌日の昼頃からだろう。


それも大きくアトランティス側に侵攻を許した状態で、更に有利な陣形を作り上げられた形での戦いとなる。


三割程の戦力差では決して埋められない地の利がここで作用する事に成るだろう。


「そうはさせねぇがな」


力に物を言わすのも良いが、それ以上に単純に戦場を掻きまわしてやろうと目論むケヴィン。


その日の流れを簡単にデュランに報告し終えた後、ケヴィンは周辺で比較的大きな木へ登りあがると、『重力魔法』を利用し枝を絡ませ始める。


ケヴィン以外この類いの魔法を使う物は殆ど見た事無いが、それでも列記とした魔法の種類の一つである。


人によっては古代魔法等と大それた事を言う者もいるが、ケヴィンにとっては自然魔法の一部としか捉えていなかった。


出来上がったのは簡易的な木の枝のベッド。


十分な強度と葉による柔軟性も相まって、暑苦しいテントよりもしっかり寝れる事だろう。


女性なら虫刺され等を気にするかも知れないが、ケヴィンの肌を貫く事の出来る虫等世に存在していないと断言出来よう。


ケヴィンは出来上がったベッドに横たわると瞳を閉じる。


前日の昼間、船の上で仮眠していた事も有り殆ど睡魔は無い。


ケヴィンは過酷な修行を続けた結果、数日に一度……数時間ほど眠れば十分と言う体質になってしまった。


本人はそれに対して行動時間が増えた事は吉だと捉えている。


眠れはしないが、翌朝生徒達が行動を開始するまでは自分も大人しくしておこうと思い、ゆっくりと休息を取るケヴィンであった。



――――……。

交流戦はまだ続くようです。

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