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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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ケヴィンのお楽しみ

お眼鏡には適ったようです。

その言葉の影響か、先ほどからずっと困った表情をしていたフィーネの表情が真剣な物となったのが見える。


と同時に、ルーチェも口角を引き上げた。


出し惜しみする気は無い、と捉えても良いか?


とケヴィンは期待を込めると、彼は再び地面を蹴り飛ばす。


狙うはフィーネ。


しかし先程よりもケヴィンは自分のペースを一段階上げた。


彼女達が此方の実力再認識した事により、恐らくは戦闘のレベルを上げてくるだろう事を予想し、ケヴィンも相応にレベルを上げた。


フィーネへ接近すると共にケヴィンは右足を突き出す。


彼女はそれに反応した様に行動を始めるが、ケヴィンに対してそれはあまりにも『遅すぎ』た。


ケヴィンの右足はフィーネの腹部へとめり込み、彼女の身体を後方へと吹き飛ばす。


蹴りの反動を利用し、ケヴィンは彼女と反対方向に居るルーチェへと向かう。


彼女に視線を向けると、やっとの事で此方を向いているのが分かる。


人間であるフィーネとは違い、エルフのルーチェは人間程の反射神経が備わっていない。


それでもやはりジパング学園トップを自称する程の実力は持っている為に、ケヴィンの行動に対してギリギリ反応は出来たと言う所だろう。


フィーネと同じく、ケヴィンの左足はルーチェへと激突しルーチェを軽々と吹き飛ばす。


「……へぇ」


ケヴィンは再び口元を歪める。


只の一瞬、あの一瞬ケヴィンを視界に収めた彼女は、微量ながら『ストーンウォール』を展開していた事にケヴィンは気づいた。


ほぼ条件反射に近い程の瞬時の展開。


その技術力の高さに改めて感心すると共に、その影響で致命打に至らなかった事を判断したケヴィンは、追撃を掛ける為にルーチェへと飛び掛かる。


まだ地面に叩きつけられていないルーチェを視界に収めると共に、拳を振り上げるケヴィン。


しかし後方から接近する音に反応し、空中で体を回転させ『それ』を掴む。


そのまま回転の勢いに体を任せ、振り上げた足の踵をルーチェへと振り下ろす。


ケヴィンの予想通り気絶していなかったルーチェは、今度こそ完璧なストーンウォールを幾重にも展開しており、完璧な防御態勢に入っていた。


物理攻撃に対してエルフが使用するクレイウォール並びにストーンウォールは、かなりの効果が期待出来る。


それを一枚だけで無く、5枚同時に展開している。


使う者が使えば、一枚で上級魔法すら防いでしまうそのストーンウォールの強固さは、安易に想像が出来る物。


しかしケヴィンは一切表情を崩さず、全てのロックウォールを片足で粉砕しそのままルーチェへと踵をめり込ませた。


彼女の両腕が体の前でクロスされ、そこへ踵が激突すると共にミシリと音を立てたのが耳に入った。


そして振り返り様に、フィーネが飛ばしたであろう右手で掴んだ『矢』を、フィーネに向けて投げ返す。


ルーチェに対処していた一瞬で、既にフィーネは二本目の矢を射出していた。


ケヴィンの投げ返した矢とすれ違い、こちらに向かって飛ぶ矢をケヴィンは片手で払いのける。


フィーネは同時に二本の矢を放ち片方をケヴィンへ、片方をケヴィンが投げ返した彼女に向かう矢へと向けた。


器用な事をするものだ等と思いながら、相殺された矢の横からすり抜けて向かってくる矢を叩き落とし、未だに空中に滞在する状態から足元にクレイウォールを作り上げる。


そこを足場にし、強く踏み込むとフィーネへ突撃する。


彼女へ辿り着くまでに、その視線の先で何故か上空へと無数の矢を放つ彼女に疑問を抱きながらも、彼女へ拳を振り下ろす。


ズシリと手応えを感じるケヴィンだが、彼女の腕が急所をガードしていた為に致命打には成らなかった。


しかし彼女を怯ませる事には成功した為、再び踏み出そうとした所で咄嗟にケヴィンは後方へと飛び跳ねる。


すると、先ほど彼が立っていた場所へ雷撃が降り注ぐ。


「やるな」


あの一撃で気絶していなかったルーチェを素直に褒めるケヴィン。


ケヴィンはその場で腕を広げると、両腕に魔力を纏いだす。


「シャイニングレイ!!」


後方からルーチェの叫び声が聞こえる。


途端に無数の光の玉がケヴィンに向かい雨の様に降り注ぐ。


再びその場から跳ね飛ぶケヴィンだが、光の玉は地面に接触する事無く瞬時に角度を変えケヴィンへ追跡する様に襲い来る。


ケヴィンは魔力を纏った腕で、その無数の玉を叩き飛ばし消滅させる。


本来人の身体は、魔力を弾く事等出来ない。


大地魔法や氷魔法の様な質量を持つ魔法なら未だしも、雷や炎、ましてや光の様に実体を持たない魔法に関しては、魔法で無くとも触れる事等出来ないだろう。


しかしケヴィンは腕に魔力を纏った事により、自然魔法に対し干渉する事が可能となり光の玉へ接触する事が出来た。


いくつもの光の玉を弾き飛ばしている最中、当たり前にそれだけに集中している場合では無い。


光の玉の間を潜る様にフィーネの射る矢がケヴィンへ襲いかかる。


しかしそれはただ一直線にしかベクトルが向いていない為に、矢に対し垂直へ回避するだけで事なきを得る。


だが、それは矢を放っているフィーネにも分かっている事だろう。


それでもしつこく何度も弓矢を放っているのは、陽動のつもりだと当たりを付ける。


案の定、ケヴィンの視界が捉えたのは上空一帯に広がる魔法陣。


「ヘブンズソード!!」


ルーチェが叫ぶその魔法名は、光の上級魔法。


途端に魔法陣から巨大な光の剣が姿を表す。


そしてその光の剣の周囲から、大量の矢がケヴィンに向かって降り注ぐ。


先ほど……フィーネが無造作に上空へと放っていた物だ。


そしてその矢に先端には、本来なら模擬戦用の為に付いていなかった筈のやじりがご丁寧にも全ての矢に付けられていた。


ただただ重力に習って降ってきているだけの矢ではあるが、その鏃は間違い無くルーチェが魔法で付け足した物だろう。


それが只の鏃ならば大した重さも無く、ただただ引力に引っ張られただけの落下速度ならば、ケヴィンはおろか身体強化を施した人間にすら殆どダメージを与える事は出来ないだろう。


しかし今ケヴィンが目にしている矢の落下速度は明らかに異常であり、彼にとって脅威と成る程では無いが無視は出来ないレベルの物となっている。


つまりあのルーチェが作りだした鏃は、見た目以上に高密度の鉱物で形成された物だろう。


成る程、確かに見事なチームワークだと、ケヴィンは何度目かの評価を彼女達に与えると回避行動へ移った。


しかしその瞬間、彼の体は思う様に動かなかった。


彼はその原因である『足元』に視線を移し……そして小さく笑った。


「……はは」


ふと声に出るほどの笑い声。


光の中級魔法発動中に、特大の上空魔法の行使。


更にはフィーネの放った無数の矢の全てに高密度の鏃の錬成。


極め付けには、ケヴィンの行動を止める為の足止め……大地魔法でケヴィンの足を地面に完全に接合させるまでの技術を見せたルーチェに、この日最大の賞賛をケヴィンは送った。


そしてケヴィンは意識を切り替える。


それならば、こちらももう少しレベルを上げようと。


今のままではとても相手に失礼だと。


ケヴィンはそう思い、魔法を構築する。


本来なら『これぐらい』の大地魔法等身体能力に物を言わせて破壊し、シャイニングレイからもフィーネの矢からも逃げる事は可能。


その後隙だらけとなった自分に迫るだろうヘブンズソードでさえ、どんなに光速で迫ろうとも回避する自信は有る。


だけどそれじゃ詰まらない。


それじゃ普通に楽しめない。


もっと面白く、もっと驚異的な行動を見せる。


それがケヴィンなりの最大限の礼儀。


出し惜しみする事無く、力の限りを見せつけた二人へのお礼だ。


「テンペストヴォルテクス」


右腕を振るう。


風の上級魔法を作り上げ、更にそこへ右腕に纏っていた魔力を付加する。


膨大な魔力で練り上げられた風魔法が、ケヴィンの周囲に発動される。


周囲一帯が大災害に見舞われた様に、強大な嵐が展開される。


その魔法により、フィーネの矢は吹き飛ばされ、ルーチェの放った光の玉すらも、全て消し去った。


「サンダーブレード」


お次は左腕に纏っていた魔力を、新たに展開した雷の中級魔法に付加する。


本来なら前方広範囲に雷の剣を一直線に叩き落とすこの魔法だが、ケヴィンはその魔法を左腕で掴みヘブンズソードに向けて剣の様に振るってみせた。


迫りくる巨大な光の剣は雷の剣と衝突し、辺りに不協和音をまき散らしながら切断され……その姿を消し去った。


僅か数秒も経たない間に自分達の連携技が破られた為か、フィーネとルーチェの表情は唖然としている。


上級魔法を中級魔法で破った事も強いデモンストレーションとなっただろう。

相変わらず戦闘描写は難しいですね。

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