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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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交流戦開始

両学園の勝敗は如何に

「こちらケヴィン、中央地点到着。未だ敵兵無し」


『了解』


若干の雑音が鳴る通信用魔道具を駆使しながら、ケヴィンは遠く離れたデュランに報告を送る。


木々が青々と生い茂る森の中心地で、ケヴィンは周囲の中で最も大きな木の枝に身を預けながら辺りを見回していた。


親善試合当日、試合が開始されてから既に半日以上の時間が経過している。


舞台はジパング学園の裏手に存在する『ジパング大森林』。


今その大森林には、双方の学園の一年全生徒が滞在している。


その人数は約1,700人。


アトランティス学園の生徒1000人対ジパング学園の生徒700人の総当たり戦、つまりチームロワイヤルである。


人数差は明らかにアトランティス学園有利となっているが、それに関してこの大森林はジパング学園の生徒にとっては、既に庭の様な物だと言う条件で公平性が保たれている様だ。


森の中は複雑な地形となっており、知らない者が入ればほぼ確実に迷ってしまう程に入り組んでいる。


この地の利は戦闘に置いて大きく戦況を左右するだろう。


こちらは探り探りで侵攻するのだが、ジパング側は目的地まで一直線に進む事が出来る。


ほぼ確実に先制を取られる為に、こちらの迎撃準備が整わないまま戦闘に入ってしまえば、3割程度の人数差等あっと言う間にひっくり返ってしまう。


蓋を開けてみれば実の所アトランティス側が不利にもなっている状況だ。


その対策としてアトランティス学園が立てた案は、デュランの指示の元ケヴィン達は三つのグループに別れるというもの。


第一グループは探索部隊。


退路を確保しながらこの大森林の地形把握に努め、短期間の内に有利に戦闘を運べる地形を探すグループ。


このグループは極力戦闘は避け、探索に力を入れる。


ここに100人程のメンバーを選出し、比較的身軽な人間と森の構造の把握に強いエルフを半々に成る様に振り分け、一班10人程度に小分けして送り出した。


第二グループは侵攻班。


主に戦闘の要と成る主力部隊で有り、デュランとエマを筆頭にアドレットや他の特待生メンバーを中心に構成された部隊を50人前後に別け、約15班程で侵攻をしている。


最期に第三グループは遊撃部隊。


自由に森を駆け巡り、敵を急襲または翻弄し、戦場を掻き乱すのが役目である。


ここに表向きの学内エースであるエドワードを筆頭に、デュランの選出でケヴィン、そして立候補でレオンが加わった。


三人はそれぞれが個人レベルで展開し、現在森の中を自由に駆け回っている。


初めて入る森と言えど方向感覚が異常発達しているケヴィンにとって、この様な大森林等草原となんら変わらなかった。


優れた観察眼と気配察知能力により、ケヴィンは単身で敵の陣地の奥深くまで潜る事をデュランから許されていた。


有る程度まで進んだ後、気配探知を行った後再び進むと言う作業を繰り返し、既にジパング陣営側の懐まで侵入する事に成功しているケヴィン。


しかし既に日は傾き、やがて夜に差し掛かろうとしている時間帯。


そもそもがこれだけ広い大森林である為、ジパング側のスタート地点とアトランティス側のスタート地点を森を挟んで真反対にした事を計算すれば、ほぼ確実に初日に戦闘が始まる事は無い。


ケヴィンが両陣営の進行度を気配探知で探ると、やはりジパング側の方がかなり深くまで侵攻しているのに対し、アトランティス側は大きく後れを取っている。


恐らくこのまま行っても早くて明日の昼頃に互いの先行部隊が接敵する事と成るだろう。


自軍で最も侵攻しているのは間違いなくケヴィンだが、次いでかなり手前ではあるがそれなりに侵攻している人物の気配をケヴィンは探知していた。


位置と人数、そして気配からそれはエドワードだろうと当たりを付けている。


探索部隊よりも前に出ているのは流石と言えるだろう。


大分前からレオンの気配が一切感じられないのだが、それは割とどうでも良いとケヴィンは思っている。


大事なのはどれだけ自軍の戦況を有利に運べるかと言った所だ。


親善試合と言えど、これは半ばゲームに近い。


本物の戦争と違い、ルールとして時間的に22時以降と成れば戦闘を行ってはならないとされている。


本来戦時中であれば、その様なルール等存在する訳が無い。


いつどんな時でも戦闘できる体勢を整えておくに越した事は無い。


まだ一年生だからと言う理由でその辺りは優遇されているのかも知れないが、だからこそゲームに近い感覚でケヴィンのはこの試合に参加していた。


折角参加したのだからどうせなら勝ちたい。


試合はその日から三日半の工程で行われる事と成る。


おそらく初日でどれだけ自軍が有利な配置に付けるかが、今後の肝と成るだろう。


その点では完全に後れを取っているのだが、正直ケヴィンがこのまま前方に向け大地魔法や風魔法を広範囲にお見舞いすれば、ジパング側を全滅させる事も可能である。


しかしそんな事してしまえば当たり前に『つまらない』。


何よりアトランティス側、ジパング側双方の学生の為に成らない。


ケヴィンは今回あくまで戦場を掻き乱す程度のレベルで参加しようと思っている。


そうと決まればもう少しだけ奥に進撃して、ワザと己の姿を見せて動揺を誘おうと考え、足に力を籠め始めた時であった。


「……ん?」


下方で何かが気配探知に引っかかった。


この森林には、野生の魔物も生息している。


その殆どが大した被害の無い下級の魔物で、それらを討伐しながら侵攻するのも試合内容の一つとなっている。


その為に今回も魔物が下を通り過ぎただけかと思い一度は無視しようと思った。


しかし探知に引っかかった気配は、魔物では無く『人』の物だったのだ。


直ぐに気配を感じた方向へと飛び立ち、探知無効魔法の発動と風魔法の応用で防音魔法を発動し、木々の隙間から対象に近づく。


木から木へと移り進む事数秒経過すると……ターゲットを発見した。


生い茂る雑草に身を潜めながら突き進む二人の生徒。


ジパング側の戦闘服だろう迷彩柄の衣服に身を包み、気配を殺しながら進んでいた。


いや、実際には『わざと』気配を僅かに放出しながら進んでいる様である。


恐らく本当ならば、完全に気配を絶って移動する事が出来ただろう。


だとしてもケヴィンの探知を掻い潜る事は出来ないと断言出来るが、その人物達がそう言った行為を取ったのは作戦の筈だと予想する。


『強者を誘き出す為』の作戦。


戦闘の素人には感づかれず、強者にのみ気づく事の出来るギリギリの気配を放出しながら進む。


その結果誰にも気づかれなければ、侵攻した内部から侵略を開始すればいいだけの事。


大物が釣れれば、自分達が討伐して自軍に有利な展開を作る事が出来る。


それがこの生徒達の目的だろう。


そしてその行動は、己の実力に絶対の自信が無ければ出来ない筈だ。


潜入犯の一人……『ルーチェ・アブニール』の姿を見ながらケヴィンはそう把握する。


彼女は自分とレオンとエドワードの事をマーク済みと言った。


つまり表向きの自分達の強さを彼女は知っていると言う事だ。


エドワードはその歳でBランクを保持する実力者、そしてその兄ミリアルドを下した自分に、その自分と互角に戦ったレオン。


それこそが表向きに知る事が出来る自分達の実力。


それを知りつつ、彼女は『勝てる』と見込んだと言う事だ。


一緒に連れているあの『フィーネ・アブニール』と二人で組めば、Bランカーレベルの実力等取るに足らない……と言う事なのだろう。


成る程、とケヴィンの表情に笑みが浮かぶ。


確かに彼女らはそれなりの実力者なのだろう。


自分と同じ様に、この広い森をこの速度で駆け抜けて来たのだ。


学生のレベルで、逸脱したレベルで例えられるのがエドワードである。


そんな彼が未だこの場に到達していないのだ。


この森が彼女達にとっては庭である事を加味しても、彼女達はエドワードよりも上を行く実力者である。


……ケヴィンはそう『確信』した。

やはり彼女達もそう言う事でしょうか。

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