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月下無限天~最強の在り方~  作者:
蒼氷の朱雀編
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ジパング魔導騎士育成学園

日本じゃないです、ジパングです。

ケヴィン一行は何事も無かったかの様にジパング国の港へと到着した。


事件の詳細は同乗した教師陣からアルベルト側へ伝えられ、その連絡を受けたアルベルトが魔導騎士団を動かしゲノム海賊団の捕縛へと向かわせた。


ゲノム海賊団はその後アトランティス側の港で待機していた魔導騎士団の手によって御用となったとアルベルトから報告を受けたケヴィン。


彼が記憶していた人数との一致を確認すると、アルベルトはご苦労だったと一言だけ告げ他の生徒達の元へと足を運んでいった。


恐らく彼は生徒の安否等殆ど心配していなかったのだろう。


それもそうだ。


紅蓮の翼と蒼氷の朱雀が同乗した船で行われたハイジャック等、即解決と言う結果が安易に想像できる。


そうだとしても生徒達が戒めに殺される可能性だって有っただろうにと、ケヴィンは若干の戸惑いを覚える。


しかし事実として誰ひとり殆ど怪我する事無くジパングへ辿りつけた。


その事に関しては、期待通りと言うしか無いのだろうか。


本来なら重大な事件へと巻き込まれた事により、今回の海外遠征は延期となるのが常識だろう。


だがケヴィンが通っている学園は、魔導騎士育成学園。


この様な緊急事態が発生したとしても任務遂行を第一に掲げると言う志の元、その予行として今回の遠征はこのまま継続される運びとなった。


ケヴィンはため息を吐きながら、辺の生徒たちを見渡す。


各々が興奮と感動を大はしゃぎで友人に語っている。


世界最強の英雄、紅蓮の翼。


そして伝説的な存在である蒼氷の朱雀の二大巨頭が同時に現れたのだ。


船の上で感じた恐怖等その事実で上塗りされ、トラウマ等欠片も感じていないだろう。


被害を受けなかった生徒達の中には、同乗したかった等と不謹慎な言葉まで発する者がいる程だ。


ふとレオンが視界に入る。


人々の中心から少し外れ、デュランとエマと共に会話をしている。


レオンはあの後トイレに行ったふりをしたところで、結局また暴れて海賊団に気絶させられていたと言う設定になっている。


やはり誰も彼が炎帝だとは気づいていないらしい。


彼らの会話はここまで届かない。


と言うより、恐らくどれだけ近くにいたとしても彼らの言葉は聞こえないだろう。


彼らの周囲に感じる渦巻く魔力。


恐らくエマが風魔法を展開し、自分達の会話を一切漏れない様にしているのだろう。


ケヴィンが魔力で干渉すれば、彼らの会話を聞く事は出来る。


それも……彼らに感知させる事無く魔法を展開する事だって出来る自信はある。


しかしそんな野暮な事をする必要等無い。


剣聖であるデュラン、炎帝であるレオン。


その事実が知れただけで、ケヴィンにとっては儲け物だからだ。


ふとデュランと視線が合わさる。


恐らくレオンが蒼氷の名を出したのだろう。


彼の目がこちらに向けて若干細くなったのは、御礼か何かだろうとケヴィンは解釈し左手を上げる事で返事を返す。


レオンの正体が炎帝だと分かったとしても、こちらはそれを公開するつもりは無いぞ。


そう言う意思も込めて。


一連の騒ぎも直様収まり、一同はジパング魔導騎士育成学園へと到着する。


辺りを山に囲まれ、建造物でさえアトランティスのそれとは異なる外観を醸し出しているジパング学園。


アトランティスの様に鉄筋で骨組みが作られた建造物が基本の型である事に対し、ジパングの物件は基本が木造だ。


ジパングはグランガイア大陸では中々お目に掛かれない程に、自然が溢れた国である。


農作物が盛んで、特に『米』と呼ばれる食材はオールガイア各国で主食とされ、オールガイアへの流通の大半を担っている国がこの『ジパング』である。


国中の至る所に田畑を抱え、小麦色に輝くその大陸は他国から見れば金色に光っている様に見える。


その為オールガイア中からこの国は、『黄金の国ジパング』と呼ばれていた。


アトランティス学園の風貌を要塞と例えるならば、ジパング学園のそれは城。


木造作りの骨組みにコンクリートの外壁で覆われ、現ケヴィン宅の様に屋根を瓦で構成された和風の城。


それがジパング魔導騎士育成学園の校舎の風貌である。


アトランティス魔導騎士学園やこのジパング魔導騎士育成学園の様に、育成学園は基本的に要塞や城の様な作りをしている。


理由としては村や街が魔物に襲われた時、民が逃げ込める施設としての機能も有しているからだ。


その避難所としての役目を担っている学園が魔物に攻められた際、あっさりと陥落する様な造りでは困る為防衛しやすい構造と成っている。


ジパング学園に関しても、学園を囲う様に城壁の様な高壁が備えられている。


それが防衛ラインの最前線と成る。


高壁に取り付けられた正門を潜ったアトランティス学園の生徒達は、教師陣に連れられそのまま校舎裏のグラウンドへと足を運ぶ。


作りは違えど全体的な構造はやはり育成学園と言う共通点が有る為に、訓練に最適な器具や広さはアトランティスのそれと大差無いグラウンドが顔を見せる。


アトランティス学園の生徒一行が入場した方面と対面に、700人以上に及ぶであろう同世代の男女が整列しているのが見える。


自分達が着用するそれとは一風変わった制服に身を包んだその者達は、間違いなくこのジパング学園の生徒達であろう。


彼らの姿が見えた瞬間、前方から大きな拍手が巻き起こる。


例え外であろうと、それ程の人数から発せられる拍手はとても大きく鳴り響き、歓迎されていると言う気持ちが真っ直ぐ伝わってきた。


ケヴィンすらも、不思議とその光景に悪い気がしなかった程だ。


グラウンド側から見て校舎側に設立された特設ステージを横目にし、アトランティス学園の一向はジパング学園の生徒達と対面する様に整列する。


Aクラスのケヴィンやレオン達は学園の代表格である為、現状では生徒達の一番先頭に立ち並んでいる。


恐らくジパング側の先頭にいる生徒達も同じ様な立場だろう。


高貴感漂う者や明らかに武家の雰囲気を醸し出す者が先頭に多く、何より後続の生徒達と制服が若干異なる。


と言ってもボタンの色が違う、着けている校章の大きさが違う等と言った微々たる物なのだが。


ケヴィンは相手方を下調べするかの様に一瞥する。


そこに失礼に成ると言う気配りを考えない所がケヴィンらしいと言えよう。


目ぼしい人物は居ないなと認識するが、それでも実際は爪を隠しているだけかも知れない。


レオン達でさえ剣を交えて実力の片鱗を見なければ強者であると判別は付かなかったのだから、そう言った意味ではまだ期待は残されている。


本気で魔力探知を行えば強者を探り出す事等出来るが、今ここで答えを知ってしまっては何も面白く無いとケヴィンは判断した。


退屈だと思い、視線を閉じようとした所ふと一人の女性生徒と視線が合う。


銀色に見える程白掛かった髪を持つ少女。


髪だけでは無く彼女の眉や睫毛でさえ、その不思議な色に染まっている。


恐らく身長は150センチ程しか無いであろう痩せ形の体系に、極め付けには童顔の印象を見せる顔つき。


横一文字に紡がれた小さな唇と小ぶりな鼻、何処かしら眠たそうな雰囲気のその目つきは確かに真っ直ぐに自分を見ていた。


何も彼女が別段不思議な存在と言う訳では無い。


青い白い肌からして間違いなく彼女はエルフ。


エマやメイファの様な平均以上の身長を持つエルフも存在すれば、彼女の様な小柄なエルフはそれこそごまんと存在する。


つまり外観だけ見ればただの一般的なエルフである。


しかしケヴィンがそれでも目を奪われた理由は彼女の『瞳』に有った。


右目が透明感の有る赤い瞳に染まり、左目が淡い青色に輝いている。


所謂『虹彩異色症』と言う左右の瞳の色が異なる症状、通称『オッドアイ』と呼ばれる瞳を彼女はその両目に宿していた。


人にその症状が現れる事は比較的珍しい方であるが、存在しないとは言えない。


ケヴィンが思わず見入ってしまったのは、彼女の瞳が十数メートル離れた位置からでも分かる程に透き通った綺麗な色をしていたからだ。


それに、誰であろうと自分を一点に見つめる人物が居たら気に成ってしまうのは仕方のない事だろう。


ふとその女性生徒はケヴィンに対し微笑む。


相変わらずの眠たそうな目に変化は無いが、それでも無愛想と言う印象が似合った彼女の表情は、ただそれだけで年相応の少女に見えるのだから笑顔は不思議だ。


その微笑みに意図が有るかどうかなど、この時点で判断は出来ずにケヴィンは首を傾げる。

オッドアイでアルビノとか属性盛りすぎでは?

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